始まりの神社(sideシュン) 08
そういえば、この勝負が始まるときに、確か、アオイが言ってたな。
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「では、皆さん【絆の利き酒】開始です。」
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あれは、今日の勝負の形式のことを言ってるのかと思ったが、もしかしたらこれまでの 僕たちの絆という意味なのか?だとしても、利き酒と何の関係があるんだ?
「シュン、もう一度、その酒を飲んでみてくれ。今度は、新潟でのことをできるだけ思い出しながら、飲んでみてくれないか」
会長は、何かを思いついたようだった。
「はい、わかりました」
僕は盃に新たに酒を継ぎ足し、静かに一口飲んだ。この香り、確かに覚えがあるぞ。さっきの会長との会話で白山神社での記憶が呼び起こされたのか、最初に飲んだ時より、鮮明な印象を感じた。この味は確かにあの店で飲んだものだ。
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「新潟のお酒ってホントにどれも美味しいですよね。」
僕は、旅先であるのと美味しいお酒の影響か、珍しく小料理屋の店員さんと色々話をしていた。
「そうでしょ。米どころは酒どころって言って、美味しいお米がとれるところでは、美味しい日本酒も作られてるんですよ。最近は、若い女性も日本酒を飲んでくれるようになってねぇ。ホント、うれしい限りです。お客さん、良かったらこれも飲んでみませんか。上善水如と言って、若い女性に飲んでもらえるように白瀧酒造から出ているお酒なんですよ。」
「ありがとうございます。じゃあ次はそれをお願いします。」
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「会長、このお酒、分かりました。あの店で飲んだやつです。」
僕は、確信をもって会長に伝えた。
「そうか、どうやら俺の方もあの店で飲んだ酒で間違いないようだ。」
「となると、ユウの酒はおそらく、あれだな。」
「ええ、この勝負の鍵は、僕たちが一緒に過ごした時間の中にヒントがあるってことだったんですね。」
(ヨシ先輩、去年の新潟を思い出してください。先輩なら、きっと正解にたどり着けるはずです。)
ヨシ先輩の方を見ると、確信をもった感じで自分の盃を下に置くところだった。あの様子だと自分が飲んでいる御神酒の銘柄は、分かったようだ。後は、僕たちの誰が同じ御神酒を飲んでいるのかを伝えるだけだな。
答えを見つけ、すっきりした表情のヨシ先輩は、僕たちの方に顔を向けた。
「会長、こっちの御神酒の銘柄は分かりました。二人の方はどうですか?」
ヨシ先輩は、自信満々の顔でこちらを見ている。銘柄は分かったようだから、ここからがこの試合の第二ステージだな。うまく感想が伝わるといいんだけど。
「会長、僕からいきますね。」
「僕のは、女性好みのワインのような味わいでした。日本酒らしさがなくて初心者向けって感じでした。恋を予感させる味みたいにも感じました。」
僕は、ヨシ先輩をまっすぐに見て答えた。
「俺のは、米の旨味が感じられるようなしっかりした味わいだった。このレベルの日本酒はこれまでに一度、飲んだことがあるかないかといったものだな。酒を飲んだ時に雪国のようなきりっとしたイメージが浮かんだな。」
会長も、ヨシに伝えた後、祈るようにヨシを見つめた。僕たちの横ではユウが静かに寝息を立てていた。
ヨシ先輩は、僕たちの答えを聞いて深く考え込みだした。ちらっと、ユウを見た後、再び考え込みだした様子を見た会長は、僕の方を見ていった。
「ヨシはまだ悩んでいるようだ。おそらくどちらが違うかは気付いたと思うが、ユウの回答がないので、まだ確信をもてないのだろう。もう少し何かヒントになりそうな感想を言わないといけないな。」
僕と会長は、この試合の決定打になるようなヒントはないか、眠り込めるユウの横で再び考えた。
「あ、ちょっと思いついたのでこれなんてどうでしょうか。・・」
僕は、思いついた考えを会長に伝えた。
「お、それならギリギリ酒の感想としていけそうだな。」




