表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
21/51

始まりの神社(sideシュン) 13

 「ミツ、先日の過去視もご苦労であった。先方も非常に喜ばれていたぞ。そこでだ、以前よりお前から話のあった娘の件だが、一度、里帰りを許可しようと思う。」

 ミツは、思わず顔をあげ神主を見つめた。

 「残念ながら、娘の消息は把握できていないが、自分の目で確認したいだろうと思うので、一度、行ってみるといい。」

 「ありがとうございます。」

ミツは、感動に震える声で、泣き咽んでいた。


・・・・・・・・・・・・・・


 (久しぶりに帰ってきたけど、何にも変わってないわ。住んでいた家は誰もいないので荒れ放題だけれど、おばさんの家はどうなっているのかしら。)

ミツは、村の広場をとおり抜け、老夫婦の住む家に向かった。家の前では、老婆が食事の支度をしていた。

 「ご無沙汰しています。」

 老婆は、顔をあげ、最初は誰なのか訝しんだ様子だったが、声をかけてきたのがミツだと気付くと包丁を取り落とし、いきなりミツの前に跪いた。

 「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」

老婆は、平伏しひたすら謝り続けていた。

「どうしたのですか。顔をあげてください。」

ミツは、老婆の手を取り立ち上がらせると、家の中に入るように促した。ミツは、老婆に断って白湯を用意すると、老婆に勧めた。老婆は白湯を飲むと少し落ち着いたのか、ミツの前に座り直し、再度、謝罪の言葉を口にした。

 「先ほどから、謝られてばかりですが、まず顔をあげて説明をしていただけないでしょうか。」

 ミツは、老婆の手をとると、白湯を飲むように促した。

 「ミツさん、今日はハツちゃんに会いにきたんだよね。」

 「ええ、そうです。長い間、ハツを預かっていただきありがとうございました。」

 ミツは、ハツを探すように家の中を見渡した。

 「そのことで、謝らないといけないことがあるんだよ。」

 老婆は、居住まいを正すと、これまでの経過を説明しだした。

 「つい最近までは、ハツちゃんは、この家で私達と一緒に暮らしていたんだが、あるとき一人の男がやってきて、儲け話をもってきたんだよ。私達も最初は信じなかったんだが、何度も話を聞いているうちに、少しくらいならと思ってしまって。本当にすまない。私達の暮らしも苦しくて、ハツに少しでもいい物を食べさせてあげたいと思ったんだ。最初のうちは、多少のお金を貰えていたんだが、気が付いた時には、大きな借金ができており、とても私達で返せるような額でなくなっていたんだよ。」

 ミツは、静かに老婆の話を聞いていた。

 「その男は、借金が返せないとわかるとハツを遊郭に売るように言い出したんだ。」

 「遊郭!」

 遊郭と聞くと、ミツの顔が険しくなった。

 「もちろん、私達はそんな話はのめないと断ったんだが、後ろで話を聞いていたハツちゃんが、自分さえ我慢すれば二人を助けられると言って、遊郭に行くことを了承してしまったんだよ。もちろん、私達は、ハツちゃんを止めたんだが、あの子の意思は固くて、結局、借金の肩代わりとしてこの家を出ていくことになったんだよ。ミツさん、本当にすまない。私達があんな男に騙されたりしなければ、こんなことにならなかったのに。私達でできることなら何でもさせてもらうから、どうか許して欲しい。」

 老婆は、ミツの前で土下座し、号泣していた。

 ミツはしばらく放心したようになっていたが、何か決心すると老婆の手をとり立ち上がらせた。

 「おばさん、私達がいない間、ハツを育てていただきありがとうございました。今のお話を聞くと、いい子に育てていただいた様で感謝します。あの子の行方を捜してみようと思いますので、今日はこれでお暇させていただきます。くれぐれもご自身を責めたりしないでくださいね。」

 ミツは、そういうと老婆の家を出ていった。玄関には、老爺がたたずんでおり、中の話を聞いていたのか、ミツが出ていこうとすると、深く頭を下げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ