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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十九話「世界は動く、まだ見ぬ先へ」

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「瞳さん!やったね!」


 周介たちが訓練に出かけた時、部屋に残った知与は瞳の下に目を輝かせながら駆け寄っていた。能力を使っているから実際に目は蒼く光っているのだが、そういう意味だけではなく楽しそうに目を輝かせている。


「別にただ旅行に行くだけでしょ。それより……ごめんね、知与たちを置き去りにするみたいで」


 瞳が気にしていたのは知与たち他のラビット隊メンバーを放っておいて旅行に行くというところだった。

 別に仲間外れにしているとかそう言うわけではないのは理解していても、瞳はその辺りが気になってしまっていた。


「そんなこと気にしないで。周介さんも言ってたけど、私は家に帰るし、たぶん玄徳たちも同じだと思うから」


「……実家に帰らないのはあたしだけか」


「瞳さんの場合は事情が特殊なのはわかってるもん。だから気にしないで。それよりも!二人きりでの旅行に誘ってくれたんだよ?ここをアピールしなくてどうするの!」


「いや、あたしは……アピールとかは……別に……」


「告白しようとか思わないの?」


「……それは……やだ……あいつから告白してきて、欲しい」


 この期に及んで一体何をまごついているのかと知与はもどかしさを感じるが、これは以前からも言っていたことだ。


 何が原因でそんな風に思っているのかは不明だが、瞳は周介から告白されたいと感じているようだった。


 知与からすると、周介も瞳に対して悪い感情は抱いていないように思える。今日の反応を見た限りだと、むしろ好意的に捉えている。時折何というか、視線を逸らしたり再び見たりという行動を繰り返していた。


 きっとあれは瞳を意識したものだと知与は確信している。だからこそここで押すことができれば、瞳の望み通り周介の方から告白だってしてくるかもわからない。


 もっとも、普段の周介との様子を見る限り最早恋人を通り越して夫婦のように見えているのは言わないほうがいいだろうかと知与は迷う。


 告白されたいと思っている時点で、周介のことを好きだと認めているようなものなのだが、瞳は今一歩踏み出せない。


 ヘタレだと罵ってやりたい気持ちもあるが、ここはデリケートな部分であると思い直して知与は瞳の操る携帯の方に意識を向ける。


 今彼女が調べているのは旅行先のデートスポットとでもいうのか、そういうおすすめの場所だった。


 表情はほとんど変えないくせにこういうところは本当にわかりやすいなと知与は目を細める。


「ねぇ瞳さん、何で周介さんに告白されたいの?自分からじゃダメなの?」


「なんでって……その……断られたら……たぶん……立ち直るのにかなり時間かかるし……」


 断られるのが怖いから告白しないのかと知与はもどかしさを胸に押抱きながらこの少女を前向きにさせるのはどうしたらいいのだろうかと悩んでしまう。


 だが、瞳がここまで怯えるのも理解できる。知与はそれを知っている。親しい、誰よりも身近な人物から拒絶されることの恐ろしさを。


 知与は幸いにして、両親から拒絶されるようなことはなかった。だがいつ見捨てられるのではないかと気が気でなかった。重荷になっている自覚があるからこその考えなのだが。


 瞳の場合は少し違う。彼女の場合は、既に一度両親から拒絶されている。もちろんそれに悪気があったとか、その時は仕方がなかったということもあるのだろう。


 能力を発現し、不安な状態であるのに、誰かに近くにいてほしい状態だったにもかかわらず、逃げられる。

 その背景が理解できないほど瞳は馬鹿ではないしもう子供ではない。だが、子供だった頃の心には未だ強く突き刺さったままなのだ。


 拒絶されることが怖い。瞳が周介の近くに居続けるのも、そんな思いを誰にも与えたくないからというのもある。そして周介が遠ざけることを許さなかったからでもある。あの時、あの夏の日の瞳の家でそうしたように。


「……ねぇ、これだけ聞かせて?瞳さんは周介さんのことが好きなんだよね?」


「…………………………」


 瞳は答えなかった。だが答えなければ許さないという知与の圧力に屈するように、視線を逸らせながら顔を赤くする。


「……………………うん……」


 消え入りそうな、声を発したかも怪しいような返事だったが、知与ははっきりとそれを聞き取った。


 言質を取った、というわけでもないが、その言葉が聞けただけで十分すぎる。


 となれば、あとは周介をその気にさせるか、事故のように仕向けて瞳の本心を周介に教えるかというところになる。


 知与が手を貸せそうなのは後者だ。こうやって二人で話していると見せかけて周介に隠れていてもらえば瞳の本心を周介に伝えやすい。だがそれではだめだと知与の中の乙女の部分が叫んでいた。


 ここまで拗らせてしまった瞳の恋心を解きほぐすにはやはりストレートに告白してもらうほかない。となれば周介をその気にさせるしかないのだ。


 とはいえ勝算がないわけではないのだ。知与はどうにかしたいなと考えながら赤くなったままの瞳を確認して小さくため息を吐く。


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