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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十八話「変わるもの、変わらないもの」

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「試験の全工程の完了を確認した。それでは、総括に移ろうか」


 全ての試験が終了したことで、上層部、及び今回の試験を評価していた審査員の人間が全員集まっていた。


「七つの部隊、十六人の個人を選定して行った試験だったが、単純な取得ポイントでの評価だけではなく細かなそれぞれの評価も加えて考察する必要がある。各々感じたこと……特に忖度することなく意見を述べてほしい」


 進行役になっている人間の言葉を受けて全員が今回の結果を見直していた。


 最終的な結果から言えば、単純な試験成績で言えば今回の選抜試験で特に高い評価を獲得したのはトータス隊、ビーハイブ隊、そしてラビット隊の三つの部隊だった。


 トータス隊は初日と三日目に高い評価を得た。ビーハイブ隊は二日目と三日目に高い評価を得た。ラビット隊はすべての状況に置いてトップではないものの高い評価を得ている。


「トータス、ビーハイブ、そしてラビット隊の三つのどれかがマーカーになるのが適切だろうとは思うが……それぞれの特徴が違いすぎるか」


「トータス隊は機動力はそこそこ、戦闘能力耐久面は群を抜いている。ビーハイブ隊は召喚獣を使った損傷を気にしない大胆な行動ができ、ラビット隊は機動力、運搬という面では随一。さて……どの部隊にするべきか」


 三つの部隊の特色が全く違うためにそれぞれ得意な状況が異なる。特に今回は総合的な判断が求められるのだ。


「一つ一つの部隊に絞って判断していくか。まずはトータス隊」


「トータス隊はわかりやすいな。とにかく硬い。ある程度移動もできるがそれでも機動力に多少の難がある。足を止めての戦闘であれば彼らを倒せるものは少ないだろう」


「逆に、戦闘以外の面で少し動きにくさが目立つ。大太刀部隊だから当然かもしれないが、戦うことが主な面子が集まっている」


「守る、という点では高い成果を発揮できるだろうが、それ以外だと動きが鈍るのが問題だな。そのあたりを小太刀部隊にフォローさせれば問題ないか?」


「いや、一般人が好意的に感じるような行動が求められる。戦うだけだと、どうしても評価は偏るだろう」


 トータス隊はもともと大太刀部隊の中でも高い耐久力を前面に押し出した戦い方を得意とする部隊だ。逆に言えばそれ以外の状況では非常に弱い部分を見せてしまう。


 亀部隊という名の通り足もそこまで早くはない。何人か動けるメンバーはいるが、それ以外はほとんど一般人に毛が生えた程度の機動力しか持っていないのだ。


 高い機動力を持った相手だと逃げられる。それは初日の訓練でラビット隊と対峙した時に何度も見せられた。


「では次、ビーハイブ隊。彼らは戦闘能力という面でも補助的な活動という意味でも活躍してくれそうではあるが……」


「本人たちの耐久力のなさがネックだな。それに、召喚獣だけが戦うというのも少し……一般人に対しての評価がどうなるかというところだ」


「召喚獣に乗れば機動力は確保できるが……不意打ちなどに弱いかもしれないな……単純に動きや貢献度で言えばかなり高いところにあるのだろうが」


 ビーハイブ隊の一番の問題は部隊全員の耐久力が低いというところだ。その能力の射程距離そのものも召喚獣ということもあって限度がある。


 本人たちが敵の攻撃を避けられるだけの身体能力を持っていればいいのだがあいにくそういうこともない。

 召喚獣を生み出せるということ以外は完全にただの一般人と同等だ。


 全員を召喚獣に乗せればその分機動力は増すが本人たちの危険も増す。ただ、戦闘だけではなく補助的な活動においても活躍できそうというのはまさにその通りだ。


 召喚獣は壊されても再召喚できる。囮にも使えるし盾にも使える。敵の能力が判明していない状態での情報収集の意味での攻防には最適の人材と言えるだろう。何せ召喚獣は壊されても何も損はないのだから。


「では次、ラビット隊。彼らは戦闘能力こそそこまで高くないものの、機動力と運搬能力に秀でている。この二つに関しては拠点、そして組織内でもトップクラスだ」


「ただ、やはり戦闘能力のなさがネックだ。三日目の直接戦闘でも生き残ることはできなかった」


「だが、初日では全員生存している。全ての項目で上位に入っているのはラビット隊だけだぞ」


「マーカーは戦闘を行うことが前提だ。そこに戦闘能力のない人間を当てるというのは……」


「戦闘能力がないというのはさすがに言い過ぎでは?三日目の試験でも、BB隊相手に踏ん張っています。特に、ラビット隊の隊長は、本気を出したBB隊相手にもそれなりの時間逃げ続けていた」


「逃げているだけでは相手を倒すことはできないぞ」


「マーカーだけに戦わせるわけではないだろう。その時間を稼いでいる間に倒す戦力を用意できればいい」


「……あの機械のロボットは……まぁ一般人に対するうけはいいだろうが……んん」


 周介達ラビット隊の評価は大きく分かれていた。戦闘能力は決して高くはないが生存能力は高く、機動力があり、おそらく一般人の受け入れやすいタイプであるということはわかる。


 それぞれの分野で比較的高い評価を得ており、どのような状況にも対応できる所謂万能型の機動力部隊であるということは間違いない。


 だからこそ評価が分かれるのだ。


 マーカー部隊はすべての拠点の矢面に立つ存在だ。敵が現れれば誰よりも前に立ちその敵と戦い、人々を助け、人々のために尽くさなければならない。


 求められるのは戦闘能力、対応力、そして人格だ。


 それらすべてを有していることがマーカーの前提になる。


 トータス隊は戦闘能力に関しては問題はないが対応力に難がある。


 ビーハイブ隊は戦闘能力、対応能力の両方ある程度こなせるが、両方やや不安が残る。


 ラビット隊は戦闘能力に難があるが、対応能力は秀でている。


 この三つの部隊の中でどれをマーカーとするか、上層部は真剣に悩んでいた。


「なにも一つの部隊をマーカーとする必要もないのだろう?三つの部隊をマーカー、あるいはその予備部隊としておくのもアリじゃないか?」


「だが、一般人への認識のためにも、代表部隊としての公表する必要もある。そういう意味ではインパクトがあったほうがいいか……」


「インパクトという意味では……あのロボットだと思うが……」


「であればあのロボットだけを運用すればいいのでは?」


「残念ながらあれはラビット隊にしか……それもあの隊長にしか動かせないそうだ。それ専用機に作らせたのだとか」


「随分と、都合のいい機械を作ったものだな……このタイミングに出来上がっているせいかとしては、見計らったかのようだ」


 一般人に対してのアピールのために必要なのは行動に加えてインパクトだ。他の情報に埋もれないような衝撃的な情報をどれだけ与えられるかで民衆の意識を操作できる。


 その時の流行廃りなどもあるだろうが、特定の情報を流した時の市場や民間の人間の意識や興味がどのように動くのか、上層部はマスコミなどの情報伝達組織と長く関わっていたことでよくわかっていた。


 昨今の情報戦においてもその傾向は強い。どのような情報をどのようなタイミングで出すかというのももちろん大事だが、何よりも衝撃的な情報を如何に出すかが問題なのだ。


 そんな状況で、正式版のラビットシリーズのΔがもう少しで完成しようとしているというこの状況は見計らったかのように見えなくもない。


 ドクからすれば、何とか間に合わせることができるというところなのだろうが。


「代表の部隊を今の部隊の混成とすることはどうだ?そもそも部隊編成としては……一番トータス隊七人、ビーハイブ隊七人、ラビット隊が六人……全部集まっても二十人だ。小隊規模にもなっていないぞ」


 部隊の単位というのはそれぞれある程度の構成がされている。単純に軍のおおよその統率のための編成でもあるが、小隊規模であれば三十人から六十人程度を小隊として扱う。それ以下であれば分隊、班、組と下がっていくことになる。


 二十人という人数は二個分隊程度の数でしかない。


「一般の軍隊の規律をこちらに持ち込む必要もないだろう。そもそも部隊単位での運用もあくまで能力同士の相性を考慮した形だ。無理に一緒にするとかえって動きにくくなるぞ」


「問題はマーカー部隊をどのように運用していくかという話もある。常に出られる人間を選出する必要があるが……それぞれの部隊はどうだ?」


「トータス隊は一部の人間は既に社会人だ。大学生のものもいる。ビーハイブ隊は組織の運営している会社に所属している人間も多いが学生も半分いる。ラビット隊は大半……というか一人を除いて全員学生だ。残りの一人も組織が運営している会社の職員だ」


 一人というのは玄徳のことだ。玄徳は一応社会人として活動している。それ以外は全員学生というなかなか珍しい構図だが、一応すべての部隊が学生と社会人の混成チームになっている。ビーハイブ隊は一般の会社ではなく玄徳と同じように組織が運営管理している会社の職員という形をとっている。


 この構成であれば動きやすさはビーハイブとラビットの二つの部隊が比較的動きやすいことになる。

 ただ戦力的にはトータス隊を入れておきたいという気持ちも評価していた人間としては強かった。


「もし全員をマーカーとしての役割を与える場合、構成上、常に全員が出られるということはないだろう。有事の際、どの部隊が出られてもいいように訓練を重ねておくのが重要か……その中心、軸となる部隊は……」


「…………ラビット隊になるだろうな」


 常にどのような状況においてもある程度の活躍が期待でき、何より高い機動力と運搬能力を持っているラビット隊は出撃頻度がかなり高くなければ成り立たない。


 有事の際に常に出られる状況にあるのもラビット隊だ。そして、最も早く現地にたどり着くことができるのも、ラビット隊だ。


「ラビット隊の輸送能力を使えば、現地への移動は問題はない。学生に頻繁に出撃を強いるというのは少し申し訳なく思うが」


「マーカー部隊になった時に起きることを伝え、場合によっては上手くケアできるようにすればいい。能力者である以上、責任と義務を果たす必要がある。申し訳ないとは思うが……」


 上層部としても学生を、子供を戦場に送るというのは心苦しくもある。だがそれ以上にそれ以外の適任がいないのだ。


「拠点から出撃というだけではなく、現地を中心に活動しているものも協力してもらう必要があるだろう。そうなった時、うまく連携できるだけの技量がないと厳しいな」


「連携に関しては訓練を促していくほかないだろう。この中で訓練の頻度が一番高いのは……やはりラビット隊か……新生部隊なのだから当然といえば当然だが」


 各地に点在している能力者はいる。拠点に常に駐在しているというわけではなく、大規模なビルド隊や製作班の人間、あるいは各所に生活がある者はバラバラに仮拠点や事務所を持っている。


 そういう人間に現地に向かってもらう必要もある。そうなればその場で即席の連携をしなければならなくなってしまう。


 今回の試験で即席の連携はかなり難易度が高く、高い練度を持った人間であろうと即席の連携では劣ってしまうということがはっきり結果に出た。


 もしこの三つの部隊を混成させるのであれば、より高度な連携ができるような訓練をしておかなければならない。


 ただ、既に社会人として生活を持っている人間はどうしても訓練に割く時間が短くなってしまう。そのあたりが苦しいところだった。


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