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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
47/51

祈祷スキルを求めて(sideヨシ) 06

 翌朝、俺たちは駅前でレンタカーを借りて教団に向かった。

 教団に着くと、入口で昨日と同様にカードを提示したら、信者用の駐車場を案内された。駐車場には、俺たちの他にも車がとめてあったが、半数は他府県ナンバーの車だった。

 「結構、遠くからも通ってきている人がいるんですね。」

 シュンは、車を止めて出てくると、周りを見渡して呟いた。

 「それだけ、有名な教団ってことなんだろうな。」

 駐車場に止められた他府県ナンバーの高級車を横目に見ながら教団の入り口に向かった。午前のお務めを終えた俺たちは、昨日と同じく食堂に向かった。午後のお務めまで2時間ほど時間があるので、俺とシュンは手分けして調査を行うことにした。

 「ヨシ先輩、僕は食堂で昨日と同じように色んな人から話をきいてみますね。」

 「ああ、任せた。くれぐれも踏み込みすぎて怪しまれないようにな。俺は、敷地内の様子を見てくる。立ち入り禁止エリアには近づけないと思うが、普通に近づけるところでもかなりの広さがあるようだから、全部は無理だと思うけど午後のお務めには間に合わせるようにするから。」

 午後のお務めの時に集合することにして行動を開始した。

 「さて、茅野さんの話だと東京ドーム5個分の広さとか言っていたな。想像もできないがとりあえずおよその大きさを把握しておくか。」

 敷地の形状を把握するためフェンス沿いに敷地の内部を歩いてみることにした。何か所かフェンスに沿って歩けない部分もあったが、1周すると1辺がおよそ400m~500mの長方形のような形状をした敷地だった。敷地内には大きな樹も多く建物も何か所か見えたが、全てを確認するには、それなりの時間をかける必要がありそうだった。午後のお務めまでもう少し時間があるのを確認した俺は、最初に目にした建物を調べるため、歩き出した。その建物は、3つの長方形が繋がったような形状をしており、ちょうど敷地の北西角に並んで建っていた。建物に近づくと警備員が建物の周囲を警戒しているのが見えた。

 「このまま、近づいて行っても怪しまれるだけだな。どうしたものか。うん?あれは、、」

 建物の周囲を見ているとちょうど、建物を挟んで反対側の位置から建物を見ている人影があった。

 「あれは、昨日、昼食時にいた一番若い男だな。名前は確か、菊池だったか。あんなところで何をしているんだ。もしかして、俺たちと同じく何かを知らべているのか。」

 菊池の様子は、気になったが午後のお務めの時間が近づいてきたので、俺はいったん、本館の建物に戻ることにした。

 俺が本館に戻るとちょうど、シュンも食堂から出てきたところだった。シュンの方も何か収穫があったようだが、この場で話をするわけにも行かないので俺たちは、何も言わずお務めの部屋に入っていった。

 午後のお務めが終わった後、初級以上の信者は、夜のお務めのまでの間を自由に過ごしていたが、俺たちは、見習い扱いなので、夜のお務めには参加できないので宿に戻ることにした。レンタカーに乗り込むと宿に向かって出発した。運転は、行きと同様にシュンがハンドルを握っている。

 「シュン、俺は明日から初級のお務めに参加しようと思う。」

 「え、どういうことですか?」

 「今のまま、見習いだと実質的に昼の休憩の時間帯しか調査をすることができないが、初級になりあの教団に寝泊まりできればもっと調査の時間を確保することができる。」

 「そうですね。わかりました。僕も明日から初級になります。」

 「いや、お前は見習いのままでいてくれ。この中の様子が分らないうちから二人とも初級になるのは、やめておいた方がいいと思う。」

 「でも、それだと先輩だけが危険な目にあうかもしれないじゃないですか。」

 「心配ない。十分注意して動くつもりだ。それに何かあった時に外で自由に動ける者がいる方がいざという時に助かるしな。」

 「分かりました。じゃあ、明日からはそうしましょう。でもくれぐれも無茶はしないでくださいね。」

 「大丈夫だ。じゃあ、そろそろ宿に着くな。今日も疲れたしゆっくり温泉に入ってから明日の相談をしようか。」

 翌日、教団に入るとお務めの部屋に向かわずに受付に向かって歩いていった。

 「ヨシさん、おはようございます。3日連続来ていただけるということは、我々の教えに共感いただいたということでしょうか。」

 今日も受付には茅野さんが座っており、笑顔で話しかけてきた。

 「ええ、そうなんです。シュンはもう少し考えたいと言ってるんですが、俺は今日からでも初級に移りたいと思って相談に来させてもらいました。」

 俺は、離れて待つシュンに目配せすると茅野さんの方に向き合った。俺の合図を受けたシュンは、見習いの部屋に一人向かっていった。

 「教祖さまのお言葉もありますので、もちろん、今日から初級でも大丈夫ですよ。初級になるとこの本部に寝泊まりすることになりますが、大丈夫ですか?」

 「その話は以前から聞いていたので用意も車に積んできています。」

 駐車場の方を少し振り返り茅野さんに答えた。

 「では、初級の部屋にご案内します。」

 茅野さんと並んで初級の部屋に向かった。

 「信者の方は、一般宿舎で生活していただくことになります。基本的に二人部屋なのですが、ヨシさんが生活される話は本日決まりましたので、当面はお一人で生活をしていただきます。」

 「急な申し出に対応いただきありがとうございます。」

 茅野さんに案内され、これまでの見習いとは違う部屋に入っていった。部屋の中にはすでに40、50名程度の信者がおり、お務めの開始を待っていた。

 「茅野さん、ありがとうございます。後は大丈夫です。」

 「そうですか、では受付に戻らせていただきます。何かありましたらいつでもお声がけください。」

 そういうと茅野さんは部屋を出ていった。茅野さんに案内されてきた俺の様子を何人は、気にしているようだったが、大半の信者は関心無さそうに自分のルーティンに専念していた。

 部屋の中で空いている場所を探すため部屋の周囲をゆっくりと回っていると、一人の男から声をかけられた。

 「ヨシさん、じゃないですか。」

 その声に振り返るとそこには、昨日、倉庫の近くで見かけた菊池さんがストレッチをしているところだった。

 「前日、入会したばかりなのに、もう初級にこられたんですか!」

 菊池さんはストレッチを中断すると立ち上がり、俺の近くにやってきた。

 「ええ、まぁ色々あって今日から初級でお務めをさせていただくことになりました。」

 どう説明するか悩んでいたのだが、菊池さんはあまり深く物事を考えないタイプのようで初級について分からないことがあれば、何でも聞いてくれと言ってストレッチに戻っていった。

 俺は、このきっかけを逃さないよう菊池さんの隣にスペースを見つけると、同じようにストレッチを始めた。

 「菊池さんは、確か入会されて3年でしたよね。初級には、いつなられたんですか?」

 「僕が初級になったのは去年ですね。本当はもっと早くなれたのですが、なかなか家を出れなくて、昨年からやっとこの施設で生活を始められました。僕はあれとして、それにしてもヨシさんは初級になるの早いですよね。」

 まずい、せっかく気にしていなかったのに、俺の話のせいでまた、初級の件を気にしだした。ここは、早く別の話題をふらないとな。

 「それはそうと、初級と見習いって何が違うんですか?」

 俺は無理やり別の話をふってみた。

 「あー確かに、始めてだとそこは気になりますよね。」

 本当に素直な人だな。こんな簡単に話を変えてくれるなんて。その後、菊池さんから、初級の話を色々聞いていたが、途中で導師がやってきたので、続きは昼休憩の時となった。

 朝のお務めを終えた俺と菊池さんは、並んで食堂に向かった。

 「この前、一緒にいた方はいらっしゃらないのですか?」

 「ここでは、共同生活はしていますが、人によってお務めの内容や役割が異なるので、いつも一緒にいるってわけじゃないんです。」

 「そうなんですね。じゃあ、とりあえず今日は二人で昼食としましょうか。」

 俺たちは、好みのランチを選ぶと周りに人が少ない隅の席に腰かけた。

 「菊池さん、ちょっとお伺いしたいのですがよろしいですか?」

 俺は、二人の食事が終わり食後の珈琲のタイミングを見計らって、菊池さんに声をかけた。

 「なんですか?初級の話でまだ分からないことありますか?」

 菊池さんは、飲みかけの珈琲を置くと俺の顔を見た。

 「実は、昨日の昼休憩の時なんですけど、敷地内を散歩してたら、北東の倉庫のそばで菊池さんをお見かけしたんですけど、何かしてたのですか?」

 俺は、相手の反応を一切見逃さないつもりで菊池さんを凝視した。


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