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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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魔女と猫の関係



 ───クラレンス様に、私からキス!? 



「ニャニャー! ニャニャアニャー……(もうブレンダったら何を言ってるの! だけど人間に戻らないと皆に迷惑をかけてしまうし……)」



 シャーロットは真っ赤になっていた。……が、やはり白猫なので見た目には分からなかった。



「ふーん……。まあそろそろ頃合いだとは思ってはいるんだ。あの馬鹿どもの化けの皮も剥がれてきたようだしねぇ」


「ニャ! ニャニャア……(本当!? というか化けの皮ってもしかして……)」


「……グレゴリー一族さ。お前達親子は身内と思ってかなり油断していたから気になっていてねぇ。今回婚約破棄された事で馬鹿どもが動き出すと踏んでいたのさ」


「ニャニャア……。ニャアニャオ……(やっぱり叔父様達は公爵家を狙っていたの……。そしてそれをブレンダは分かっていたのね……)」



 ブレンダは苦々しい顔で肩をすくめた。



「巨大な力を持つ者の血の繋がりっていうのは難しいものさ。手が届きそうなのに届かない位置にいる者は特にね。力を持つ者の真の苦しみも分からないのに持たざる者はそれを欲しがり闇に落ちる」


「ニャアニャ……(今まで叔父様達はそんな風に見えなかったわ……)」


「まあそりゃあね。アレらもそこまで馬鹿じゃあない。……だからこそここまで来た。私も流石に悪巧みを考えただけの者に罰を与えるなんて出来ないからね」



 叔父達がそんな事をするはずがないと、昨日までのシャーロットなら多分そう思っていた。しかし彼らの本音を目の前で聞いてしまった今は、ブレンダの言葉に静かに頷いた。



「……しかしお前をあの部屋に導き彼らの本心を聞かせたまでは良かったが、まさか奴らが猫に暴力的な行動をとるとは思わなかった。シャーロットには怖い思いをさせたねぇ」



 ブレンダはそう言ってシャーロット猫を抱き上げむぎゅと抱きしめた。シャーロット猫はブレンダの豊かな胸に押し潰される。



「ウニャ……!(うう潰れる……!)」


「……ああ、ごめんよ」



 ブレンダはパッと力を緩めた。



「ブニャ! ニャニャアオ。……ミャアーオ(ぶは! ううん私も実際に叔父様達が話しているのを聞いたからこそそれが真実と知る事が出来たのだもの。……それに助けてくれてありがとう)」


「ふふ。私がシャーロットを助け守るのは当たり前さ。……私たちは『親友』だろう?」


「ミャア!(もちろん!)」



 シャーロット猫は笑顔で即答した。そしてシャーロット猫の可愛い前脚をブレンダの手にたんと合わせ、笑い合った。



 ───そう、二人は『親友』なのだ。



 母の友人だったブレンダは、代々公爵夫人の友人だった。……むしろ公爵夫人の友人であるブレンダが選ぶか認めた女性が次期公爵夫人となるといっても過言ではなかった。


 それはオルコット公爵家の始祖が偉大なる魔女ブレンダと契約した時から始まっている。その契約によって代々の公爵家は戦争から天候まで操る程の力を魔女ブレンダから得てきたのだ。


 しかしブレンダは結構な男嫌いである。その為に代々公爵夫人とブレンダが友人となり、ブレンダの助言のもと公爵夫人が色々な事柄の最終決定や公爵家の後継の指名もして来た。公爵家はブレンダの力を得、ブレンダの意思は公爵家の意思となって来たのだ。



 そしてオルコット公爵家の一人娘で早くからブレンダと交流を持ち親友となっていたシャーロットも公爵家後継の資格を持ち得ていた。


 前公爵夫人が早逝し、王家から王子と一人娘の縁談を無理矢理定められた時。公爵が慌てて新たな妻を得てその『力』を求めたのは、既にブレンダがシャーロットを親友と定めている事を知らない故の早合点だったのだ。



 シャーロットは幼い頃から母と一緒にブレンダと居た。その頃からブレンダは彼女を公爵家の後継と認めていた。

 だから公爵家は本当はブレンダが認めるシャーロットの配偶者を決めなければならなかった。……しかし王命によりエドワルド王子が婚約者とされた事でトラヴィスは早合点して契約結婚。そしてシャーロットの叔父も隙のできた公爵家を虎視眈々と狙っている……。

 この状況の中、ブレンダは敢えて王家との婚約を放置して暫く様子を見る事にしていたのである。これを好機と事を起こした愚かな者達に罰を与える為に……。



「───私はね、シャーロット。アナベルやシャーロットの為だけにオルコット公爵家(ここ)に居る。愚かな者達の為になど動くつもりは全くない」


「ニャア? ……ニャニャアニャー(ブレンダ? ……私は昔の公爵家との契約の為にここまで良くしてくれるのかと思っていたわ)」



 ブレンダは魔女。しかもこの国では魔女とはほぼ伝説の存在。本当に魔女が実在する事すら殆どの者が知らない。

 そして本来ならば魔女とは自由で、彼女がオルコット公爵家の為にここまで尽くさなければならない義理はないはずなのだ。



「はは……。契約などとうに切れている。あの時ミレーヌが私を解放してくれたからね」


「ニャ? ニャア?(解放? ミレーヌ?)」



 穏やかではない言葉とどこかで聞いた事のある名前に、シャーロット猫は気になって聞き返した。

 ───が、ブレンダは珍しく口を閉ざし寂しげに微笑んだ。

 そんないつもにないブレンダの様子にシャーロットは心配しながらもそれ以上は問いただす事をしなかった。そっとブレンダの腕を前脚で優しくポンポンと叩く。

 そんなシャーロット猫に気付いたブレンダはホッとしたかのような柔らかな儚い微笑みを向けた。



「───ありがとうシャーロット。だから私はお前が好きなんだ」



 そう言ってむぎゅっと胸に抱き込んだ。……またしてもブレンダの豊かな胸で圧迫されるシャーロット猫だった。



「ニャ……! ニャア! ブミャミャ~!(ちょっ……! ブレンダ! だずげで~!)」



 



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