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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
29/51

ユウの葛藤(sideユウ) 02

 僕たちは神社の近くにあった蕎麦屋に入った。お昼時を少し過ぎており、店内の客はカウンター席に座っている40代くらいの男の人が1人だけであった。店員に席へ案内されると、早速メニューを開いた。

 「みなさん何食べますか?僕は天麩羅そばと火薬ご飯のセットにします。」

 あらかじめ調べて決めていたメニューがあるのを確認しすぐに注文を決めた。

 「ちょっと落ちつこうか、ユウ。そうやな・・」

 会長達もメニューが決まったので、店員さんに注文をした。

 しばらくしてから料理が運ばれてきた。僕は、みんなとの会話も忘れ、美味しさに感動しながら天婦羅そばを食べていた。

 「ここのおそば美味しかったですね。」

 「天麩羅の種類もいっぱいあったし、どれも美味しかったな。」

 みんな満足した様子で食後のお茶を飲んでいた。

 「そうですね。海老はプリプリでしっかりとした歯応えと噛めば噛むほど旨味とほんのりとした甘味がありましたし、キスもフワフワで衣のサクサク感と合ってました。キスの天麩羅の衣には青のりが少し入ってませんでしたか?野菜も、衣が付き過ぎず風味がしっかり味わえました。また来たいですね!」

 僕は素直に料理の感想を言っていたが、三人は顔を見合わせて不思議そうな表情をしていた。

 「美味しいご飯も食べましたし、また昼から御朱印の手がかり探し頑張りましょう!」

 元気いっぱいに立ち上がった後、続いて会長達も席を立ち会計を済ませた。そんな僕らの様子をカウンターに座っていた男が横目でじっと見つめていたが、僕たちは気づかずに店を出ていった。

 そして、再び御香宮神社に戻り調査を始めた。しかし、午前中と同様、境内を探し回ったが手がかりは見つけられなかった。僕たちは肉体的にも精神的にも疲労が溜まってきていた。

 「これだけ探しても見つからないか・・・。みんなも疲れてきているし、別の視点で考えないといけないかもな。」

 会長も何か別の考えがいると思っているようだ。

 「あれ?何か美味しそうな香ばしい匂いがしませんか?」

 参集館の周りを探していると、あまりにいい匂いがしてきたので思わず声をあげてしまった。

 「こんな時に何を言ってるんや。何の匂いもしないぞ。」

 ヨシ先輩が呆れたように言いながら会長とシュンさんを見たが、2人とも首を傾げていた。

 「あっちの方からしてますよ、行ってみましょう。」

 僕は匂いのする方向を指差した。それは拝殿や本殿がある方向だった。

 「おいユウ、ちょっと待ってください。」

 シュンさんが僕を止めようとしていたが、ヨシ先輩が逆にシュンさんを止めていた。

 「ユウは、スキルのおかげで俺たちには分からない匂いがわかるんだろう。今、気にしないといけないのは、なぜ神社でそんな匂いがしてるのかということだ。」

 「ヨシの言うとおりだな。まぁ今のところ何の手がかりもないし、ダメ元でユウが言っている方へ行ってみよう。」

 そういうと、会長たちは、僕の後を追って匂いが漂ってきている方へ足を進めた。

 まず、拝殿に着いたが匂いの元はここではないようだ。少し北側に進んでいくと本殿があった。どうやら匂いの元となっている場所はここのようだった。

 僕たちは恐る恐る本殿を進んでいった。そして、匂いの元であろう場所に着いた。そこは神社の調理場であった。

 調理場は、一般の参拝客が間違っても入ってこないような本殿の奥の場所にあった。僕たちは、匂いという手がかりがあったから、この場所を見つけられたようだ。

 調理場の中を覗くと、そこにいたのは、料理している一人の男性であった。

 「何だ。」

 その男性は野菜を切る手元から目を離すことなく、僕たちに声をかけた。

 「料理のお邪魔をしてすいません。僕たちはこの御香水神社のことを色々調べながら境内を歩き回っていたんですが、良い香りがしてきたので気になって匂いをたどってたら、この場所に来てしまいました。」

 僕は男の声の迫力に驚いたが、恐る恐る正直に答えた。

 「ここは、神聖な場だ。邪魔だから出て行け。」

 男は変わらず手元から目を離さないまま厳しい口調で僕たちに言った。

 「ユウ、邪魔したら駄目だから行こう。」

 会長が立ち去るようみんなを促した。

 「邪魔にならないよう、入口のところにいるので見させてください。こんな良い香りがする料理がどんなものか興味があります。」

 しかし、僕は会長に少し頭をさげ、会長の意図とは異なるが、再度、男に話かけた。

 自分でも不思議だったのだが、怖さよりも興味が勝り、いつもでは考えられないくらいはっきりと思いを伝えていた。

 男はユウの言葉を無視していたが、すぐに何かに気づいたように手を止めた。

 「境内で良い香りがしたと言ってたな?」

 男は手を止めて、包丁を置くと初めて僕たちの方を見た。

 「は、はい」

 僕は、男の強い眼光に躊躇いながらも、ここが正念場とばかりに相手の目を見て答えた。

 「ここから境内まではかなり距離があるはず、スキル持ちか?」

 男は僕を見たままだった。

 「は、はい。僕は他人よりも嗅覚が強いんで、境内からでもここの匂いがわかりました。」

 僕のスキルを一瞬で見抜かれたことに驚いたが、男が僕に対して関心を持ってくれたことに気付き、先程よりは緊張せずに答えることができた。

 「お前、名前は?」

 「鴇田ユウです。横にいるのは僕の同好会の仲間たちです。」

 突然、名前を聞かれて僕は驚いたが、僕は落ち着いて自分と会長たちを紹介した。会長たちも名乗り、自己紹介をした。

 「そうか・・・。お前たちがあの方が言っていたやつらか・・・」

 男は何か思いあたることがあるかのようにつぶやいた。僕はその姿を不思議そうに見ていた。

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