粋と丁髷と下駄
まだ戦闘服着ずに浴衣のまま、
俺と甲ちゃんは客室出て、
蛇腹式の格子状内扉エレベーター下りは、
俺も真鍮製ハンドルを、
引きたくなったから引いた。
実物は店員しか操作出来ないから、
ここはVRならではだな!
VR空間ならすんなり引けても良いのに、
錆びて少し固いとこまで再現とは、
流石は宇宙人製だ。
昇降用レバーも少し固い…
「おい番、格子に指入れるなよ」
「そこまで小さい子じゃねえよ!
ヤクザは指詰めに…使わないか」
一階大広間に戻ると、
なんと!未来を見た壁画が、
いつの間にか無くなり、
巨大なブロンズ像がドッカと、
鎮座していた!
NPC岡本太郎、
新作やってくれたな!
タイトルは「VR邪神像」か…
しかも太陽の塔などでお馴染みの、
いかにも岡本作品ぽい顔に、
無数の人間の腕生えていて、
体は手足無いが縄目ライン有り、
クトゥルフ社長かクティーラ博士を、
モデルにしたのか?
縄文や異形好きな岡本太郎が存命なら、
いかにも作りそうな新作て感じだ。
NPC岡本太郎はNPC平賀源内と、
何かの機材を埋め込もうとしている…
エレキテルの電飾とかだろうか?
新作に見とれていたが、
本題の売店カウンターも粋と丁髷!
「おいでなすったな、早業小僧!」
レジ隣にNPC蔦屋重三郎!?
和服の上に店員らしくエプロン着ている!
俺に妙な渾名付けているのも気になるが、
凄いドヤ顔だ!
甲ちゃんはソーコム用45ACPと、
5.56x45mm NATO弾の箱をいくつか取り、
予備マガジンと共に、
レジのNPC蔦重に渡した。
NPC蔦重はバーコードリーダーで、
弾薬箱のバーコードを読み取り、
レジを打つと甲ちゃんに返した。
「これで精算終わり、
地球のより簡単だろ?」
「電子マネーと言ってたが、
カードやスマホは!?
レシートも発行しないのか!?」
「商品がバーコード読み取った時点で、
私の口座から差し引かれたんだよ、
履歴データ有るからレシート要らない。
ステータスバーでお前にも見せれる」
「キャッシュレスどころか、
カードレス、スマホレスなのか…
バーコードは微妙にアナログな気がしたが、
丁髷に比べたら本当に微妙な誤差か…」
高ちゃんのステータスバーから、
確かに今の弾薬分差し引かれ…
それよりスリーサイズのとこ気になる!
「よしじゃあ、
番も何かここで買ってみろ。
因みに私らは袖やポケットがアイテムボックスなるから、
レジ袋やマイバッグ要らない。
万引きは入らないぞ」
「そこの貴女ヘアケアに、
ワカメ配合シャンプーとリンスどう!?」
「いや…私、頭に耳生えてるし…」
「獣人用のも有ります!」
甲ちゃんは同じくエプロン店員の、
NPCマダム・ウォーカーに捕まったので、
売店一人で見て回るか…
従業員NPCは洋服有りみたいだな…
自分のステータスバーこれだな、
一人で二人倒したからか、
甲ちゃんより報酬多いが、
日本円でいくらか分からん…
はじめてのVR買い物に、
売店を見渡すと、
温泉宿の土産コーナー模しているが、
饅頭でなく弾薬、玩具でなく実銃な辺り、
サバゲー用な感じする…
観光地でよく見るペナントでなく、
サバゲーのフラッグだったりもするし、
服もミリタリー用のばかりだ。
「これを晋作の奇兵隊に装備させたら、
草莽崛起して攘夷も可能だ」
「それは義や忠のためでも、
仁や礼に反する」
NPC吉田松陰は88式小銃を構え、
NPC孔子がダメ出ししている!
松陰がAKの時点でミスマッチ感ぱねえが、
よりによって北朝鮮の…
「ヘリカルマガジンのAK好きなら、
ロシア正規品のPP-19 Bizonが良いよ」
と俺もダメ出しすべきか?
いや、それ以前の問題か…
和綴じ民話本コーナーには、
浴衣のNPCフレイザーが立ち読み!?
金枝篇に盛るのか!?
いや、よく見たら民話じゃねえ…
クトゥルフの呼び声、インスマスを覆う影、ダゴン…
クトゥルフ小説を温かみ有る絵柄で、
土産物アレンジしているのか…
品出しする蝶ネクタイ上にエプロンは、
NPC渋沢栄一!?
こんな大物をバイト扱い良いのか!?
いや、養蚕や武士や企業とか、
色んな仕事しまくってたから、
売店の従業員も出来るか?
NPCや商品で情報量ぱねえが、
取り敢えず8x22mm南部弾。
ベルグマンはもっとマニアックだが、
M1910だから9mmベルグマン弾かな?
俺に合わせたのか、
予備マガジンも有るなあ…
まだ結構有るが、
買うなら…よし!
「蔦重の旦那、
あの猫耳袴にサプライズで、
女下駄贈りたいんですが、
ここで取り扱ってますか?
ステータスバーに足サイズは、
書いてなかったんすが…」
耳打ちするとNPC蔦重は、
思春期の息子を見た父親みたく、
嬉しそうにニヤ付いた。
「おや坊主、隅に置けねえなあ~
だがこの耕書堂と売店店主にして、
TSUTAYA発祥で大河主役のあっしに、
万事おまかせあれ~♪」
「AIの蔦重だからか、
本物死後のデータも有るんだな…」
NPC蔦重は歌舞伎の様に見栄切りし、
奥のスタッフオンリー部屋に入った。
「ふぅ…やっと振り切った…
どうだ買えたか?
やはり弾と予備マガジンだな」
甲ちゃんは、
試供品のシャンプー袋を袖に入れ、
俺の背後に並ぶ様に立った。
それに合わせてNPC蔦重は、
既にプレゼント包装済みの、
下駄容器をドヤ顔で持ってきた。
「何だそれは?新しい装備か銃か?」
「確かに装備に含むが俺じゃない。
甲ちゃんにプレゼントだ」
「私に!?何なんだ…?」
甲ちゃんは困惑しつつ、
確認のため包装と蓋を開け、
女下駄に驚いた。
「えっ!?サバゲーのじゃない!?」
「甲ちゃんずっとヒール痛いかもだし、
袴にはやはり靴より下駄だなと」
「私はAIで、
ここVR空間だぞ!?
そんな肉体的な苦痛は別に…
旅館内はスリッパで十分だし、
ヒールも気に入ってきたとこだが」
「じゃあまあ、
気が向いたらで良いよ、
お前と一緒に下駄履きたいし」
「そうか…ありがとな」
時代モノでよくある、
女の鼻緒切れる→男直すシチュやりたいのが本音だが、
このVR空間ではどうなんだろう?
一応ハンカチで繋ぐ、
準備はしてある…




