始まりの神社(sideシュン) 06
僕たち三人は、各々で静かに盃に酒を入れていった。
飲む前に何か情報を得ようとしているのか、ユウは盃の中の酒の匂いを嗅いだり、色を眺めていたが、何もわからなかったのか、盃の中身を一気に飲み干した。
「あっ、飲みやすいお酒ですね。何か肴が欲しくなるなぁ。」
「ユウ、真面目にやってくれよ。そんなに一気に飲んで味なんてわかるのか?」
僕は、そんなユウの様子を呆れたように見ていた。
「喉ごしを感じようと思ったんですよ。」
ユウは、自信満々の様子であった。
(いや、それビールだろ・・)
僕は、呆れた様子でユウをみていた。
「僕のは、すっきりしてて飲みやすいですね。日本酒じゃないみたいです。」
僕は盃から一口飲むと、会長に感想を告げた。
盃を前に考え込んでいた会長は、おもむろに盃に口をつけると静かに一口飲んだ。
「確かに、うまい酒だ。だが、この酒の感想をどうヨシに伝えるかとなると、これは、難
しいな。二人とも、できるだけ具体的なコメントを頼む。」
会長の指示は、理解できるがどうすればいいのかまったく想像がつかないな。
「わかりました。具体的ですか、うーん、難しいですね。日本酒の味とかってどんな風に 表現するんだろうなぁ・・」
会長の指示に、僕は頷いたものの、どうしたらいいのか考え込んでしまった。一方で、ユウは、何か、閃いたのか、二杯目も一気に飲み干した後、さらに徳利から盃に注いだ。
「僕のは、刺身に合いそうです!カワハギの肝とかと一緒に飲みたいなぁ。」
「あう料理か、そうですね。確かに刺身にあいそうです。」
そんな、ユウの様子をあきれ顔をみていた僕もさらに一口飲むと、何か肴が欲しくなってきた。
「ですよね!これって大きなヒントにならないかなぁ。」
僕の賛同を得て、気をよくしたユウは、大きな声で叫んだ。
「お三方は、代表者に聞こえないよう、小さめの声で相談をしてください。」
そんな、ユウをたしなめるようにアオイが注意をした。
「すいません。」
アオイさんの注意を受けて、ユウは小さくなった。
「ユウ、何も食べずに飲んでるんだから気を付けて飲まないと危ないですよ。」
僕は、いつもよりピッチの早いユウが心配になり少しペースを落とすように注意した。
「はい、でもヨシ先輩にいいコメントしないといけないかと思うと、緊張してしまって。 それに、ちょっと飲んだだけだと、味がわからないんですよ。」
会長は、僕たちの様子を見ながら、少しずつ御神酒を飲んでいた。
「どうコメントをするべきなのか。確かにこの酒に合う肴を的確に伝えられれば、ヒントにはなるんだろうが、単に刺身ではだめだろうな。理想は、この酒の特徴を客観的に伝えられればいいんだが、どう表現すべきか。」
会長の声が聞こえたが、僕たちに向かってではなく、独り言だったようだ。確かに単に刺身ではダメだろうな。と言って具体的な料理名を出したとしても酒の銘柄につながるかというと難しい気がする。これは思った以上に難しい課題だな。
会長が何かを思いついたかのように僕たちの方を向いた。
「シュン、ユウ、ちょっと聞いてもらえるか。この前、ヨシと言った飲み屋での話なんだ。」




