0983
「百枝君、チームメイトは大丈夫?」
猛が横になって眠ったところで、様子を見にエイド隊と一緒に笹江がやってきていた。
自分のチームメイトがこのような状態にさせたということもあって少し気がかりだったのかもしれない。
「寝ました。こいつの治療、お願いします」
「百枝君達は?休んでいっても大丈夫だと思うけど?」
「他のメンバーが動いてるみたいなんで、俺らも手伝えることがあれば手伝ってきます。あとは片付け位でしょうけど」
試験自体は既に終了したのだ。治療の具合からしてまだ試験が終わってからそこまで時間は経過していないだろうということは何となくわかる。
まだ自分たちにも手伝えることはあるだろうと周介は考えていた。
「そう……無理はしないでね。百枝君だってそれなりにダメージ抱えてるんだから」
「ほぼ瞬殺されたんですから無傷みたいなもんですよ。それじゃ猛のこと頼みます」
周介と瞳が一礼してから治療室を後にする。
自分たちがいるのが宿泊棟のすぐ近くの建物であるということにようやく気付き、とりあえず外に出てみると演習場の方ではビルド隊や製作班が絶え間なく動き回っているのが見える。
かなり滅茶苦茶にいじった地形を元に戻す必要があるのだから無理もないかもしれない。
「今は地形直してるのか……にしても酷い状態だな」
「そりゃ大太刀部隊が全力で戦闘した後だからね。穴埋めも大変なんでしょ。まぁそれでも普通にやるよりはずっと楽でしょうけど」
「よしよし、まだできることはありそうだ。とりあえず装備かなんか着ないと満足に動けないな……みんな無線はつけてるのか?」
「そのはずよ。はい無線」
「サンキュ。言音、聞こえるか?こちら周介」
瞳からラビット隊が共有で使っている無線を受け取ると、無線の向こう側にいると思われる言音に話しかける。
数秒してから無線の向こう側から言音の声が聞こえる。
『若!目が覚めたんですね!』
「おかげさまでな。仕事手伝ってるんだろ?俺も手伝うよ。何すればいい?」
『えぇ?若、大丈夫なんですか?あんなにぐったりしてたのに』
「あんなのは慣れっこだって。今みんなは何してる?それによって動くよ」
言音は少し迷っているようだったが、少ししてから瞳の持っているカバンの一つから上半身だけ出てくる。相変わらずホラーな図だなと思いながらも、とりあえず言音も無事であったことに周介は安堵していた。
「お疲れ。言音も疲れてるだろうに休んでなくて平気か?」
「私はこの中に入ってただけなんでそんなに疲れてないっすよ。若は本当に平気なんすか?気絶してずっと姐さんが付き添ってましたけど」
「大丈夫だって。それで?玄徳たちは何やってんだ?」
言音は周介の大丈夫の言葉を信用していないのか、少し渋るような素振りをしながらも別のカバンからディスプレイを取り出す。
「今地形がこんな感じになってて、主に使った機材の運搬をしてるっす。土とかの地形はビルド隊の人たちがやるんすけど、そこで使ってた機材は動かすの大変だってことで」
「機材か……具体的には?」
「訓練所にあるような障害物とか、あとはカメラとかっすね。結構いろんなところに仕掛けられてたみたいで、ちーちゃんが一緒に動いて回収しまくってます」
「了解。カメラは玄徳に任せてよさそうだな。んじゃ俺はデカ物を運搬してくか。言音、βとかγはどこにある?」
「まだ私たちが戦った場所にあるっす。あれは若じゃないと動かせないので」
「了解。俺の装備くれ。いつも使ってるのでいい」
周介の言葉に言音は困ったように瞳の方に目を向ける。本当に装備を渡してしまっても大丈夫かという確認の視線だ。
瞳もその視線の意味を理解してため息を吐く。
「周介、さすがに一応病み上がりなんだから装備使って動くのはやめなさい。この場所なら車でも十分に動けるでしょ?あたしだって一緒に行くんだから」
「ん……それもそうか。言音、車まだあるか?」
「大丈夫っす。壊れてないのだしますね」
瞳のフォローに安心したのか、言音はさらに大型のチャックのついた袋を出してその中から車を一台出していく。
個人装備で飛び回るよりは負担も少なくて済むだろう。瞳からすれば少し休んでほしいところではあったが、こればかりは周介の性分だ。玄徳たちが働いているというのに自分だけ休んでいるわけにはいかないという謎の使命感があるのだろう。
「言音、周介ほどじゃないにせよ、玄徳もだいぶ疲れてるはずだから、そっちの方を気にかけてやって。いざって時は無理矢理止めていいから」
「了解っす。姐さんは……」
「あたしはこいつの付き添い。ほっとくとすぐに無茶するから」
「信用ないな……片付けだけなんだから無茶なんてしないっての……」
取り出された車に乗り込んで周介は瞳が乗るのを待ってから発車する。車の窓の外では修復作業を続けているビルド隊や製作班の人間がいる。
その中に、周介もまた混ざっていく。少なからず疲れを残すその体に鞭打って、いつものように仕事を片付けようとしていた。




