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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
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祈祷スキルを求めて(sideヨシ) 09

 一時間ほど待っていると、菊池さんの作業も終わったようで、俺たちは取っ手があった場所に集まった。

 「確かに取っ手がありますね。他との模様が微妙に違う部分の大きさからすると、何かの扉のようですね。」

 「確かにそうですね。地下収納かもしれませんが、扉の大きさからすると人の出入りが十分に出来そうですね。」

 「とりあえず、開けてみましょう。」

 そういうと、菊池さんは取っ手に手をかけ力を入れ始めた。長らく放置されていたようだが、扉はゆっくりと持ち上がっていった。

 菊池さんが扉を完全に開けるとそこには、下に降りるための階段が取り付けられていた。

 「どうしますか。そろそろ日が変わる頃ですが、降りて行きますか?」

 「幸い懐中電灯もありますし、降りませんか?最悪、明日の朝のお務めまでに宿舎に戻れば何とかなるでしょう。僕はこのまま帰るなんてできないです。」

 どうやら菊池さんは、徹夜覚悟で調査を継続するつもりのようだ。気にならないといえば嘘になるので、俺と山縣さんも菊池さんの提案にのることにした。

 まずは、菊池さんが一人で下に降りることになった。菊池さんが無事に下に降りれたら、周囲の状況を確認し、問題がなさそうなら、俺たちも続いて降りることにした。 

 菊池さんが下に降りてしばらくすると、カーンという音が聞こえてきた。どうやら、何かで階段を叩いて合図を送ってくれているようだ。

 安全が確認されたので、俺と山縣さんも順に階段を降りていった。階段を降りると、下で菊池さんが懐中電灯を照らしながら待っていた。

 俺は下に降りると僅かな明かりを頼りに周囲を見渡した。そこは、二十畳程の大きさがあり北と東と南の壁に扉が付いているのが見えた。

 山縣さんが降りてきて三人揃うと俺たちは手分けして部屋の中を調べた。懐中電灯は1つしかなかったので、俺と山縣さんは携帯の明かりを頼りに部屋の中を調べた。

 「何もないですね。扉が3つある以外は一切何もない部屋ですね。」

 「そうですね。いったい何のために作られた部屋なんでしょうか。あの扉の向こうに何かあるかもしれませんね。」

 俺たちは、とりあえず南側の扉を開けてみることにした。その扉を開けると8畳程の小さな部屋があり部屋いっぱいに木箱が積まれていた。俺たちは、部屋の中に入ると一番手前にあった木箱の蓋を開けてみた。

 「まさか、木箱の中にあんなものが保管されているとは思わなかったですね。」

 俺たちは、木箱の中身をゆっくり調べたかったが、まずはこの地下室そのものを確認する方が先だと判断し、木箱の中身については後回しにすることにした。

 木箱の部屋を出た俺たちは、次に東の扉を開けた。扉を開けると今度は部屋ではなく、通路に繋がっていた。通路の先は暗く見通すことが出来なかったが、それなりに長い通路のようであった。

 俺たちは懐中電灯を持った菊池さんを先頭に通路の中に入っていった。

 「この通路はどこまで繋がってるんですかね。」

 先頭を歩く菊池さんが少し不安そうに歩いていた。

 「位置関係からすると、教団の敷地の北端を東に進んでることになるな。」

 山縣さんの話を聞いて、俺はあることに気がついた。

 「山縣さん、後1つ開けていない扉ってたしか、北側でしたよね。今、歩いてるのが敷地の北端ってことはあの扉の向こうはもしかして、」

 「ああ、そうだな。おそらく敷地の外に繋がってると思う。正確には地上に出るルートがあればの話だが。」

 「えっ、山縣さん、なぜそれを先に確認しなかったんですか?」

 菊池さんは、立ち止まり俺たちの方に振り返った。

 「菊池、俺たちはここから脱出することを目指してるのじゃなくて、お前の姉さんを探してるんだぞ。であれば、外への通路は優先順位は一番最後になるのは当然だろう。」

 「あ、そりゃそうですね。さすが山縣さんです。」

 「分かったなら、先を急ぐぞ。」

 通路をしばらく進むと目の前に壁が現れて行き止まりとなった。

 「行き止まりですね。途中に道もなかったし、いったいこの通路は何のためのものなんでしょうか?」

 俺たちは手分けして壁の周囲を調べた。ふと壁の下側を見るとそこに小さな穴が開いていた。

 「こんなところに穴があいてるぞ。」

 俺はしゃがみこんで、穴の回りを調べた。

 「誰だ!」

 突然、穴の向こう側から声が聞こえてきた。

 「わっ!」

しゃがんだ状態だった俺は声に驚き、尻餅をついてしまった。

 「ヨシさん、どうしましたか?」

 山縣さんと菊池さんが俺の声を聞き駆け寄ってきた。

 「いま、そこの穴から声が聞こえたんです。」

 穴を指差すと、二人は恐る恐る穴の方に近づいていった。すると

 「やはり、誰かいるんだな。お前たちは何者なのだ。」

 「わっ!」

 菊池さんも声に驚き俺と同じように尻餅をついていた。

 「我々は、薬師親愛教の信者です。あなたの方こそどなたなのですか?」

 俺は、菊池さんと並んだ状態で壁の向こうに問いかけた。

 「信者だと。なぜ信者がそんな所にいるんだ。まさか、この壁の向こうに通路があったのか。」

 「あなたは、なぜ、こんな所にいるんですか?」

 「上からでなく、こんな所に来て俺の事を知らないとすれば、一般の信者ということか。だが、地下からここに来るルートなど聞いたことがないぞ。」

 その男は、自分の思考に深く沈みこみ独り言を続けていた。

 「どうします。誰かいるのはまちがいなさそうですが、会話が成り立たないですね。」

 俺は立ち上がると山縣さんの傍まで歩いていった。

 「そうだな。何かブツブツ言ってるようだが、一体誰なんだろうか。」

 山縣さんも、どう対処すればいいのか当惑しているようだ。

 「そうか、資料倉庫に地下があったんだな。そことここが繋がっていたんだとすれば、辻褄はあうな。お前たち、資料倉庫からやってきたのか。」

 突然、男がこちらに話しかけてきた。

 「そうです。で、あなたは誰なんですか。」

 俺は、諦め半分で再度、尋ねてみた。

 「あいつの手下なら、こんな形で来ることはないだろう。賭けにはなるが、いつまでもこの状態でいるわけにもいかない。」

 また、独り言を始めた。俺は諦めて後ろの二人の方に振り返ろうとしたその時、

 「俺は、城之内ツカサ、この教団の元副教祖だ。」

 男の発言を聞いた瞬間、俺は動きを止め固まってしまった。

 「副教祖と言ったのか。」

 山縣さんも同じように驚きを隠せないでいた。

 「お前たちは、資料倉庫からどうやってここまで来たんだ?」

 山縣さんは、少し考えた後、正直に答えることにしたようだ。

 「我々は、資料倉庫に地下室があるのを発見し、そこに繋がっている通路をとおってここ までやってきました。この通路の存在は、ここにいる三人しか知らないです。」

 「そうなのか。で、お前たちは一体、何者なのだ。ただの信者ではあるまい。」

 菊池さんは、山縣さんと俺の方をみて確認した後、城之内に目的を告げた。

 「なるほど、連絡がとれなくなった姉を探しているのか。で、もう一人が祈祷使いを探しているということか。ちなみに姉の名前は何というのだ。」

 「菊池ナミといいます。」

 「なんと、こんな幸運があったとは、この通路を初めて見つけたのが、あいつではなく我々を探しに来た者だったとは。神は、我を見捨てていなかったようだ。お前たちが探している祈祷使いとは、我のことだ。そして、ナミは、この地下室内のこことは別の部屋に軟禁されている。」

 城之内と名乗る男の発言に俺たちは、驚きを隠せなかった。


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