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彼女の異変

よろしくお願いします。

 カイル様から真実を聞いた夜、私は夢を見た。暗くて辛くて悲しくて恐ろしい夢だ。具体的な内容は起きた時に忘れてしまっていたが、酷く後味が悪くて、汗で身体中が濡れていた。


 だからだろうか、ナタリーが起こしに来てくれても、体に何か重石がのっているのではないかと思うくらい重くて怠くて、起き上がるのがやっとだった。頭も少し痛くて、考えもまとまらない。


「奥様、体調が悪いのですか?」


 だからナタリーのその一言を理解するのにも時間がかかった。大丈夫だと口を開こうと思ってもそんな気力も湧いてこない。緩慢にナタリーを見たら、ナタリーは目を見開いて悲鳴を上げた。


「奥様!」


 そしてナタリーはどこかに行ってしまった。もう何も考えられない。ただひたすら身動ぎ一つせずに、ナタリーが去って行った後を見ていた。


「ヴィルヘルミナ!」


 カイル様が焦ったように走ってきた。どうしたのだろう。でも、そんなことどうでもいい。体がだるくてもう何も考えたくない。


「ヴィー!」


 突然、両肩を強く掴まれ揺さぶられる。すると頭の中に切れ切れに情景が浮かんだ。経験したことがない、見たことのないはずの景色。

 今より若い両親と父に似た男性と笑顔で食事をしていた。


 そして場面は変わる。きらびやかなホールで着飾った男性や女性が楽しそうにくるくると踊っていた。


 そしてまた場面は変わる。腕を掴む男、上半身裸でのしかかる男、蔑んだ目で見る男。その表情はどれも見た事がないはずなのにわかってしまった。認めたくない、それでも彼は間違いなく、


 カイル様だった。


「……い……や……」

「どうしたんだヴィー! しっかりしろ!」


 目を見開いて、目の前の男性を凝視した。あの場面の男性と、目の前で焦った顔をするカイル様の顔がダブって見える。


 私は先程までの怠さはどこにいったのかと思うくらいに力いっぱい両手を振り払って、ベッドの上で後退りした。でもそれ以上は下がれず、壁にぶつかった。私の後を追うように近づいてくるカイル様が怖い。愛しているはずの夫が、得体の知れない怪物に見えた。


「いやああああっ……!」

「ヴィルヘルミナ!」


 私は泣き叫んだ。声が枯れるまで何度も何度も。現実なのか妄想なのかわからず、次々に現れては消えるいろいろな表情の彼に向かってひたすら叫び続けた。


 彼は離れた場所で何かを言っていた。それも聞こえないくらいに私は声を張り上げていた。プツッと私の中で何かが切れた気がして、私はそのまま倒れ込んだ。

読んでいただき、ありがとうございました。

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