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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
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祈祷スキルを求めて(sideヨシ) 02

 駐車場に戻って来ると、車に乗り駅前に向かった。駅前のコインパーキングに車を止めた後、相談をするため喫茶店に向かっていった。

 「あれは、何をしてるんでしょう。」

 喫茶店に向かっている途中にシュンが指さした方向を見ると、一人の老人が道端にうずくまっていた。傍を通る人たちは、老人に気づいても、かかわり合いになることを恐れるように早足で通りすぎていた。

 「単に座ってるだけならいいんだが、少し気になるし、見に行ってもいいか?」

 シュンの返事を待たずに老人の方に向かう道を探し始めた。

 「もちろんです。」

 道路を横断する場所を探し、歩道橋を見つけると早足で老人の所に向かった。


 「本当にありがとうございました。主治医に聞いたら、後少し治療が遅れたら危なかったと言われました。お二人にはどれだけ感謝しても、し足らないです」

 あの後、老人が意識を失っているのを確認した俺たちはすぐに救急車を呼び、老人が持っていたヘルプカードに記載されていた病院にも併せて連絡をした。救急車が来たあと、発見時の状況を伝え立ち去ろうとしたが、発見者ということで病院まで来るように頼まれた俺たちは、これも何かの縁と考え、同行することにした。

 俺たちの前には、すっかり顔色のよくなった老人が病室のベットに寝ていた。

 「お元気になられてなによりです。大したことはしてませんので、そんなに気を使わないでください。」

 起き上がろうとする老人を軽く止めて、安静にするようにゆっくりと寝かせた。

 「とんでもないです。大半の人は他人と関わりたくなくて、見捨てていってたのにお若い二人がわざわざこんな老いぼれを気にかけてくださった。まだまだ世の中見捨てたもんじゃないなと思いました。本当にありがとうございました。」

 「実は、私の友人もずっと入院をしていて、他人事と思えなかったんです。」

 シュンは、今も病院にいるアヤの事を考えたのか、俯いて拳を握りしめていた。

 「そうなんですか。・・・あの、もし良ければ後日、もう一度、ここに来ていただくことはできないでしょうか。」

 「それはかまいませんが、どうしてですか?」

 老人の急な申し出に戸惑いを隠せなかった。

 「今日のお礼を改めてしたいというのもありますが、その入院されている方について、もしかしたら、お役に立てる話ができるかもと思ったのです。」

 老人の提案に俺はシュンと顔を見合わせたが、教団の件も行き詰まっていたため、日を改めて話を聞きに来ることにした。

 「では、お大事にしてください。体調が良くなったら、また、ご連絡お待ちしています。」

 老人を助けてから3日後、いまだ教団に入る術がないまま時間だけが過ぎていた。駅前の喫茶店でモーニングを食べながら今後の作戦を相談していると、携帯が鳴った。

 「はい、はい、わかりました。では、10時に伺います。」

 「先輩、あの方からですか。」

 シュンは、珈琲カップを置くとテーブルの上を片付けだした。

 「ああ、そうだ。10時にあの病室に来てほしいと連絡があった。」 

 カップに残った珈琲を飲み干すと鞄を持って立ち上がった。レジで会計を済ませると病院に向かうため駅の方に歩き出した。

 病院に着き、以前、訪れた病室に入ると、老人のベットのそばに一人の男が立っていた。

 「わざわざ、ご足労いただきありがとうございます。」

 病室に入室すると老人は、体を起こしていた。

 「起き上がって大丈夫なのですか。」

 「ええ、おかげさまですっかり良くなりました。そうだ、お世話になった方に名前も名乗らず申し訳ありませんでした。先日は、調子が悪く、そこまで頭が回りませんでした。私は、滋賀で健康サプリの工場を営んでいる工藤と申します。」

 そういうと工藤さんは、二人に頭を下げた。

 「私は、大阪の大学生で碧泉ヨシと申します。こちらは、後輩の清澄シュンです。改めて、よろしくお願いします。」

 工藤さんに勧められるまま、ベットのそばの椅子に腰をかけた。工藤さんは顔色もよく体調もすっかり良くなっているようであった。

 「まずは、先日はありがとうございました。些少ですがお受け取りいただければと思います。」

 工藤さんはそういうと、ベットのそばで立っていた男を促した。男は懐から封筒を取り出し俺に向かって差し出した。

 「お礼なんていただけません。当然の事をしただけですので。それよりも、役に立つ情報というのを教えていただけないでしょうか。」

 封筒を固辞し情報提供について促した。

 「そうですか。わかりました。では、お話いたします。ご覧のとおり私は、以前より病を患っております。この病は、幾つかの病院で診察を受けたのですが、どこでも完治は難しいと言われ、延命治療のようなものを続けておりました。ある時、滋賀にどんな病も治せる力をもった教団があるとの噂を聞いて、様々な伝手を使って、信者にしていただき治療を行っていただきました。すると、これまでどんな医者にも完治は難しいと言われていたのが、こうして外を歩けるようにまでなりました。」

 工藤さんは、自分の体調の良さをアピールするかのように手を大きく広げた。

 「そうだったんですね。」

 俺とシュンは、期待に胸を膨らませて工藤さんの話を聞いていた。

 「ただ、その教団は、誰でも簡単に信者になれるというものではなく、信者の紹介でしか入会ができません。ですので、もしよろしければ、私がご紹介させていただきますので、信者としてご友人の方を診ていただけるよう話をさせていただければと思い、今日、お越しいただきました。」

 「ありがとうございます。お手数をおかけしますが、是非、お願いいたします。ちなみにその教団というのは、なんという名前なのですか。」

 「薬師親愛教といいます。」

 まさに、俺たちが入りたいと思っていた教団だった。この巡りあわせに感謝し、工藤さんの申し出を受けることにした。

 「頭を上げてください。命の恩人に対するお礼なんですから、気にしないでください。私の方から教団に話を通しておきます。教団から連絡がありましたらお知らせいたしますので、しばらくお待ちください。」

 その後、工藤さんに教団に関する話を聞いた後、お礼を言い、病室を出ていった。

 病院を出ると、今後の相談をするために駅前の小料理屋に向かった。ビールで乾杯をした後、壁の短冊のメニューから造り盛り合わせ、タコぶつ、燻製ポテトサラダ、鶏のから揚げを注文した。

 「まさか、薬師親愛教団を紹介されるとは思いませんでしたね。」

 まだ、気になるメニューがあるのかシュンは壁をチラリと見た後、ビールを飲んだ。

 「そうだな。まさに運命的な出会いだったな。」

 ちょうど一杯目のビールを飲みほした時に注文の品が届いた。造りの盛り合わせには、アジ、いさき、アオリイカが入っており、ポテトサラダも燻製の食欲をそそる香りがしていた。

 「このポテサラ美味しいですね。ビールに合います。というか、ワインが欲しくなる味です。」

 シュンは、2杯目からワインにするつもりなのか、ワインリストを手に取った。

 リストをしばらく眺めていたが、飲みたいワインを決めたのか、俺の方に視線を向けている。俺はジョッキが空になったのを確認すると、少し考えた後、シュンに任せると言った。

 「この上から二番目の赤ワインをボトルでお願いします。」

 赤ワインで改めて乾杯すると、追加で注文したエビのアヒージョを肴にワインを楽しむことにした。

 「これでアヤちゃんの回復の目処がつくといいんだがな。」

 「そうですね。ここで祈祷スキル使いが見つかったら、どんな事をしてでもアヤの病院にきてもらうつもりです。」

 シュンの発言もいつになく強い口調であった。

 「そうだな。ここでダメだとホントに行き詰まってしまう。ラストチャンスのつもりで全力でいこう。」

 残りのワインを一気に飲み、グラスを置くと力強く拳を握りしめた。

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