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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
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祈祷スキルを求めて(sideヨシ) 10

 「城之内さん、そこは一体、どこなんですか。歩いた感じだと敷地の北側のどこかだというのは分かるんですが、教団に地下室があるなんて話は聞いたことがなかったです。」

 資料倉庫の管理人である山縣さんも地下室の存在は知らなかったようだ。

 「ここは、教団の敷地の北東の隅にある倉庫の下にある地下室だ。ここには、我の他にも教祖の意向に反対したものが何人も軟禁されている。」

 北東の倉庫と聞いて山縣さんは思い当たることがあったようだ。

 「確かに北東のエリアは、かなりの部分が立ち入り禁止されているので俺も詳しくは知らないが、地下室付きの倉庫があって意向に沿わない者を軟禁しているのだとすると、あの厳重な対応も納得できるな。」

 「城之内さん、どうやったらそこから出れそうですか。」

 「さっきの男がいったとおり、この倉庫は厳重に警備されているので、外から侵入するのはかなり難しい。だが、軟禁から数年以上経過していて、内側からの脱出に対しては、やつらも油断していると思う。内側からの脱出にあたって、お前たちにあることを頼みたいのだが、聞いてもらえないか。」

 「城之内さん、その前に姉さんは無事なんでしょうか。」

 「ナミは、別の部屋に軟禁されているので、めったに顔を合わせることはないが、たまに声が聞こえており、それを聞く限りは無事だと思う。」

 「そうですか。良かった。で、僕たちに頼みって何なのでしょうか。」

 「ここに軟禁されている全員は、教祖のスキルにより身体能力を下げられており、脱出もままならない状態になっている。実は我は伏見稲荷大社の元宮司で、神社には、昔から伝わる神器があり、その力を使うことで、教祖のスキルを破ることができるのだ。また、我の祈祷スキルも神器により活性化するので、脱出にあたって警備の人間を何とかするのも可能になる。」

 「神器、聞いたこともないな。そんなものが本当にあるのですか?」

 神器は、山縣さんも知らないようだ。

 「申し訳ないですが、詳しい説明はできない。しかし、確実に存在していると断言する。頼みというのは、伏見稲荷大社に行って、神器を持ってきてもらいたいのだ。」

 「それは、我々に盗みに入れということですか?」

 「いや、神器は厳重に管理されているだけでなく、一定の手順をふまないとただのアクセサリーなので、盗むのではなく、今の宮司と話をして、正式に借り受けてきてもらいたいのだ。」

 「それは、城之内さんの名前をだせば借りていただけるということですか。」

 「今の宮司は、私の息子なのだが、我が宮司をやめる際にひと悶着あったので、残念ながら、簡単にどうぞということにはならないと思う。だが、息子は話せばわかるやつなので、今の状況を説明すれば何とかなるだろう。」

 何か、簡単に言っているが、本当にそんなにうまく行くんだろうか?息子という人の人となりにもよるが、楽観的すぎる気もする。

 「神器の管理は、今の宮司とのことですが、そんな偉い方に簡単に会えないと思いますよ。」

 「そうだな。では、神社の巫女にカエデという者がいるから、その者に『聖なる務めを継続するために神器の力をお借り願いたい』と伝えてくれ。そうすれば、便宜を図ってくれると思う。」

 「カエデさんというのは、どなたですか?」

 「今の宮司の妹だ。」

 「妹さんですか。ってそれってあなたの娘ってことじゃないですか。」

 「まぁ、そうだな。すまんがよろしく頼む。神器を手に入れたら、もう一度この場所に来てもらえればいい。戻るまでの間に脱出の算段を考えておくことにする。」

 「城之内さん、無事に脱出できたらアヤちゃんを助けていただけるんですね。」

 俺は、最後の確認とばかりに城之内さんに問いかけた。

 「任せておけ。我の力が元に戻り、そこに神器まであれば、確実に治療することができる。脱出した際には、いの一番に病院に行って治療を行うと約束しよう。」

 「分かりました。では、俺はこの話を断る理由は一切なくなった。俺の仲間に連絡してすぐに伏見稲荷大社に向かうことにします。」

 俺たちは、城之内さんとの会話を終えると、通路を戻っていった。

 倉庫に戻ってきた俺たちは、2階の作業台に集まると、それぞれ腰かけた。

 「菊池、すまないがそこにお茶があるから用意してもらえないか。」

 菊池さんは、三人分のお茶を用意すると自分の席に腰かけた。

 「ふー、一気に話がすすんだな。」

 「そうですね、まさか施設内に地下室があって、探している二人ともが軟禁されてるとは思いませんでした。」

 俺は、お茶を飲んで一息つくと、帰りの通路で考えていた案を二人に話し出した。

 「伏見稲荷大社に行く件だが、俺の仲間に任せてもらえないでしょうか。仮に神器が手にはいったとしても今のままでは、無事に脱出できると思えないんです。その時に備えて、準備を俺たち三人でやっておく必要があると思っています。」

 俺の提案に山縣さんと菊池さんは、しばらく思案する様子を見せた。

 「ヨシさん、簡単なミッションではないと思うが、任せて大丈夫ですか?」

 「俺の仲間を信じてください。」

 俺は、3人の顔を思い浮かべながら、力強く頷いた。

 翌朝、午前のお務めが終了すると、シュンと食堂で合流した。

 「シュン、昨日の電話で伝えたとおりだ。俺はここで城之内さんを救出する方策を山縣さん達と考えておくから、会長と合流して神器を取りに行ってくれ。」

 「分かりました。ヨシ先輩もくれぐれも無理をしないようにしてください。」

 俺たちのことを離れたテーブルから見ている者がいることにその時の俺は、まったく気が付いていなかった。

 俺と別れたシュンは、午後のお務めを終えると、いつもと同じように教団を出ていった。

 「確か、会長とユウは、今は和歌山の熊野那智大社にいっているんだったな。ここからだと今日中に向こうに着くのは無理だな。いったん家に帰って朝の早朝に行くしかないな。」

 シュンは、この後のことを考えながら急ぎ駅に向かっていった。 

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