今日はハードボイルドで②
「さて」
アンティーク直前の木の机は、ようは単なるボロ机であり、脚もガタつくからと布を巻いて調整している。
机の上の引っ掻き傷でコーヒーカップが傾かないような場所に、さっきスタンドで買った2.5€のコーヒーを置く。噛み合わせが悪いプラスチックな蓋を開ければ、わずかに湯気がのぼる。
彼は立ち上がり、展示ケースに向かう。
俺はこちらもアンティーク調の、壊れかけた椅子に座り、パソコンを立ち上げる。
「再来週の展示に合わせて日本からお客様が来るとの連絡がありました」
「♪(*^^)o∀*∀o(^^*)♪」
「54回目の忌日に合わせた企画展ですから、偶には客が入っても面白いのでは?」
「僕からしたら勝手に「美」という名前をつけた自分に酔っ払って死ぬのは自業自得という気がしなくもない」
「はは。じゃあ、もしそのラベルが「醜」なら、彼は死ななかったと?」
「(゜-゜;)(;゜-゜)」
「気持ちよく自分にラベルをペタペタ貼ってカタチを作ると、足裏が地面に貼っつくし、せっかく中身がなかったのにありもしない実体を持ってしまう」
「で、自分が作った身体に引きづられて死んでしまった」
「((((;゜Д゜)))))))」
「他人が貼ってくるラベルだけでも鬱陶しいのに、自分から貼ったのは、もしかしたら自己防衛なのかもね」
展示ケースの引き出しを開けて、メタリックながらも品のある色味のカプセルからスタバのを手に取り、壁際にあるネスプレッソにセットする。
コーヒーのいい香りで彼の頭が回ってきたのか、にこやかな空気に変わる。レディもゆらゆらと揺れて嬉しそうだ。
なんとなく、タコが普通に会話に参加している。緑色のタコは哲学も解する。
「おもてなしはたこ焼きで?」
「(/ _ ; )」
「いえ?シュニッツェルとビールでいいでしょう。RAVEの冷凍食品で。5€一枚で足ります。我々にはレディの食費の方が大切です」
さすがにそれはどうなんだろうか。
チキンときゅうりと茄子を焼いたフィリングを挟んだ細いフランスパンを提供時に潰すように追加で焼いたサンドイッチに口をつける。
かぶりつけば、香ばしさと塩気が舌と鼻を刺す。やはり温かい食事は美味しい。常温になったコーヒーで流す。このあたりで旨い温かい朝食はトルコ料理屋が鉄板だ。
「はて、もてなし、は学芸員のお仕事では?」
「僕は展示を企画し、資料を整理し、普及する、だった気がしますがね」
「まあ、我々の仕事は「彼」の作品などのEU域内の窓口で、インターネットの普及に伴い、日本で対応可能になって幾星霜」
「レディのお世話もありますよ。何せ彼女は三島存命時に「明日死ぬのに、こいつを食べて精をつけても」と言われて恩赦されたタコですから」
「(//∇//)」
「俺も死ぬ前はたこ焼きより鳥割烹がいいです」
メールには『【11月25日】キュレーション依頼』とあった。




