振り出しに戻る
「もっと早く言ってくれれば」
「1日早ければ」
そう言ってもらえるうちは、まだ俺は限界までは来ていないのだろう。
俺に「相談する」という「コマンド」はない。
ずっとひとりだけで生きてきた。
15とかそれぐらいから、ずっとひとり。
何かを決めるのに、相談したことはあまりない。
進路指導とかはあるけど。
相談ごとは初めから答えがあり、それに向かってどうやってすり合わせるのか、でしかない。
間違えていたことはわかっている。
「犯人逮捕や被害の救済は大変難しいです」
「被害届は出せますか」
「出せないとは言いません。中身を精査する時間をください」
「いつ頃ですか」
「わかりません。事件はこれだけではないので。ご理解ください」
所轄の警察署の刑事さん。
疲れた声で応対してくれた。
インターネットで依頼した弁護士事務所に警察なんて行くだけ無駄、と言われた。だけど本当に?と思って電話で警察に相談し、弁護士会に確認した。
いろいろとすでに不信感いっぱい。
もう見えない相手が怖くて仕方がない。
思い切って行ってみた、警察署。10月14日20時。
取り乱している俺の話を聞いてくれた2人のうちのひとり。昨日もう一度行ったが会えず、先程電話をもらう。
確かに人が死にました、とかそういう話ではない。
本人がわからない仮想世界の出来事。
だから受理されない可能性が高いことも理解している。だけど、今はこの警察官を信じるしかない。
「どうして?」
「落ち着いて」
みんなに言われる。だけど、わからない。
ずっとひとりの現実世界。誰かと繋がっていられる仮想世界。
繋がりそのものも「かりそめ」。
そこに現実の「通貨」を持ち込んでしまったのが失敗。
「今はお待ちください」
「わかりました」
やるべきことが仕事になる。
結局、俺には仕事しかない。
これが嫌だから、仮想世界に逃げ出した。
で、大失敗して現実に戻る、と。
電話を切りながら、腕が下がる。ため息が溢れる。




