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戦う臆病者③

オガは限界の向こう側にいた。


オガの命は消えかけていた。


意識は薄らぎ、


手の間隔はなくなり、


オガ自身も終わりを悟った。


おらはもう、がんばっただ、もうからだがうごかねーだよ。


おらには無理だったんだ。おらはなーんも救えなかっただ。


オガは意識を失いかけた。











「ハイヒール!」


2つのハイヒールがオガの元に飛んだ。


「・・・ウイン」


ウインは東門の近くにいる魔物を瞬殺した。


「オガ、頑張ったな!」


オガの看病を兵士に頼むとウインは東門から外へ出て行った。


「お、おーーーん!うごおおーん!」

オガは小さくうめくように泣いた。


防衛戦を開始してから、7日目の朝を迎えていた。




「挑発!」


ウインは挑発で魔物を引き寄せてショートソードで確実に倒していった。

その合間に弓使いなどの遠距離攻撃をできる魔物を初級魔法で倒した。

ウインはその後、24時間戦い続けた。


そのおかげで魔王と四天王は回復し、魔王側の勝利が確実となった。







防衛戦は10日目の昼にようやく終わった。


アーサー王、魔王、などの重要人物が広場に集まり、ウインをたたえた。

その中にはアーサー王国のマスコミの姿もあった。


「ウインのおかげで救われた。それとアーサー王、援軍感謝する。」


「いや、ウイン殿に比べれば大したことはできなかった。」


黒服の女性がずいっと入ってきて俺にコメントを求めた。

やたらタイトなスーツを着た美人だった。


「わたくしはクロノというものです。お見知りおきを。」

クロノは頭を下げた。


「ウインさん、今回もまた英雄となりましたが、その件について何かコメントをもらえますか?」


「いや、今回の英雄はオガだと思う。」

オガは7日間にわたって防衛戦の要として活躍したのだ。

他の人からもそう聞いていた。


「なるほど、名言!いただきました!」

うん、この人、苦手だ。


「もちろんオガにも感謝しているが、そのオガを見出して鍛えたのもウインだ。」



「なるほど。」

そういってメモを取っている。

・・・・・やりにくい。


「魔王、何かできることはあるか?魔物を倒すだけなら協力できると思うぞ。」


魔王はクロノの方を向いた。


「詳しくは会議室で話をしようではないか。」

うん、クロノが邪魔だよな。


「私も参加したいです。」


「次の機会にしよう!」

魔王は毅然とした態度でシャットアウトした。


今回の会議は、魔王、アーサー王、俺、オガの4人だけだった。


「まず最初にオガ、ご苦労だった。オガのおかげで防衛戦を耐えることが出来た。オガはこれより四天王補佐の役職とする。」


「おらがそんな立派な役職をもらえるなんて、うれしいだあ!」


「オガ、四天王を狙ってもいいんだぞ。」


「とんでもねえだ。」


「詳しい連絡は後でする。オガ、今日はゆっくり休んでくれ。ご苦労だったな!」


オガは退室した。


アーサー王が深刻な顔をする。

「デイブックの件だが、共有しておきたい。数日前の情報にはなるが、どうやらデイブックの北で勇者ブレイブが人を殺して暴れまわっているらしい。デイブックの南ではゴブリンキングの精鋭3000と戦闘が行われているようだ。」


「ブレイブか、しつこい奴だな!」

俺は思わず愚痴をこぼす。


「3000とはいえ、ゴブリンキング率いる精鋭なら、一筋縄ではいかないだろうな。」


「ガルゴン殿、何か手伝えることはあるか?」


「すまないが木材を輸入してほしい。」


「承知した。デイブックの近くにいる住民の移民用の住宅ということか?」


「ああ、前倒しでデイブックの近くに住む住民を西側に移民させたいのだ。ウインは魔の森の北で木を切って持ってきてほしい。」


「1万本くらいで良いか?」


「1万本単位で何往復かしてほしい。アーサー王国からの輸入もある。どこまで必要かはまだ調査前の段階だ。」


「もう行っていいか?」


「待ってくれ。しばらくはディアブロとアーサー両国の内政の手助けをしてほしい。国力のあるデイブックより小国である我らの国の方が深刻な問題を抱えている。」


「私からも頼む。アーサー王国も今はまだ小国だ。ウイン殿の力が必要なのだ。」


「分かった。もう行く。」


そう言って部屋を出た。


「しかし、またデイブックか。」


「こちらとしては距離を取っているつもりだったが、人形に魔物を呼ぶ魔道具をつけて魔物をなすりつけてきた。」


「オートマタだな。オートマタの胸にに魔呼びの魔道具をつけた兵器が200体以上いたらしい。もとデイブック民主国の魔道具技術者から情報を得ている。」


「こちらに来た時には100体近くだった。おそらく全機かそれに近い数を投入したのだろうな。」


「恐らくそうだろう。」


「ただ、また作られたら厄介だな。」


「その心配は低いはずだ。オートマタの製造には多額の費用と時間がかかるのと、オートマタの技術者の多くはこちらに亡命している。」


「なるほど・・・それでも移民は進めるつもりだ。」


「やった方が良いな。予想外のことを仕掛けてくるのはデイブックの得意とする所だ。出来ることはお互いにやっていこうではないか。」


「デイブックにいるゴブリンキングについてはどう考える?私としては余裕の無い今デイブックを助ける気にはなれない。」


「それは私も同じだ。」


「ウインは、優しすぎる所がある。ウインがデイブックに行ってしまったら、また搾取されてボロボロになるだろう。私はウインにはしばらくデイブックには行かないでもらうよう情報を与えすぎないようにしたいと考えている。」


「私も同じ考えだ。」


魔王とアーサー王は、ウインの若さを心配した。

二人から見てウインはまだ若い青年なのだ。

ウインが潰されるとしたら戦いではなく、国民の敵意や身勝手さだろう。

二人はウインのこれまでの行動からそのことを見抜いていた。


二人の働きによって、両国の情報は少しだけ操作された。

デイブックとゴブリンキングの戦争は続いているが、それよりも今は両国の内政改善が急務である、とこちら側の危機感をアピールした。

もちろんこの動きはウインに内政を手伝ってほしいという思惑もあった。

しかしそれ以上に、ウインを守りたいという思いが強かった。

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