祈祷スキルを求めて(sideヨシ) 07
「あー、あれを見られてたんですか。どうしようかな。でも、しかたないか。」
菊池さんは、しばらく独り言を呟いた後、俺の方を見つめた。
「ヨシさん、今から私の質問に答えていただけますか。」
菊池さんの突然の問いかけに俺は思わず頷いていた。
「ヨシさん、貴方が教団に入信したのは、なんのためですか?」
菊池さんの質問に一瞬固まってしまった。ここはどう答えるべきなんだ。なぜ、急にこんな事を聞いてきたんだ。しばらく悩んだすえ、こう答えた。
「救いたい人がいるからです。」
菊池さんは、俺の目をしばらくの間、見つめていた。
「ふー。試すような質問をしてすいません。お詫びに私のスキルをお伝えします。私は目がいいスキル使いなんです。私は、相手の表情や筋肉のわずかな動きからその人がうそをついているのかどうかを判断できるんです。」
菊池さんはそこまで、話すと珈琲を飲んで一息ついていた。
「そんなことが可能なんですか?」
目がいいスキルといえば、ユウと同じ五感系の能力だ。俺の知る限り、五感系でそこまで能力の高い人には会ったことがないぞ。
「驚かれるのは無理もありません。目がいいスキル使いでここまでできる人は珍しいと思います。私は先天的に能力が高かったのと、能力を鍛える機会に恵まれたからここまでこれたんです。」
「そうなんですか。」
スキルについての情報が一気にもたらされ俺は、しばらくフリーズしてしまった。
「スキルの話はこの辺にして、先ほどの質問についてですが、ヨシさんを信用できる方なのかどうかを確認させてもらいました。」
まだ話の展開についていけなかったが、黙って菊池さんの話を聞いていた。
「あなたは、嘘をついていませんでした。教団側でないなら、あなたを信用してお話します。私がこの教団に入信した理由は、姉を探すためなんです。私には少し年の離れた姉がいるんですが、この教団の教えに関心を持ちだいぶ前に入信したのですが、数年前から連絡が取れなくなったんです。姉の消息を教団に尋ねても、無事であるが内部の事は話せないの一点張りで埒が明かないので、思いきって自分も入信することにしたんです。」
「そうなんですか。」
思いもよらない話の展開に俺は珈琲を一口飲むと大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着けた。
「菊池さん、俺がここに入信したのは、友人の彼女がXXXで昏睡状態になってしまったので、それを治療できるスキル使いがここにいないのか調べるためなんです。教祖と話をした時には、そんな人はいないってことでしたが、何となくひっかかるものがあったので、自分の目で確認しようと思い入信しました。菊池さんの話を聞いて、何か隠していることがあるんじゃないかという思いは強くなりました。」
菊池さんが本当のことを話していると思い正直に答えた。
「ヨシさん、実は僕の本当の目的を知って調べるのに協力してくれている人がいるんです。その人は、教団の資料倉庫の管理を任されている人で、その人と会うために様子を伺っているところを昨日、見られたんだと思います。今日の夜、その人に会うのでヨシさんも一緒に来ませんか。資料倉庫の管理をしている人なんで教団のことは僕よりも詳しいので何か手がかりがあるかもしれないですよ。」
「ありがとうございます。是非お願いします。」
「では、夜のお務めが終わったら、一般宿舎の裏手に来てください。くれぐれも他の人に見つからないようにしてくださいね。」
菊池さんと約束をした後、この話をいつシュンに伝えるか考えた。初級と見習いに分かれてしまったので、シュンと簡単にやりとりがしにくくなったのだ。携帯もお務め中は教団に預ける決まりになっており、夜のお務めが終わらないと手元に戻ってこないことになっている。仕方ないので、俺は全てが終わってから夜中にシュンに状況を伝えることにした。
その夜、俺は菊池さんと待ち合わせ場所で合流した後、資料倉庫に向かった。資料倉庫の周囲には、昼に来た時と同様に警備の人間がいたが、事前に菊池が倉庫の管理人と相談していたので、うまく警備の人間の目を盗んで倉庫の中に入ることができた。
俺たちが倉庫に忍び込み、少しの間待っていると、警備の人間の注意を引き付けていてくれた番人の男が戻ってきた。
「ここだと外に声が漏れる恐れがある。二階の作業場に行こう。」
そういうと、男は俺たちを先導して階段を上がっていった。倉庫の二階は壁一面が書庫になっており、大小様々な書類が入っていた。部屋の中央には大きな机があり、整理するためなのか、幾つもの書類が積み上げられていた。
男は書類が積み上げられていた椅子から書類をどけると俺たちに座るように促した。
俺と菊池さんは、男と向かい合うように椅子に座った。
「菊池、この方は誰なんだ?」
「山縣さん、すいません。この方はヨシさんと言って僕と同じような目的でこの教団に来られた方なんです。相談もせずに連れてきたことは謝ります。ですが、僕のスキルを使って確認しても彼は信用できる人だと分かったので同行してもらいました。」
菊池さんは、立ち上がり山縣と呼ばれた男に必死に説明をしていた。山縣は、菊池さんの説明を聞きながら俺の方をじっと見つめていた。
「山縣さん、初めまして碧泉ヨシと申します。菊池さんの好意に甘えてここに同行させていただきました。」
「ヨシさん、あなたは何のためにここに来たんだ?」
「私の友人の彼女がXXXで昏睡になってしまいまして、その治療ができるスキル使いをさがしているんです。教祖に話を聞いたときには、いないと言われたんですが、何か引っ掛かるものがあったので入信して調べることにしたんです。」
山縣さんは、俺の話にじっと耳を傾けていた。
「その昏睡を治療できるのは、どんなスキルなんだ?」
「祈祷スキルと聞いています。精神に原因のある病の治療ができるそうです。教祖のスキルは身体に原因のある病しか治療できないと言われました。」
俺がそう説明をすると、山縣さんは少し考える素振りをみせた。俺は黙って彼が口を開くのを待っていた。




