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「お、なんだ百枝起きたのか」
「んあ?あれ?福島。なんでここに?」
ベッドルームの一角から顔をのぞかせたのはミーティア隊の福島だった。他の部隊の状況をわかっていないために周介はなぜ福島がここにいるのかわからなかった。
「選抜試験の相手役として呼ばれたんだよ。結構大変だったんだぞ?相手がアカシャ隊だったから」
「うわ……よく無事だったな……いや、でもそうか……ミーティア隊だったら射程の外から一方的か?」
「そうでもないって。状況が相手にとって不利じゃなかったら俺らこんがり焼かれてたよ。そっちはBB隊とやったんだって?お前らの方がよく無事だったなってもんだよ」
「無事って言っていいかわからないけどな」
全員戦闘不能にさせられているのだから実際は無事とは言えないだろう。これが実戦だったら間違いなく殺されていたに違いない。
今回あれだけ長く戦闘ができたのは偏に大門たちが手加減をしていただけの話だ。
「っていうかそうか、相手側の人たちも呼んでるってことは、結構な人が今回の選抜試験に関わってるんだな」
「あぁ。十文字も来てるぜ?あいつらはトータス隊が相手だったから大変だったって言ってたぞ?」
「へぇ。倒したのか?」
「いや、逃げ切られたらしい。さすがにあの硬さを全員倒すのは骨が折れるだろうよ。相性は良かったみたいだけど、亀田さんが倒しきれなかったみたいだ」
逆に言えば亀田以外の全員は倒したのかと、十文字の所属するノイズ隊の攻撃力の高さに驚く。
十文字の能力の汎用性の高さは周介も知っていたが、それほどまでに高い戦闘能力を持っているとは思わなかったのだ。
「結果は福島も知らないか?」
「たぶん後でってなるんじゃねえの?さすがにこの状態じゃ結果発表もくそもないだろ。お前もきついならエイド隊の方に行ったほうがいいぞ?別の部屋で絶賛治療中だからよ」
「そうさせてもらうか……ついでに猛の顔も見ていかないとな」
「あぁ、ボロボロにやられてたみたいだな。まぁ、なんにせよあんまり無理すんなよ?お前ただでさえ脆いんだから」
「わかってるよ。俺だって無茶はしたくないっての」
周介の言葉を信用していないのか、それとも単純に口だけだと理解しているのか、福島は肩をすかしてため息を吐きながら別の部屋へと向かっていった。
周介もベッドから降りて立ち上がろうとするが、立った瞬間瞬時に足から力が抜ける。
そしてそうなるとわかっていたかのように、瞳が体を受け止めていた。
「わ、悪い……さすがに疲れてるみたいだ」
「当たり前でしょ。あたしたちと違ってあんたは動いてたんだから。とにかく、無理はしないで」
「わかってる。このままエイド隊のところに行くか」
「……ん……肩くらいなら、貸してあげる」
「サンキュ。こういう時身長差があんまりないと助かるな」
周介は自分の身長の低さをこういう時だけはありがたく思っていた。もし周介が瞳よりもずっと大きかったら瞳は周介を受け止めることもできなかっただろう。
そういう意味では不幸中の幸いというべきか。周介としてはもっと身長が伸びてほしいというのが本音だが。
立ち上がってあたりを見渡すと、福島が言っていたように部屋にある複数のベッドには多くの大太刀部隊のメンバーが横になっていた。その中にはビルド隊の人間もいる。
恐らく別の部屋には手越たちアイヴィー隊も横になっているのだろうということが予想できた。
これほどまでに負傷者が出るというあたり、今回の戦闘訓練がかなり悪質、というより参加側が不利だったということがわかる。
苦手な状況、苦手な相手と戦うということがそれだけ危険だということがわかる光景だった。
能力者戦というのは互いの出力や技量によっても変化するが、ほとんどが相性によって決まるといっていい。
周介たちのように耐久力こそないものの速度がある部隊には、速度と身体能力の高い部隊を当てればすぐに片が付く。
アカシャ隊のように高い火力を持っているが防御が不得手な部隊は射程距離で優位を取れる部隊を当てれば一方的に攻撃ができる。
手越たちのように陣地構築を得意としているが機動力と攻撃力に乏しいチームは、地形そのものを変化させるような能力者を当てれば高確率で封殺できる。
能力は高い性能を持っているしその気になればどのようなことでもできるように感じるかもしれないが限界はある。その限界の種類によって、得手不得手が発生する。
そして苦手な相手と戦った時が、この状況だ。同じような練度を持っている大太刀部隊の中でもこうしてはっきりと結果が出るのだから、能力というものがいかに相性が大事かということを教えてくれている。
「生き残ったのはトータス隊と……あとどこなんだろうな?ここにいない人ってことだろ?」
「さぁね。少なくともほとんどがここにいるのは間違いないでしょ。もう出歩いてる元気なのは結構少ないわよ?」
多少なりとも負傷をしている人間が簡単に出歩けるはずはない。それだけ周介たちは加減をされたのだということを実感し少し情けなくも感じていた。




