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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
12/51

始まりの神社(sideシュン) 05

 僕たちは、アオイさんについて本殿の奥に連れてこられた。そこは、玉石を敷き詰めた庭に面しており、濡れ縁には一人の神主が座していた。

 人通りの多い表側と異なり、厳かな雰囲気に満ちた空間であった。

 僕たちは、アオイさんの指示に従い、庭に用意されているテーブルの前に並んだ。庭には、少し位置の離れたところに小さなテーブルも用意されていた。

 アオイさんは、僕たちの前に立つと厳かに、説明を始めた。

 「ここ、露天神社に祀られている少彦名大神は、医学や商売繁盛の神と言われていますが、その他に酒造の神様としても知られています。今回は、この少彦名大神にちなんで、お酒にまつわる勝負を行っていただきます。」

 お酒と聞いて、ヨシ先輩はピクリと反応した。

 「ちなみに、どんな勝負なんですか。」

 会長も思うところはあるようだが、冷静に話を聞いていた。

 アオイさんが神主の方を確認するように振り返ると、神主は静かに頷いた。

 「神の御霊が住まう神聖な地では、おのずと勝負の内容もそれに見合ったものとなりま  す。あなた方には、【絆の利き酒】に挑んでもらいます。」

 「利き酒ですか?」

  思わず、ヨシ先輩がアオイさんに聞き返した。

 「ええ、そうです。あなた方の絆を試させてもらいます。」

  僕は、アオイさんの言葉に考え込んだ。

 (絆を試すとは何だ。利き酒と絆に何の関係があるんだ?)

 「ここに、この神社で神事の際に用いる御神酒があります。代表の方にこれを飲んでもらい、どんなお酒かを当ててもらいます。もちろん、それだけではありません。代表以外の方にも用意した御神酒を飲んでいただきますが、その内の一つは代表の方と同じ銘柄の御神酒です。代表の方は、自分が飲んだ御神酒の銘柄を当てるのと、自分と同じ御神酒を飲んだ人が誰かを当てていただきます。」

 (3人が飲んだ酒のうち、誰が自分と同じ酒を飲んだのかを当てるのか。そんな利き酒はこれまで聞いたことがないな。)

 「誰が、同じ酒を飲んでいるのかを当てる・・それって、代表と他の三人は会話はできるんですか?」

 ヨシ先輩は、アオイさんに尋ねていた。 

 「代表は三人の方に話かけることはできません。三人で相談いただくのは結構です。三人の方は、お酒の感想だけを代表に伝えてください。三人の方は、仮に気付いたとしても銘柄そのものを代表に伝えることはできません。」

 「なるほど、三人の感想からどれだけ情報を拾えるかが勝負ってことですか。」

 ヨシ先輩は、アオイさんの説明に頷きながら答えていた。

 「そうですね。普段からしっかりと仲間内でコミュニケーションが取れていれば、そんなに難しいことではないでしょう。ところで、先ほどからヨシさんしか質問をしてきていませんが、他の方は何もないですか?」

 アオイさんは、謎の笑みを浮かべながら僕たちを見回していた。

 「酒に関してはヨシ以上の者はいないから、代表はヨシに任せるし、疑問点もヨシが一通り確認してくれるだろう。」

 ヨシ先輩以外の僕たち三人は、顔を見合わせた後、会長が代表して答えた。

 「素晴らしい信頼関係ですね。ヨシさんは、他に質問はないですか?」

アオイさんはヨシの方を見て、再度尋ねた。

 「大体、この試合のルールは分かったので大丈夫です。シュン、ユウ、落ち着いて、会長と相談しながら感想を言ってもらえば大丈夫だからな。会長、すいませんが二人をよろしくお願いします。」

 ヨシ先輩は、アオイさんを一瞥した後、僕たちが頷くの確認した後、あらためて、アオイさんに答えた。

 「代表は、俺がなる。」

 「分かりました。では、代表のヨシさんは、こちらの方におかけください。」

 アオイさんは、静かに頷いた。ヨシ先輩は、アオイさんの指示に従い、一人離れたテーブルの方に向かった。

 「他の方は、そこのテーブルにおかけください。今から御神酒を持ってきますので、少しお待ちください。」

 アオイさんは、御神酒を用意するために本殿の中に入っていった。

 「ヨシ先輩なら、大丈夫と思うんですけど、誰がヨシ先輩と同じ御神酒を飲んでいるのかをあててもらうとなると、僕たちの責任も重大ってことですよね。」

 アオイさんを見送りながら、ユウが不安そうな顔でつぶやいた。  

 「そうだな、日本酒の利き酒なんてやったことないから、どんな感想を言えばいいのか まったく、わからないですね。」

 こんなことなら酒を飲んだ時のヨシ先輩のウンチクをもう少し真面目に聞いておけばよかったな。

 「とりあえず、二人は難しく考えず感じたままを俺に伝えてくれ。ヨシにどう伝えるかは、一緒に考えればいいから、大丈夫だ。」

 そんな僕たちを安心させるように会長は、言った。

 「分かりました。自信ないけど、頑張ってみます。」

 ユウは、会長の台詞にホッとした様子を見せた。

 「味覚や嗅覚は、人によって感じ方は様々だ。それをうまく表現できるかが鍵だな。し かも、誰の酒が正解か分からない中で伝えるとなると、変に自分の方に誘導することもできないな。」

 会長は、僕たちに聞こえないように何かつぶやいていた。

 御神酒を取って戻ってきたアオイさんは、神妙な顔で僕たちを見つめると、神主の方を確認した後、僕たち三人の正面に立った。

 「よろしいですか。では、試していただく御神酒はこちらになります。」

 アオイさんは、大きな真っ白い盃と徳利を並べていった。

 「皆さんの徳利の中にどんなお酒が入っているのかは私しか知りません。皆さんは自分  で、目の前の徳利から自由にご試飲ください。くれぐれも他の人のお酒を飲んだりしな  いでください。」

 その後、アオイさんはヨシ先輩の前にも白い盃と徳利を置いた。

 「では、神前試合【絆の利き酒】開始です。」

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