0991
「なぁ玄徳、お前なら旅行ってなったらどういうプランがいいと思う?」
知与がそんな風に瞳にアプローチしているとは知らずに周介は身近で年上の男子である玄徳に相談していた。
玄徳は一応は周介よりも幾つも年上なのだ。そういう意味では経験豊富で何かしら役に立つ知識が得られるかもわからない。
「旅行?あぁ、さっき姉御といこうって言ってたやつっすか。年末っすよね?となると寒いでしょうし温泉とかがいいんじゃないっすか?」
「やっぱそうなるか……けど二人だけで行くのに温泉ってどうなんだ?」
「あー……確かに別々で入るってなるとあれかもしんないっすね。さっきは京都とかみたいなこと言ってましたけど、その辺りに行くんすか?」
「うん、いろいろと見て回れるところもあるだろうし、暇にはならないかなって。ただ瞳の意見とかもあるしさ」
「姉御の場合何処がいいんすかね?姉御の好きなもんッてあんまイメージできねえっす」
玄徳としても瞳がどのような旅行のプランがいいのかはイメージできないのか悩んでしまっていた。
「……つーかよ、大将と副隊長って付き合ってんのか?」
その言葉を聞いてこいつマジかよと言う視線を向けたのは玄徳だった。そして一緒にいた言音はそういった話に興味があるのか周介の方を向いている。
「いや、付き合ってるとかそう言うのではないけど」
「付き合ってない男女で二人きりで旅行ってどうなんだ?親御さんの了解とか」
猛の言うことは普通であれば何もおかしな話ではないのだが、瞳の場合だと少し事情が変わってくる。
「姉御の家族にそのあたりは気にしなくても問題ないと思うけどな。他人の俺がいうのもあれだけど結構あれだったし……」
「玄徳の家も結構なもんだったけどな。まぁ……たぶん大丈夫だろ。それにやましいことするわけでもないし。今年一年お疲れさまって感じのやつだし。いやマジで瞳には世話になったからなぁ……」
周介が能力者になったのが二月。もうすぐ一年経とうとするところではあるが常に瞳のサポートがあった。
彼女がいなければここまでいろいろやることはできなかっただろう。
「そう言うもんかね……まぁ互いがいいっていうならいいんだろうけどよ……大将たちはまだ高一だろ?あんまりはめ外しすぎんなよ?」
「俺をなんだと思ってんだよ」
「まぁ、大将なら警察沙汰とかはねえと思うけどよ……高一で子供ができたとかそう言うのは面倒だぞ?」
またその手の話題かと周介はため息を吐く。年末が近づいて、クリスマスが近いせいかどうにもそういう話題に流れがちなようだった。
「お前なぁ……二人で旅行ってだけでそういう風な流れにもっていくのってどうなの?まぁ……猛はそうか、大学生だもんな。そういう経験も豊富か。そういうことやってきたからこその考えか」
周介の言葉に言音が若干猛から距離を置く。そういうこと、男女の行為を目的とした旅行を何度かしたことがあるのではという可能性に危機感を感じたのだろう。
「違えっての!勝手に人を判断すんな!」
「でも大学生って……俺の勝手なイメージだけどさ……やりまくってるイメージ。合コンやらサークルやら……」
まだ高校生の周介では大学というものはどうしてもそういった分かりやすく単純なイメージしかない。
特にそういう話題は大学の噂の中では割と有名な方であるため周介の耳にも届いている。
「マジで勝手なイメージだな。実際そういう奴がいるのも否定しねえけどよ、そういうのは割と珍しい部類……っていうか学校によりけりじゃねえかな?あとはサークルとかの特色っていうんかね……そういうのを裏で目的にしてるのがあるのは確かだ」
「マジか……ただれた日本社会の根幹は大学にあったということか」
「マジで勝手なイメージの押し付けやめろ。ともかく、大将たちはまだ高校生……っていうか未成年だからな。そういうことは自粛しておけ」
「つまり自分たちはもう成人してるからやり放題と……猛はあれだな……大人なんだな」
「やめろその反応!っていうか若干距離取ってるんじゃねえよ!俺を汚いものを見る目で見てんじゃねえ!お前らもほぼ同類だろうが!」
自分から若干距離を置こうとしていた周介や玄徳を捕まえて猛は強引に自分の近くに引き寄せる。
同類だというところは否定しないものの、この中で明確に相手らしきものがいるのは玄徳だけだ。
「っていうか、副隊長は俺から見ても美人なほうだと思うけどよ、大将的にはストライクゾーンには入ってないのか?」
「いや、そういうわけじゃない。すらっとしてるし顔立ちも整ってるし何より色々助けてくれてるし……」
少なくとも表向きの感情でも悪いことは感じていないのだなと感じた猛は何の気はなしに呟く。
「それなら引く手数多じゃんか。ぶっちゃけ結構いろんなやつが狙っててもおかしくねえんじゃねえの?まぁスポンサーの関係とかいろいろあるから難しいのかもしれねえけど」
瞳が誰かと付き合う。そのことを考えた時周介は胸の奥からどす黒いものが湧き上がるのを感じていた。
一体それがどういう感情なのか、周介自身あまり理解できてはいないが、良い感情ではないのは間違いなかった。




