始まりの神社(sideシュン) 16
ミツと徳兵衛は、協力しハツを遊郭から救い出すことに成功した。三人は、神主の手が届かない場所まで逃げようと、町はずれまでやってきた。
「ハツ、大丈夫。」
「はい、お母さんなんですよね。」
「そうですよ。今まで、苦労をかけてすまなかったね。私にこんな能力があったために、あの人も殺されて、あなたにもこんなに苦労をかけることになってしまった。」
ミツとハツは手を取り合って再会を喜んでいた。
「徳兵衛さん、こんな事に巻き込んでしまって申し訳ありませんでした。」
ミツが頭を下げた。
「何を言っているのですか。これは自分の意志で選んだ道です。遠い町で、三人で新しい生活を始めるためなんですから。」
「こっちに痕跡があったぞ!」
遠くから追手の声が聞こえてきた。
「ここにいると危ないですね。さあ逃げましょう。」
三人は、追手と反対側に走り出した。
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「手こずらせやがって。そんな簡単に逃げれると思っていたのか。」
袋小路に追い詰められた三人の前に、遊郭の追手が迫ってきた。その後ろから一人の男が現れて三人の前に立った。
「ミツさん、ここまでの事をした以上は、いくらあなたでも無事にすまないことはわかりますよね。あなたの能力をなくすのは惜しいですが、しかたないですね。」
男は、ミツの前までやってきた。
「あなたが、タバコの男ね。私はどうなってもいいので、この二人は解放してあげて。二人は、私の巻き添えみたいなものでしょう。」
ミツは、徳兵衛とハツの前に出ると二人を庇うように手を広げた。
「残念ながら、そういうわけにはいきません。三人とも同じ運命を辿っていただきます。」
「三人の始末はどうしますか。」
三人の遺体を見下ろしながら、一人の男が黒装束に尋ねた。
「この二人は、心中ということにする。ミツは、それなりに顔が知れ渡っているので、三人で心中は無理がある。ミツは、二人の心中に巻き込まれたということにする。」
黒装束は、そう告げると三人の遺体に目もくれず立ち去って行った。
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「ミツの能力は惜しかったが、また、新しい過去視使いを探せばいいか。新しい使い手が見つかるまでは、適当にごまかしておこう。お前も今回は、ご苦労だったな。お前がミツの部屋に出入りする男に気付いたおかげで逃げられずにすんだ。」
神主の前には、黒装束の男がひっそりと佇んでいた。
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「神主様、またボヤです。」
「なに、すぐに消しに行くんだ。」
「巫女が何人も病気で倒れるし、神主様のお身体も調子が悪いし、何かのたたりじゃないのかしら。」
「心中事件に巻き込まれたミツ様の祟りって言って者もいるようですよ。」
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「あいつも飲み屋の喧嘩で刺されて死んだし、わしの調子もずっと悪い。やはりこれはミツのしわざかもしれんな。何かしないとこのままではワシの命までやばいかもしれない。」
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こうして、この神社には三人の慰霊碑が作られることになりました。これまで、神社に貢献し、心中に巻き込まれたことになっているミツが神社を祟っているとするのは、理由付けが苦しかったようです。表向きはハツと徳兵衛の霊を鎮めるためとして境内に慰霊碑が作られ、先ほどの小部屋に、神社の関係者しか入れないようにして三人の慰霊碑が作られたそうです。




