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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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国王の謝罪

「……おお。よくぞ参った。案じておったのだぞ、シャーロット嬢」



 謁見の間に入り奥に進むとそこには笑顔の国王がいた。父娘で礼をしつつ頭を下げると、先程の言葉をかけられた。


 ───オルコット公爵は憮然として口を開く。



「無事、という訳ではございません。……保護していただいた隣国の大使殿には感謝してもしきれません」



 ───大怪我を負って10日ぶりにやっと保護された(設定)のだぞ? だいたい陛下には、何も助けられてはいないのだからな……!



 ……って、副音声が聞こえてきますわよ、お父様ーー!!



 シャーロットは表情を変える事なく父の隣で黙ってそれを聞いていた。しかし内心は父の王への対応にヒヤヒヤとしていた。



「……うむ。勿論王家からも正式に大使殿に礼をしよう」


「おおなんと。そのような事、もうとっくにされているのかと思っておりましたが」



 どこまでも国王に反抗的な公爵に、シャーロットはそれと分からないように父の服を引っ張り止めた。父は少し不服そうな顔をしつつ黙った。



「……う、うむ……。

ところで今日ここに来てもらったのは他でもない。シャーロット  オルコット公爵令嬢。……其方に正式に謝罪をする為である」



 公爵の迫力に押されていた国王は、気を取り直してすぐに本題に入った。……長引けば公爵の嫌味がいつまでも繰り広げられると恐れたのかもしれない。



 公爵とシャーロットはその言葉を聞く為に頭を下げた。



「先日の建国祭での我が第二王子エドワルドの行い。───あれは全ての責任の所在はエドワルドでありシャーロット嬢には罪はない。

エドワルドによる被害者である貴女に多大なる迷惑をかけたことを、ここに謝罪する」



 国王は、そう言って頭を下げた。



 そしてその隣ではレイモンド王太子も同じように頭を下げている。



 ……これは多分、レイモンド殿下のおかげね。殿下が陛下にこのような謝罪をするように説得してくださったんだわ。




 今日の事をだいたい聞かされていたであろう貴族達も、国王が余りにもあっさりと謝罪した事に驚いているようだ。



 ……もっとネチネチと言われたり謝罪を渋られたりするかと思っていたわ。



 そしてその後も陛下の謝罪は概ねこちらに満足の行くもので、婚約破棄に公式の場でのエドワルドのやらかし分の慰謝料も加算されて支払われる事になった。



「───しかし今回の件、私達はシャーロット嬢が娘になってくれるのを楽しみに思っておった。その事だけは覚えておいて欲しい。そして今後何かあれば、王家は其方の助けとなろう」



「───有難き、幸せにございます」



 最後、真摯な国王の言葉に公爵は頭を下げた。

 それに合わせてシャーロットもゆっくりと頭を下げる。



 その様子を見ていた貴族達もホッと胸を撫で下ろした。



 エドワルド王子が起こした『婚約破棄』と断罪騒動、そしてそれをされた公爵令嬢の失踪。

 その後明らかになったエドワルドの不貞と公爵家乗っ取り未遂。


 この王国で多大な力を持つ筆頭公爵家に対して起こしたことで、王国の分裂や内紛を恐れる貴族達がたくさんいた。


 

 国王が正式に謝罪し公爵家もそれを受け入れた事でその危険が回避されたと、皆一様に安堵の表情を浮かべた。



 そうして謁見は滞りなく終わった。

 しかし何事も無く済んだ事で、公爵もシャーロットも少し拍子抜けしていた。


 ……でも何もないのならそれが一番よね。皆が気を付けていたからこそ回避出来たのかもしれないわ。



 シャーロットはそう考えて公爵と共に国王に挨拶をして謁見の間を退出しようとした、その時。



「───シャーロット嬢。王妃も、其方の事をとても案じておった。───王妃は其方を案ずる余り、近頃は心を病み寝込んでおる」



 国王はそう言って悲しげに目を伏せた。


 シャーロットは驚く。ここに王妃がいないのはそういう訳だったのかと納得しながら国王の話の続きを聞く。

 


「───のう、シャーロット嬢。王妃の所へ、その無事な姿を見せてやってはもらえないか」


「───!」


「何をおっしゃいますか! 我が娘は大怪我を負い、まだ身体が不自由な中でここまで来たといいますのに……!」



 シャーロットは言葉を失い、オルコット公爵は思わず声を荒げた。


 そもそも王妃は何より第二王子エドワルドを守ろうとしており、今回の件もシャーロットに尻拭いをさせようとしていた。国王の言うような『シャーロットの身を案じて体調を崩した』という事はあり得ない。



「そう言ってくれるな、トラヴィス。このような王妃は初めてなのだ。……少しでも彼女が良くなるようにシャーロット嬢の無事な姿を見せ安心させてやりたいのだ」


 

 国王に切なそうに言われた公爵は口元に手を持っていき、少し考えた。



「陛下。わかりました。……ただし、娘は今この通り身体がまだ完全ではないのです。近衛兵を護衛として連れて行って良いのならば、王妃殿下のお見舞いに参りましょう」




 オルコット公爵はそう言ってニコリと笑った。



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