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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
42/51

祈祷スキルを求めて(sideヨシ) 01

 祈祷スキル使いを探すことになった俺とシュンは、何も手がかりがないまま動くこともできないので、部室に集まって作戦会議を行っていた。

 「先輩、何から調べていきましょうか?」

 「近畿に祈祷スキル使いがいるという情報は、ユウがネットで調べたんだったな。闇雲に動き回るわけにもいかないし、俺たちもまず、ネットで情報を集めてみないか。」

 「わかりました。」

 その後、黙々と携帯で検索を続けていた。

 「シュン、そっちはどうだ。」

 「さすがに疲れましたね。真偽のほどは、定かではないですけど、幾つかとっかかりになりそうな情報はありました。」

 シュンは、ちょうどきりが良かったのか、携帯を置き、立ち上がって伸びをした。

 「そうか、こっちも幾つか情報があったから、両方を突き合わせて明日からの行動を決めるとしようか。何時間も携帯を見ているとさすがに疲れるな。この後の相談は場所を変えてやらないか。」

 俺もシュンにつられて、体をほぐすように伸びをした。

 「そうですね。駅前のいわし専門店でどうですか?」

 「あそこは、久しぶりだな。ちゃっちゃと片付けて、行こうか。」

 調べた結果を書いた紙をまとめると、部室を出て駅前の居酒屋に向かった。


 「お疲れさま。」

 注文したビールが届くと軽く乾杯し、一気に半分ほどジョッキを空けて一息ついた後、それぞれが食べたいものを適当に注文していった。

 ビールを飲みながら雑談していると、テーブルの上は、イワシの天ぷら、イワシの梅肉和え、イワシ蒲焼、とまさにイワシ尽くしになっていた。

 「スキル使いの情報ってのは、意外とないもんなんだな。」

 イワシの梅肉和えをつまみながら今日調べた結果を話だした。

 「そうなんですよね。こっちでも出てきたのは、当たり障りのない情報が大半でした。」

 イワシ料理を食べながら、調べた結果をまとめた紙で意見交換を始めた。

 「僕の方では、これとかこれが関係するかなっていう情報でした。」

 シュンは、複数枚に整理された情報の中から幾つか赤線を引いた部分を見せながら説明をしていた。情報の整理の仕方にも普段の性格が出ているようで見やすくまとめられていた。

 「俺の方は、こんな感じだな。」

 調べた中で気になった情報だけを一枚にまとめてシュンに示した。それぞれの資料を見比べながら、話を続けた。

 「どこから手を付けようか。」

 「まず、これなんてどうですか。」

 シュンが指さしたのは、兵庫での情報だった。


 数日後、俺たちは部室で調べた情報を元に様々な場所を訪れたが、目ぼしい情報が得られず途方にくれていた。

 「ここも外れでしたね。」

 「ほとんど情報がない中で、探し回っているから、なかなか手がかりが見つけられないな。」

 今日は、ネット情報をもとに京都を調べまわったが、何の手がかりも得られず、意気消沈して阪急電車に乗り帰路についていた。乗客が少ないのを確認し、空いている席に座ったが、話をする気力もなく黙り込んでいた。

 『病気の治療でしたら、今は、やっぱり薬師親愛教が一番お勧めですよ。あそこにお願いすると少しお金はかかりますが、どんな病も治るってもっぱらの評判ですよ。』

 俺たちが座った座席の正面では、高級そうなバッグをもった二人の婦人が話をしていた。

 「どんな病でも治る?」

 その会話を耳に留めると、俺はすぐに薬師親愛教について携帯を取り出し調べ始めた。

 「シュン、これを見てくれ」

 目的のHPを見つけるとシュンに携帯の画面を見せた。

 「滋賀の宗教団体ですか。このページを見ると確かに、病気の治療にご利益がありそうな説明書きがありますね。」

 シュンも手ごたえを感じたのか、表情に力が見られた。

 「もう少し調べられるだけ調べたら、明日にでも現地に行ってみるか」

 この情報は、初めて手ごたえを感じられた気がするな。

 翌日、大阪からJRを乗り継ぎ、琵琶湖の畔までやってきた。薬師親愛教のホームページによると北湖の近くに教団の本部があるようだ。駅から少し離れていることを確認していたので、駅前でレンタカーを借りると教団の本部を目指して走り出した。

 「そろそろ教団の本部の近くだな。どんな所か分からないので、少し手前に止めて歩いて近づいていこうか。」

 ナビで残りの距離を確認すると助手席のシュンにそう伝え、コインパーキングに車を止めると携帯に地図を表示させた。

 「ここから本部まで1㎞くらいだな。」  

 「住宅街から離れたところだから、周りに人家のない場所かもしれませんね。」

 車を降りると地図を確認しながら歩き出した。閑散とした人通りのない道をしばらく歩くと少し開けた場所に出た。そこには、大きな門があり門の前には、警備員が立っていた。

 「なにやら、厳重な感じですね。中に入れるか聞いてみましょうか。」

 シュンは、警備の方に向かって歩き出した。シュンが門に近づいていくのを気がついた警備員は、こちらを睨み付けていた。

 「なんのようだ。ここは、薬師親愛教の教団本部だ。迷子ならとっとと立ち去れ。」

 「すいません。ここでは、どんな病でも治していただけると聞いてきたのですが。」

 警備員は、シュンと離れて見つめる俺をじろじろと見た後、馬鹿にしたような顔をした。

 「ここは、信者の紹介がないと中に入るのは無理だ。しかも信者は裕福な方ばかりなので、お前たちのような者が紹介されることはないと思うがな。そうと分かったら、とっとと帰るんだ。」

 シュンが戻ってくると、警備員との話を聞き、お互いに顔を見合わせると、何も言わず元来た道を戻っていった。コインパーキングまで戻ってくると教団の方を見ながらシュンがため息をついた。

 「あれは駄目ですね。正攻法で中に入れるとは思えません。」

 「そうだな、とりあえずこの辺りを調べてみるか。」

 離れた場所から様子をみていただけだが、警備員の雰囲気は、見るからに近づきがたいものがあった。とはいえ、このまま手をこまねいているわけにもいかないので、教団本部の周辺を調べるため地図を見ながら歩き始めた。教団本部の周囲は、人家もなく森の中のように木々に覆われていた。教団本部の敷地と思われる周りには、フェンスが巡らされており、忍び込めそうな場所は見当たらなかった。

 少し開けた場所で、教団本部を遠くに眺めながら、ため息をついた。

 「厳重に警備されていますね。やはりここに祈祷スキルの使い手がいるんでしょうか?」

 「祈祷スキルかどうかは分らないが、治療に関係したスキル使いがいる可能性は高そうだな。」

 俺は、ダメ元でどこかに抜け穴がないか探るようにフェンスを見つめていたが、諦めてシュンの方を振り返った。

 「シュン、俺たちの力ではフェンスを越えての侵入は難しそうだな。一度、戻って作戦を考え直しかないな」

 シュンは、悔しそうに教団本部を睨み付けた後、俺の後からもと来た道を戻り始めた。

 「すまないアヤ、もう少しだけ待っててくれ」

 シュンの呟きが森の中に消えていった。

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