冒険者になろう
そう、見ての通り、目の前にあるのは冒険者ギルドだ。
こんなに立派な建物、見たことがない(目覚めてまだ一日しか経ってないからだけど)。入り口の柱は太く、三人がかりでようやく抱えられるほどだ。近づいて見れば、その古めかしい気配はいっそう濃くなる。石壁には年季の入った細かなひびが一面に走り、分厚い蔦がそこにへばりついている。かつては精巧だったはずの彫刻も、いまは輪郭だけをぼんやりと残すばかりだ。門の上の楣には、冒険者を象る剣と盾の紋章。縁は長い歳月に磨かれて丸く鈍くされながらも、それでも犯しがたい威厳を静かに放っている。重厚なオークの扉、その鉄の取っ手は幾多の手に握られてぎらりと光り、建物全体がただ黙してそこに佇み、訪れる者の足音を否応なく潜めさせる。
ギルドの中に入ると、受付嬢が元気よく手を振ってくれた。私とアムニも前に進み出る。
「おや、お二人の冒険者さん、何か御用ですか? それともリカが新しい依頼を探しましょうか? もし冒険者協会へのご加入でしたら、これ以上ないことです! ここではあらゆる種族、あらゆる身分、あらゆる国を歓迎していますよ」
「私たち、冒険者登録をしに来たんです」
この可愛らしい受付嬢のリカは、すぐさま冒険者協会の歴史と加入のメリットについて語り始めた。私は彼女が冒険者協会をこれでもかと持ち上げるのを聞き流し、話の切れ目で直接質問した。
「そんなにすごいんですか? 登録はどうすれば?」
「ごめんなさい、喋りすぎちゃいましたね。初級冒険者登録はとっても簡単ですよ。銅貨四枚を納めて、所定の書類にサインするだけです。もちろん、今手持ちが厳しいなら、簡単な依頼を先に受けても大丈夫です。その場合は登録料が報酬から自動で差し引かれますからね。ただし注意してほしいのは、冒険者ランクが上がると、簡単な任務は受けられなくなるし、新人冒険者と簡単な資源を取り合うこともできなくなるんですよ。
ところで、お二人はどの職業で登録しますか? 女性なら、魔法使いか封印師がおすすめですよ。もし迷うようなら、無料の鑑定石をお使いいただくこともできます」
私は今日一日の出来事をじっくり振り返った。最初に無意識に出たあの炎が、まだまぶたに焼き付いている。
「魔法使い、魔法使いで登録します」
では、そちらのお嬢さんは?
「狂戦士」
「え?」
ちょっと意外だ。こんなに華奢なアムニが狂戦士? 冗談でしょ?
アムニはいつの間にか巨大な斧を取り出し、そして私たち二人の驚愕の視線の先で、その斧の刃を素手でへし折った。
「……これは失礼しました。アムニさんの腕力、相当なものですね。しかし、その斧はどこから……まさか……」
私は無意識にギルド内に展示されている武器へと視線を向けた。終わった。
これで我が家のただでさえ貧しい家計が、さらに火の車になる。人はかつての自分にすら共感できないものだ。三十分前、まだこのおバカを信じていた自分を、今は心底後悔している。
もう限界。私の素敵な生活は一体どこにあるの? 落ち着け、落ち着くんだ。思考を整理しろ。さっきの様子からすると、アムニの力は強大だ。もしかしたら武術の才能もあるかもしれない。それに新人だから、受けられる依頼の幅も広いはず。そうすれば、この世界の基本的な常識も素早く身につけられる——
冒険者協会の展示品、あの斧がただのサンプルであることを祈り始める……
「申し訳ございません、アムニさん。お壊しになったこの斧は、価格にして銀貨千百枚と銅貨三十六枚。千年以上前の遺物級の骨董品だそうです。刃こぼれ一箇所だけの損壊と見積もっても……賠償額は六百銀貨、きっかりとなります」
「あらあら、こちらのお嬢さん、どなたですかね? 私は存じ上げませんよ。おかしいなあ、異世界に来て初日なのに、なんで見知らぬ人に付き纏われてるんだろう?」
私はアムニを見た。彼女は平静の中にわずかな助けを求める色を混ぜた目で、じっと私を見ている。あなたの顔立ちも体つきも、まさに私のストライクゾーンど真ん中だし、おまけにそんな哀れっぽい目で見つめてくるけど、将来のためには——
「大丈夫です、彼女と一緒に立て替えます」
「お二人の友情、それとも親情(?)には本当に胸を打たれますね! 二人で折半なら、お一人あたり銀貨三百枚の立て替えです。利子なしでも、二年以内にA級冒険者へ昇格できたとして、支払いには一年半かかる計算ですよ。もちろん、衣食住の費用は別ですが」
「大丈夫です」
登録証にサインするとき、私は自分の名前を書き込んだ。
【黄昏】
まだ時間もあるし、アムニと最初の依頼を受けることにした。
「見つけた!」
初めての依頼。




