二人での御朱印巡り(sideマナブ) 07
あれは、去年の夏だったか。次の御朱印巡りの場所を相談した後、アヤちゃんが合流して一緒に帰っているときだった。
四人が楽しそうに話をしながら歩いている少し後ろを、一人物想いに耽るように俯いて歩いていた。ふとした瞬間に孤独というか虚無感を覚えることがある。あの時もちょうど、そんな気持ちのポケットに陥っていた。
「会長もそう思いませんか。」
ふいにシュンが俺の方を振り返った。
「あ、悪い。ちょっと考え事をしてて聞いてなかった。」
「会長、ボーッとして歩いてたら危ないですよ。」
ユウが笑いながら立ち止まった。
「何か、悩みでもあるんですか?」
アヤちゃんは、心配そうに俺を見ていた。
「あぁ、大丈夫。大したことじゃないよ。今日の晩酌の酒を何にしようか考えてたんだ。」
作り笑いを浮かべて何事もないかのように振る舞った。
「なんだ、そんなことですか。じゃあ、何にするか悩まなくていいように、今から飲みに行きませんか。お店なら飲みたいお酒を何でも飲めますよ!」
シュンが提案すると皆、どこに行こうか話し始めた。その後ろ姿をどこか覚めた目で見つめていた。
居酒屋からほろ酔いの五人組が出てきた。
「会長、お疲れさまでした。」
「お疲れ様、また明日もよろしくな。」
はぁ、今日も何もなかったな。いつもと同じ毎日、何の刺激もない。周りの皆といるのは楽しいがそれだけだ。なぜ、俺は、こんなに空っぽなんだろ。ヨシ、シュン、ユウが羨ましい。
ヨシはいつも前を向いてしっかりと自分の道を歩いているし、シュンはアヤちゃんといつも一緒にいて幸せそうだ。ユウはいつも明るく楽しそうにしている。
家に帰って、一人になるといつもこんなことを考えてしまう。こんな風に考えるのが嫌でついつい時間を選ばずに酒に逃げてしまっている。こんなんじゃ、アル中まっしぐらだな。
みんなに会長と呼ばれ、頼られてはいるが俺は一体、何のために生きているんだろう。
・・・・・・・・・・
「何か、思うところでもあったのか?」
何も答えない俺に構わず、謎の人影が含みのある顔を向けながら続けた。
「もう少し、言ってやろうか。お前は人前では、しっかりとした自分を取り繕っているが、本当の自分は、何もないちっぽけな存在だと分かってるんだろ。人にかまうのもそんな自分を少しでも認めてもらいたいからじゃないのか。八八が現れた時も、他人の大義名分に乗っかって、いかにも人のためという風を装っているが、本当のところは、自分が変われるきっかけを探すためじゃないのか。」
謎の人影は、嘲笑いながら俺を見つめていた。いつもの俺なら、反論をしそうなはずなんだが、なぜかその言葉を俯いて聞いていた。
なぜここにいるんだ。何を目指してるんだ。何も分からない。何のために生きているのかとすら考えてしまう。
謎の人影は、その様子を静かにほくそ笑みながら見つめていた。
自分の中の奥底を覗くように深く沈んでいると、ふと遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「・・・会長、マナブ会長」
その声を探すように意識が上を向いた。
「会長、大丈夫ですか。しっかりしてください。」
その声を聞くうちに俺の心に暖かいものが溢れてきた。すると自然に先ほどまでとは異なる感情が湧き出てきた。俺には何もないけど、仲間がいる。空虚な毎日を埋めてくれる言葉がある。未来がどうなるかなんて分からないが、今どうしたらいいかは分かる。俺は、あいつらのために何かしたいんだ。
俺は、顔を上げて人影を見すえた。
「俺は、自分自身と仲間のためにここに来た。それは他人にどうこう言われる事じゃない。やりたいから、心の底からやりたいと思ってるからここにいるんだ!」
「俺は、八八制覇を目指すんだ!それはアヤちゃんのためでもあるし、俺が仲間と一緒に冒険したいからなんだ。それの何が悪いってんだ!」
自分の想いを大声で告げると、空間が暖かい光に満たされた。目を開くとシュンとユウの二人が心配そうに俺を見つめてた。
「マナブさん、黙ってこのような事をして申し訳ありませんでした。この白湯を飲んでいただければ意識がすっきりすると思います。」
まだ状況が呑み込めない俺は、クラマから差し出された白湯を無意識のうちに受け取るとシュンとユウの顔を見た。シュンが安心させるように頷いたのを確認し、俺は白湯を一気に飲み干した。するとさっきまでの不快感が嘘のようになくなり、一気に意識が覚醒し、布団から起き上がった。
クラマはその様子を確認すると、敷布団を片付けて、ちゃぶ台を出し、そこに座るように三人を促した。
「皆様、改めて自己紹介をさせていただきます。私はエイトガーディアンズの一員のクラマと申します。この度は、何の説明もなくこのような事をして申し訳ありませんでした。」
そういうと、クラマは俺たちに深々と頭を下げた。
「クラマさん、謝罪はもういいので、なぜこんな事をしたのかを教えてもらえませんか。」
まだ、状況が飲み込めていない俺に代わり、シュンが続きを促した。




