名前持ち バグズ①
俺とベリーは走って西の町へと戻る。
もちろん日をまたいだ。
辺りは暗くなり、西の町では出兵の準備が進められていた。
俺はルナに呼ばれてル街中で話を始めた。
「ウイン、私が状況の説明をします。」
「ああ、頼む。」
「ゴブリンキングがデイブックの港に進行しています。もし、港が取られたら、ゴブリン海賊団の出来上がりです。」
やばいな!分かってきたぞ、ゴブリンキングが船を持ったら、交易船は襲われて、海路からゴブリン軍団が強襲してくる。
どこから現れるか分からない海賊団の為に、内政は遅れ、戦力は防御の備えで分散する。
国がボロボロになるぞ。
「さらにゴブリンキングが名前持ちであることが確定しました。
名前持ち。物語で出てくる英雄を殺すものか。
確か魔物の到達点にいるやつだよな。
「今ディアブロ王国の軍勢がアーサー王国に向かう為大急ぎで準備を進めています。
アーサー王国と合流した3万の軍勢でデイブックの南西部から北東に向かい進軍します。」
陸路でデイブックに進軍するのか。アーサー王国とディアブロ王国は船を使い始めたばかりだ。
陸路の方が安全だな。後、海路は人を運ぶ船が足りないだろう。
「レベル100越えの者は、先行してゴブリンを叩きます。ここまででわからないことはありますか?」
「レベル100越えが先行ってのは、俺が勝手に攻めに行っていいのか?」
「それは私の一存では決められません。ウインは最強戦力です。魔王様とお父様が揃ってから相談しましょう。」
「分かった。レベル100越え全員がゴブリン退治に行くのか?」
「そうです。」
「質問はないが、ベリー、ルナ、聖剣を持っていてほしい。」
俺は3本の聖剣すべてを取り出した。
ベリーは聖剣を受け取ったが、ルナはためらっているようだった。
「ルナ、抜いてみてくれ。」
「もし抜けなかったら。」
「抜けなくても良いんだ。ルナのせいにはならない。」
「・・・はい。」
ルナの手は震えていた。
今までのように気軽に抜けるか試すという雰囲気ではない。
ルナはウイン一行の中で自分が一番弱いことを痛感しており、今までの頑張りはそのコンプレックスの裏返しでもあった。
ゴブリンキングの危機が迫ったここで、ここで抜けなかったらまた足手まといになるかもしれない。
真剣であるが故、手が動かなかった。
試すのが怖い。
ルナは緊張のあまりその場にうずくまった。
ルナは真面目なんだ。
俺はルナにすべてを押し付けるような真似はしない。
気負わなくて良い。
ただ聖剣に手をかけて抜けるか試すだけだ。
頼む!今だけでも良いからいい加減でいてくれ!
ウインはルナの後ろからそっと手をまわした。
「大丈夫だ。この戦いはみんなの戦いだ。背負い込む必要はない。力を抜こう。」
ルナがエクスカリバーに手をかけると、聖剣が光った。
その場にいた者全員がルナを見る。
エクスカリバーが鞘から抜け、さらにルナの周りが光で満たされた。
暗くなった街で、周りの者全員がルナを見た。
ルナは震えながら言った。
「抜けた!私、抜けました!」
ルナは涙を流し、俺はルナの頭を撫でた。
聖剣の戦士ルナがここに誕生した。
いつの間にか周りの者から拍手が鳴り響いていた。
アーサー王国に着くと、アーサー王と魔王がレベル100越えの精鋭全員を呼び出した。
「これより、軍団の指揮は私が行い、レベル100越えの精鋭部隊の指揮はガルゴン殿にお願いする。ガルゴン殿には早速出発してもらい、私は軍の隊列を組みなおし、後を追う。」
精鋭部隊は、魔王、四天王、オガ、ウォール、メア、ウイン一行の計12人だ。
俺たちが出発すると、魔王が口を開いた。
「ウイン、言いたいことがあるなら言え。」
「俺だけ先行して俺の判断で動きたい。デイブックの南の街を強襲したいんだ。深追いはしないから行かせてほしい。」
「分かった。行ってこい。ただし、私たちが追い付いたら報告しに戻ってきてくれ。」
「分かった。行ってくる。」
ウインはいつものように走ってあっという間に姿が見えなくなる。
「え?行かせて良かったんですか?」
メアが驚いたように言った。
「かまわん。ウインは何でも有りの方が輝くだろう。」
◇
デイブック南部
ウインを除いた精鋭部隊が南部に到着した。
「敵の反応がありません。」
「俺も感じないな。」
「ウインが近づいてきます。」
「報告だけど、南の魔物は大体片付けた。と言ってもあまりいなかったんだ。多分北に集まってるんだと思う。」
「南でウインが討伐した魔物の数はわかるか?」
「数えてないけど、1万くらいかな?」
「分かった。中央部か港の様子が分かればまた報告を頼む。」
ウインはみんなに物資を補給すると北に向かって走って行った。
「ウイン、さすがだな、思ったより進軍は早まりそうだ。ウォール、後続部隊に連絡を頼む。」
「分かりました。」
◇
「魔王、中央部はゴブリンと戦闘状態になってた。港はもう落とされていた。」
デイブック東の港と、中央部は10キロ程度しか離れていない。港を制圧した後に中央部にゴブリンが進行したのだ。
「わかった。ウイン、今日は休め。疲れた顔をしている。」
「そうだな、今日は休ませてもらう。」
次の日
「ウイン、今日からは一緒に行動してくれ。ゴブリンキングは名前持ちに進化している。出来れば精鋭全員で相手をしたい。その為にも後続部隊と合流したい。」
名前持ち。ウインにとっても未知の敵だった。
最強と歌われた伝説の英雄を殺す存在。
「全員で攻めるのは分かったけど、中央部と港以外のゴブリンは倒しておきたい。」
「わかった。だが、倒すのは中央部と港の南側だけにしてほしい。ウインが北に行っている間に名前持ちがこちらに来たら我々が全滅する可能性がある。」
「分かった。」
◇
デイブック中央首都
「ばぐず、にしのせっこうがつぶされた。ぜんめつだ。」
グラブが淡々とした声色で言った。
「南か、アーサー王国にとんでもなく強い者がいた。おそらくそいつだろう。」
「おまえよりつよいのか?」
「分からん。ただ、最大限の警戒が必要だな。俺が指揮をして迎え撃つ!」
「わかった。あとはまかせる。」
◇
アーサー王国とディアブロ王国の連合軍はデイブック中央部に到着し、陣形を組んだ。
デイブック中央部の首都が燃え、ゴブリンに占領されていたのだ。
ゴブリンは首都に立てこもることはせず、首都の防壁前に陣を組んでいた。
連合軍3万VSゴブリン軍団3万の戦いが始まった。
最後までお読み頂きありがとうございます!ここまで少しでも、ほんの少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!




