始まりの神社(sideシュン) 12
「お初、今日でもう16だね。大きくなってすっかり綺麗になったね。」
ハツは、ミツが連れ去られた時は、老夫婦の家に遊びに行っていたため、隊長に見つかることなく、難を逃れることができた。しかし、父親を殺され母親が連れ去られたきり帰って来なくなると一人で生活をすることもできず、老夫婦の元で一緒に暮らすことになった。ハツは、最初のうちは両親がいなくなったことで毎日、泣きはらしていたが、老夫婦の努力の甲斐もあり、健やかに育っていった。
「お祖父様とお婆様のおかげです。両親のいない私をここまで育てていただきありがとうございました。」
ハツの言葉を聞いた二人は、ミツが連れ去られた時の事を思い出し、目に涙を浮かべていた。
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「ミツ様、神主様がお呼びです。」
一人の巫女が呼びかけると、ミツは書き物の手を止め立ち上がった。
ミツは、巫女の後ろをついていき、神主の部屋までやってきた。
「ミツ、あなたの過去視は、本当に素晴らしいですね。あなたのおかげで、領主様をはじめ、多くの方から、奉納がなされていますよ。」
ミツの前に座る神主は、恰幅もよくきらびやかな狩衣をまとっていた。
「神主様、そろそろ一度お暇をいただき、故郷の娘に会いに行きたいのですが。」
「また、その話ですか。娘さんの居場所は、今、知り合いに調べてもらってますので、見つかり次第、伝えると言ってるではないですか。」
神主はうんざりしたようにミツを見つめている。
「申し訳ございません。どうしても娘の事が気になってしまって。」
「この話は、これでおしまいです。あなたを呼んだのは、また過去視してもらいたい物があるからなんです。これは、名前は言えませんが、幕府の要職につかれている方の品になりますので、くれぐれも粗相のないようにしてください。」
「畏まりました。では、確認させていただきます。」
ミツは、神主から品物を受け取ると、表面に手のひらをあて、目を閉じた。
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「ミツの子どもの件だがどうなっている。」
神主は、ミツが退出した後、一人の男を呼び出した。
「確認したところ、ミツが連れ去られた後、同じ村の中の老夫婦に引き取られたようで、現在も同じ村の中で生活をしております。」
神主の前には、神社の関係者らしからぬ一人の黒装束の男が跪いていた。
「そろそろ何か手をうった方がいいかもしれないな。」
神主は独り言ちた。
「おい、方法は任せるがあの娘が村から出ていくようにしろ。騒ぎを大きくしたくないので、くれぐれも人死は出すなよ。」
「かしこまりました。」
男は、静かに部屋を出ていった。
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「ハツ、本当にすまない。私が騙されたりしなければこんな事にはならなかったのに。」
「おばあ様、泣かないでください。ここまで育てていただいただけで十分です。こんな私でも二人の役に立つことができるのですから。」
ハツは、二人の前に正座し、手をついて礼を言った。
「ハツ、本当にすまない。」
老夫婦は、ふたりとも目に涙を浮かべ、それ以上、何も言えないようであった。
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神主の部屋には、先日の黒装束の男が訪れていた。
「首尾はどうだ。」
「万事うまくいきました。」
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