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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
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ユウの葛藤(sideユウ) 04

 僕たちは晩ご飯を食べるため、お店へと入った。和風の居酒屋といった雰囲気だった。ご飯を食べていると、少しずつ元気になっていった。そんな僕を見て、会長達は安心してくれたような顔をしていた。やはり、心配をかけていたらしい。話をしていると、さっき会長とヨシ先輩が頼んだ神蔵(カグラ)、鱧の梅肉乗せと菜の花の胡麻和えが運ばれてきた。

 二人はお猪口に注いで乾杯すると、ヨシ先輩が口を開いた。

 「それにしても、今日の昼間に会った神田川って方は何者なんでしょうか。」

 ヨシ先輩はお猪口に入った神蔵を一口飲むと、考えていたことを口にした。

 「そうだな。確かに嗅覚のスキルがあって料理が好きだとはいえ、初対面のユウにあそこまで思い入れするなんて、変わっているな。」

会長もお猪口に入った神蔵を一口飲んで、ヨシ先輩の考えに頷いていた。

 「そうですね。何でユウにあそこまで厳しいことを言うんでしょうね・・・」

 シュンさんも鱧を一切れ口に運びながら、疑問を口にしていた。

 「それに、神田川さんはユウに出直して来いとだけ言っていた。ということは、ユウにまたチャンスを与えていることになる。そこまでしてユウに付き合う理由、ユウを気にかける理由はなんだ?」

 会長は、胡麻和えを一口食べながら考えていたが、さらに疑問が浮かんだみたいだった。

 「ユウと神田川さんが出会ったのは偶然なのか?過去に料理人を目指していたユウと、料理人である彼・・・。偶然にしては出来すぎてる気がするが・・・。」

 「それを言うのなら、あの神社で会ったということも偶然じゃない気がします。」

 会長とヨシ先輩が、考えていたことを話し合っている。

 「うーん・・・」

 僕もシュンさんも悩んでいたが、結論は出なかった。

 「俺達が八八を探している神社で神田川さんに会うっていうのは偶然じゃない気がする。」

 「誰かに仕組まれてるってことですか?!」

 考えていた僕たちだったが、会長の言葉に思わず大きな声を出していた。

 「ユウ、声が大きい。」

 「すみません、つい・・・。」

 ヨシ先輩に注意されてしまった。そんな僕とヨシ先輩を見たあと、会長はさっきの話を続けた。

 「仕組まれたかどうかはわからない。本当に偶然かも知れないし、仕組むとしても俺達が何日の何時にあの神社に行くかまではわからないだろ。」

 「そうですよね、仕組まれる理由もわからないですしね。」

 会長とヨシ先輩のやりとりの言葉に驚きはしたものの、その結論に安堵し、改めてみんなに顔を向けた。

 「明日、もう一度神田川さんに料理を作る時間を頂けませんか。」

 「俺たちは構わないが・・・。ユウがここまで本気になったのを見たのは初めてだしな。」

 「そうですね。でもユウ、作るとしても明日じゃなくても良いんじゃないのか?」

 「確かに今日のユウは凄く疲れているだろうし、ゆっくり休んでからの方が良いと思う。」

 会長、ヨシ先輩、シュンさんがそれぞれ答えてくれたが、僕の気持ちは変わらなかった。

 「明日、やりたいんです。神田川さんに言われたことの意味を考えて、作りたいんです。」

 僕は改めて真剣に自分の気持ちを伝えた。

 「とりあえず手がかりは見つけられていないし、明日また神社に行こう。」

 会長が僕を見ながら言った。

 「ユウ、お前の気持ちは良くわかった。無理は禁物だが、頑張れよ。」

会長は僕の思いを汲んでくれたのか、ヨシ先輩、シュンさんを見て、そう言ってくれた。

 「わかりました。」

 「手伝えることがあったら言ってくれ。」

 ヨシ先輩もシュンさんも応援してくれていた。

 「ありがとうございます。」

 僕は嬉しくなり、みんなにお礼を言った。

 「じゃあ明日のことも決まったし、今はしっかり食べて英気を養おう!」

 「しっかり飲む、のも忘れないでくださいね、会長。」

 会長の言葉にヨシ先輩がツッコミを入れた。そんな2人の会話を聞きながら、シュンさんと僕は食べたり飲んだりして楽しい時間は過ぎていった。


 僕は自宅に戻ると、寝室のベッドに仰向けに寝転んだ。昼間の調査と料理作りで疲れているはずなのに、頭が妙に冴えている。神社の調理場で、神田川さんに別れ際に言われたことが、ずっと頭から離れない。

 「初めて料理を作ったときのことを思い出せ。」

 (僕が初めて料理を作ったのはいつだったっけ・・・)

 そんなことを考えながら、いつの間にか眠っていた。翌朝、昨日と同じ駅に着き改札を出ると、既に会長が待っていた。

 「会長、おはようございます。」

 「おはよう、ユウ。昨日はゆっくり眠れたか?」

 「はい、昨日、神田川さんに言われたことを考えてたらいつの間にか眠ってました。」

 「そうか、それなら良かった。」

 僕の返事を聞いて、会長が少し安堵したような顔をしていた。僕のことを心配してくれていたみたいだ。こういうところが、会長は優しいなって思ってしまう。会長に、昨日心配と迷惑をかけたことを謝っていると、ヨシ先輩とシュンさんが改札から出て、こちらに向かってきた。そして、合流したヨシ先輩とシュンさんと挨拶を交わした。

 「あれ、その荷物は何だ?ユウ。」

 ヨシ先輩が僕が持っていた紙袋の中身が気になったようで尋ねてきた。

 「これは、今日、神田川さんに出す料理に使おうと思っている食材です。」

 紙袋を少し持ち上げたが、中身は、料理の時まで秘密にしようと思っている。

 「じゃあみんな揃ったことだし、早速、神社に向かおうか。」

 「はい!」

 会長の言葉に元気良く返事した僕だったが、やはり少し緊張していた。

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