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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十八話「変わるもの、変わらないもの」

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 周介の操るβに叩きつけられた大門だったが、地面に着地すると同時に受け身を取り、必要以上に遠くに運ばれないように踏ん張っていた。だが、その着地を狙っているかのように大門の手や足目掛けて知与の対物ライフルの射撃が飛んでくる。


 大したものだと、大門は舌を巻いていた。


 あの一瞬、猛によってわずかに持ち上げられた肉体の動きを見逃さずに加速させた玄徳もそうだが、その動きに間に合わせるようにβを動かした周介、そしてβの攻撃を防御させまいと妨害に入った知与。四人のタイミングが少しでもずれていれば、雨戸を止める手が足りずにそのまま合流を許していただろう。


 いや、四人というのは正確ではない。実際は五人のタイミングというべきだ。


 そして、βや知与の意識が大門に向いた瞬間、展開していた人形たちは一斉に雨戸に対して攻撃を仕掛けていた。


 自爆する人形や銃火器を持っている人形全てが、雨戸のいる方目掛けて全力で集中砲火を浴びせたのだ。


 もちろん土砂が降ってきていた状況でもあったため、いくつかの人形の攻撃は当たっていない様でもあったが、それでも多角的、及び高威力の銃火器による攻撃に雨戸の進行速度を僅かに遅らせることができていた。


 見事な連携と言わざるを得ない。荷物を出し入れすることに集中している言音はさておき、その場にいるすべての人間が状況を瞬時に察して行動したのだ。周介の行動を想像できなければこうはいかなかっただろう。


 大門は立ち上がりながら自分の近くに迫ってきているβを見て笑みを浮かべる。


 雨戸と戦っている猛のフォローに玄徳を、そして人形は全体的に展開しどちらのフォローもできるようにしている。


 知与の狙撃も同じようにどちらも狙えるようにしているようだった。じわじわとだが、雨戸、そして大門両方と距離を取るように陣地移動もしている。


 大門への相手はβ。どの程度の実力なのかはまだ大門自身はっきりと確認しているわけではないにせよ、なかなか面倒な相手であることは先の動きからも理解できた。


 車が走っていたところも見ていたため、周介の能力を使ってうまくすればもっと露骨に分断することができるだろう。


 ラビット隊の戦術を、大門は高く評価していた。


 個の力を重視する大太刀部隊ではあまり見られない、連携を重視した戦術だ。そしてその最たる部分は、敵に対しては連携を許さず、味方は連携をしやすいように布陣すること。


 単純ではあるが、それを大門たちを押さえられるレベルで実施できるのは役割分担をかなりはっきりさせているからだろう。


 前衛一人には必ず一人を足止めさせる。そしてその足止めも万全にできるように常にフォロー役が控えている。


 中距離でのフォロー役のレベルが高くなければこの方法はとれない。なにせ近接戦闘での連携やフォローになればなるほど必要な技量が上がる。この必要な技量を瞳、玄徳、知与の三人が担っているのだ。


 そのフォローが行き渡るように布陣を調整しているのが周介、そしてその根幹を支えているのが言音だ。


 大門から見れば、猛の実力は前衛としての実力は一つ下程度のものだ。だがそのフォローが大門をあの場に留めさせ、今もなお雨戸をあの場に留めている。


 もし周介たちの連携を崩壊させるとしたら、あの中衛の三人の誰かを崩すことが絶対条件だ。


 もっともそれを許さないといわんばかりに猛が前に出て、そして今こうしてβが前に出てきているわけだが。


「さて……どうしたものかなぁ……」


 大門は目の前にいるβを見て困った顔をする。この機械の巨人を周介が操っているのはわかっている。


 壊そうと思えば壊すこともできるのかもしれない。ただ、これほどのものを壊すのももったいないと思ってしまうのも事実だ。


 本当にどうしたものか。そんなことを考えていると、βが腕を振り上げて大門めがけて拳を叩きつけようとする。


「へぇ、やる気なんだね」


 振り下ろされた拳を大門は迎え撃つ。全力で振るった拳は、振り下ろされた機械の拳を勢いよく跳ね上げさせた。


 瞬間、その腕や指、ありとあらゆる関節から蒸気が吹き上がる。


 その様子を見て周介は歯噛みしていた。強化能力、そして変貌能力。それらを持つ相手にはβでは攻撃力が足りな過ぎるのだ。かといって機動力もあるというわけではない。


 先程の雨戸のように、その気になれば簡単に避けられるであろう攻撃を、大門はあえて受けて見せた。

 それは、この光景を見せるためだろう。


 βでは相手にならないぞと、そう言っているのだ。


「……どうしたもんかなあれ……あの人相手にどう立ち回ればいいんだよ」


 周介はβの全力の一撃でも全く意に介していない大門に参ってしまっていた。あの場で足を止めてくれているのはただ単に周介たちに手加減をしてくれているだけだ。その気になれば守るもののない大門はあっという間にこちらに駆け込んでくるだろう。


 そうさせないために瞳が既に焼夷手榴弾を大量に投擲して再び火の海を作り出している。空中に跳び出そうと知与が撃ち落とせる状況はできているが、大門は地面を悠々と歩いてくることができてしまうためこれも絶対ではない。


 本当であれば横方向、あるいは上方向に弾き飛ばすのが最適なのだが、今回は戦闘空間が限られている想定なのでそれをしてもあまり意味がない。それに大門は弾き飛ばしてもすぐに戻ってくるだろうことが容易に予想できた。


「どうするのあれ?待ってるわよ?」


 瞳の言っている意味が周介には理解できた。言葉の通り大門は待っているのだ。何を?と聞かれれば答えは一つ。周介をだ。


 理解できた理由は一つ。大門の視線が周介に向けられ続けているのだ。そんな熱烈な視線を向けられれば、いやでも気付くというものである。


「……待っててくれるならそのほうがいいけど、いつまでもは待ってくれないよなぁ……仕方ないか……仕方ないよなぁ……!」


 周介は自分の頬を叩いて個人装備を起動させる。


「瞳、何かあったら頼む。知与、援護頼むぞ」


 周介はγを足場にしてβのいる方向へ跳躍する。大門はそれを待ってましたといわんばかりに準備運動をしていた。


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