二人での御朱印巡り(sideマナブ) 08
「もちろんです。まずは、エイトガーディアンズの説明からさせてもらいます。我々エイトガーディアンズは、平安時代に安倍晴明により結成された組織になります。我々は八八神の意志に従い、現世に平穏をもたらすことを目的に活動しております。しかしこの世の中には我々と対極の考えを持った者もおります。その者たちは、自らを八賢人と名乗り、世の中を自分の思い通りに動かすため、様々に暗躍しております。我々と八賢人は、過去より何度も衝突しておりますが、勝敗がつかず拮抗した状態が続いておりました。ところが、今から約200年前に我々は、八賢人に敗れてしまい、八八神も封印されてしまいました。その時のエイトガーディアンズのリーダーが未来視のスキル使いであり、戦いにやぶれた後、最後の力で未来視をしました。いつかの未来に八八神が復活すること、また、復活した八八神が真の力を取り戻すためには、八十八か所の神社の御朱印を集める必要があることが分かりました。そこで、生き残ったエイトガーディアンズのメンバーは、来るべき時に備え、八十八か所の神社に潜伏することとなりました。」
「すいません。ちょっと待ってもらってもいいですか。一体何の話をされているんでしょうか。」
話の展開についていけず、クラマの説明を遮った。
「マナブさん、要は、マナブさんが今お持ちの御朱印帳がいつか復活することを信じ、200年前からこの神社でお待ちしていたのです。そして、こうして皆さんとお会いすることができました。これまでの苦労が報われた思いです。」
「いや、ですので俺にはまだ何がなんだかさっぱりです。200年前から待っていたとか、後、何で俺をあんな目に合わせたのかも分からないし。」
クラマさんの方に詰め寄ると、シュンが肩を抑え、元の位置に戻るように促した。
「そうですね。詳しい話は、いずれ機会をみるとして、なぜマナブさんにあんな事をやったのかと言いますと、これから八八を巡るにあたっての覚悟を勝手ながら確認させていただきました。まだ、八賢人はこちらの動きに気が付いていないので、順調に進めていますが、いずれ、皆さんの行動はやつらの知るところになると思います。そうなったらどんな妨害工作をされるかわかりませんので、軽い気持ちで御朱印集めをしているのなら、このあたりで身を引いていただいた方がいいと思い、試させていただきました。本当に申し訳ありませんでした。」
クラマさんの説明を聞いた俺は、混乱した頭の中を整理させようと思ったが、情報量が多すぎたのと急な展開についていけず、黙りこんでしまった。
「クラマさんの説明は、分かりました。でも、あなた達の考えはともかく、俺たちは自らの意思でこの冒険を続けていくつもりです。気にかけていただいたことには感謝いたしますが、そちらの思惑通りに事が進まなかったとしても、それは俺たちの意思だということを忘れないでください。」
シュンもユウも全く同じ思いだったようで、大きく頷いていた。
「わかりました。皆様の気持ちは組織にも報告しておきます。残念ながら、我々も一枚岩とは言い切れない部分があり、ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、私個人としては皆様の意思を尊重したうえで協力させていただければと思っております。」
クラマさんは、そんな俺たちを見守るように優しく微笑んでいた。
「ついさっき、大見得を切った後に申し上げに行くのですが、クラマさんは熊野那智大社で八八の御朱印を得る方法をご存じないでしょうか?」
俺の変わり身の早さに、クラマも苦笑を浮かべた。
「僕たちからもお願いします。」
シュンとユウもクラマさんに頭を下げた。
「もちろん、知っていますよ。先ほど協力させてもらうと言ったとおりこの後、ご案内いたします。」
「ありがとうございます。」
俺たちは、改めてクラマさんに頭を下げた。
「マナブさん、もう調子は大丈夫ですか。」
クラマが俺を気遣うように見た。
「ええ、先ほどの白湯を飲んだら、すっかり元通りになりました。」
「では、熊野那智大社の御朱印を貰いにいきましょうか。八八の御朱印を得る方法は、神社によって様々です。この大社で御朱印を得る場所までご案内しますのでそこで、確認してください。」
そう告げて、クラマさんが部屋を出ると俺たちは慌てて後をついていった。
「ここって、那智の滝ですよね。」
シュンが日本一の滝を見上げながらクラマさんに話かけた。
「ええそうです。実はこの滝の裏に入る秘密の通路がありまして、そこに八八の御朱印を押してくれる巫女がいるんですよ。」
「そうだったんですね。」
シュンが納得したように頷いた。俺たちは、クラマさんに続いて秘密の通路を通ると滝の裏側に隠された部屋にやってきた。部屋には、カウンターがあり、その中に一人の巫女が座っていた。
「御朱印をお願いします。」
俺は、巫女の方に近づくと八八の御朱印帳を取り出した。
「かしこまりました。」
巫女は、俺を安心させるように微笑むと、御朱印帳を受け取った。巫女は、御朱印帳に複雑な文様を書くと最後に、八咫烏を模した印を押し、会長に御朱印帳を返した。
「良い旅をお続けください。」
巫女は、俺たちにそう告げ、優しく微笑んだ。巫女に小さく手をふるユウを横目に俺たちは、クラマさんの後に続いて部屋を出ていった。巫女に見惚れていたユウは、俺たちが先に出たのに気付くと慌てて部屋を飛び出してきた。
「クラマさん、ありがとうございました。これで10か所目の御朱印を得ることができました。先ほどは、偉そうなことを言いましたが、何かあれば助けていただけるとありがたいです。」
那智の滝に戻ってきた俺たちは、クラマさんに改めて礼を言った。
「もちろんですよ。皆さんは自分らしさを見失うことなくこの旅を続けてください。影ながら応援していますね。それと、10か所目が終わったということは近畿の最後の一か所が表示されているんじゃないですか?」
クラマさんの言葉に俺は、慌てて御朱印帳を開いた。
「お~、11か所目の名前が出ていますね。」
ユウは、俺の横から御朱印帳を覗き込み新たな神社名が表示されていると驚いている。
「なるほど、次は、伏見稲荷大社ですね。」
ユウが、11か所目の名前を読み上げるとシュンは顔を強ばらせた。
「確かに伏見稲荷大社だな。」
俺は、神社名を確認すると、顔を強ばらせたままのシュンの方を見た。
「シュン、伏見稲荷大社がどうかしたのか?それにヨシはどうしたんだ?」
俺は、シュンの様子に違和感を感じて尋ねた。
「二人に報告しないといけないことがあります。ここでは何だから、場所を移しませんか。」
俺たちは、クラマさんに最後に挨拶をすると、那智の滝から大門坂のバス停に向かって歩き始めた。バス停でしばらく待ちやってきたバスで紀伊勝浦駅まで行くと、駅前の喫茶店に入った。
「何を頼もうかな。」
ユウは、席につくとすぐにメニューを開いて食べたいものを探し出した。俺たちは、いつものユウのテンションに呆れつつも、いつもと変わらない態度に安心感を覚えながら、メニューを読みふけるユウを待っていた。
「これにします!」
ユウはメニューの写真を指差し顔を上げた。その様子がおかしかったのか、俺はおもず笑いだすと、すぐに店員を呼んだ。
「ホット2つと、ユウは何を頼むんだ?」
「僕は、ホットサンドとコーラでお願いします。」
店員は、ユウからメニューを受け取るとカウンター越しにマスターに注文を伝えた。俺たちは、しばらく雑談をしていたが、店員がテーブルの上に注文した品を置くとシュンの方を向いた。
シュンは、珈琲を一口飲むと、カップをテーブルに戻し、俺とユウを見つめ話始めた。
「お二人と別れてから今日までのことを説明します。少し長くなるので、ユウは、食べながら聞いてくれ。」




