始まりの神社(sideシュン) 09
「もう一つのお題の答えは、『ユウ』だ。」
ヨシ先輩が、答えを告げるとアオイは、拍手をした。
「お見事です。神前試合【絆の利き酒】は皆さんの勝利です。」
アオイさんがそう告げたとき、僕はまたあの時の光景を思い出していた。
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「今回の御朱印巡りも楽しかったですね。」
「これだけ、御守ゲットしたら、ご利益百万倍ですね!」
ユウは、カバンから幾つもの恋愛成就の御守りを取り出し、ご満悦であった。
「お前ら、これだけいい酒を飲むときは、静かに味わうものだぞ。」
・・・・
「ヨシ飲み足りないなら、いくらでも追加していいからな。」
「先輩もこれ飲んでみてください。久保田の最上級らしいですよ。」
賑やかに四人で飲んだ日本酒・・・
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「約束どおり、露天神社の秘密をお伝えしたいと思います。ここでは何ですので、場所を移しましょうか。ただ、今の試合でお疲れだと思いますので、ここで少し休憩していただければと思います。では、後ほど、お迎えにあがります。」
アオイさんは、そういうと立ち上がり本殿の奥に消えていった。僕たちは、眠りこけるユウを何とか立たせ、目の前の部屋で少し休むことにした。
しばらくするとユウも目を覚まし、置いてあった水を何杯か飲むと目も覚めたようだ。僕たちは、改めて勝利を噛み締めるかのように、先ほどの試合を思い起こしていた。
「いや、まさかあそこであの感想が出てくるとは思わなかったな。」
ヨシ先輩は、会長と僕が思いついた感想に感心しきりだった。
「白山神社の思い出っていったらあれしかないなと思ったんですよ。」
「ユウのお守りと日本酒三昧だもんな。」
「まぁ、俺たちの絆が試される勝負だったけど、無事に勝つことができてよかったな。」
僕たちは、この試合の結果に満足して話を続けていたが、一人寝落ちしてしまったユウは、少し離れた所で一人沈んでいた。
「はぁ~、どうして肝心なところで寝ちゃったんだろ。」
「まぁ、いいじゃないですか。今回、勝負に勝てたのも、ある意味、ユウのおかげみたい なもんなんですから。」
僕は、ヨシ先輩が答えにたどり着いたのはユウの白山神社と小料理屋でのエピソードがあったからだと、改めて強調した。
「そんな慰めいらないです。」
「ユウ、シュンのいう通りだぞ。今回は、四人の誰が欠けても、勝てなかったと思うぞ。」
「そうだな。俺たちがこれまで過ごした時間が今回の勝利を導いてくれたようなもんだ。」
しばらく、するとユウも納得したのか、いつもの様子に戻っていた。
すると、そのタイミングを見計らったようにアオイさんが戻ってきた。
「そろそろ、よろしいでしょうか。秘話をお話しする場所にご案内いたします。」
アオイさんに案内されたのは、一組の机と椅子と小さな祭壇があるだけの質素な小部屋であった。机と椅子は部屋の中央にあり、祭壇はドアの反対側の壁の所に設置されていた。
「その椅子におかけください。」
僕たちは、アオイさんに促されてそれぞれ椅子に腰かけた。何となくだが、この椅子も机もすごい年代物のような気がする。
僕たちが腰をかけたのを確認すると、アオイさんは祭壇の前に立った。
「皆様。先ほどはお疲れさまでした。では、お約束通り、この露天神社に伝わる秘話についてお話をします。」
アオイさんは、僕たちの顔を順に見た後、おもむろに話を始めた。
「この露天神社は、大宝元年(700年)頃に創設された由緒ある神社です。あの菅原道真が左遷された際には、都を偲んで『露とちる 涙に袖は朽ちにけり都のことを思い出づれば』と一首を詠んで涙したとも伝えられています。そんな、由緒ある神社で約400年前に一つの事件が起きました。それが、現在、曽根崎心中として伝えられている話なのですが、一般に知られている話は、表向きの話のみでなのです。この話には、公にされず、この神社の神主にのみ代々引き継がれている話が存在しています。」
厳かに話を続けるアオイさんを前に、僕たちは静かに話に聞き入っていた。




