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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十八話「変わるもの、変わらないもの」

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 試験の三日目。最終試験が具体的にどのようなものかもわからない中、全員が一か所の会議室に集まっていた。


 二日目のそれと同じように雑談をしているタイミングでドクが入ってくる。


「さてみんな、しっかり休めたかな?今日で試験最終日。最終項目になる。君たちの本領を発揮してもらうことになるわけだけれど、体調が悪い人はいないかな?大丈夫かな?」


 ドクが全員の顔色をうかがうが、少なくともこの場に体調を崩している者はいなかった。


「よかったよかった。今日はたぶん各員全員ハードな内容をこなしてもらうからね。きついと思うから覚悟してほしい」


 ドクをして全員ハードという言い回しに少し不安が募る。具体的なことはなくともきついということだけは確定しているところがまた不安をあおるのだ。


 そんな中、各部隊の集合場所が掲示される。


 それぞれが違う場所ではあるが場所はこの演習場のどこかだ。特にどこか別の場所に向かうということはなさそうである。


「さて、君達はこの場所に行ってもらって、戦ってもらう」


 戦ってもらうという何ともシンプルかつ分かりやすい内容に全員が眉を顰める。また初日のような集団戦だろうかと考えたがそういうわけではないようだった。


「今回君たちにやってもらうのは部隊単位、あるいは個人単位における戦闘をしてもらう。各部隊によって相手が違うから現地に行って確認してほしい」


 つまり今回は試験を受ける者同士で戦うのではなく、試験監督役の能力者の誰かと戦うということだろう。


 初日のそれが機動力や集団戦における乱戦などもあり得る状況判断や立ち回り方などまでを含めた総合的な戦闘訓練だったのに対し、今回は純粋な戦闘能力を判断するものであるらしい。


 マーカー部隊を選抜するために必要な何かがどのようなものかはまだはっきりしていないが上層部が戦闘に重きを置いているということはよくわかる。


 それも当然といえるかもしれない。何せこれから矢面に立たなければいけない部隊なのだ。相手が犯罪行為を平然とする能力者であるならその戦闘能力は必須。


 組織がどのようなアピールをするかはさておき、敵に簡単に負けるような能力者をマーカーにするのはまずいのもわかる。


 ただ、ドクの次の言葉が周介たち参加者に冷や汗をかかせた。


「各員の相手は、君達が苦手とするタイプの部隊、あるいは個人だ。戦闘の勝利条件は相手を降伏、あるいは戦闘不能にさせること。制限時間は一時間。敗北条件は言うまでもないね?みっちり戦ってほしい」


 苦手とする相手と戦って一時間。しかも勝利条件は相手を倒すか降伏させることだけ。


 時間制限有りの状況下でそんな内容を突き付けられて平静でいられる者は少なかった。


 この中で平静を保てているのは大太刀部隊のベテランクラスの人間だけだ。あるいはどのような状況においても対応できると考えるような人間だけ。それ以外の人間は嫌そうな顔や不安そうな顔を浮かべている。


「なお、今回の戦闘フィールドは各部隊個人に対応する形で作らせてもらった。広い人もいれば狭い人もいる。もちろん、それぞれが苦手とするような状況を作らせてもらった。それぞれ頑張って対応してほしい」


 つまり、苦手な状況、苦手な相手に対しても立ち回れることを証明しろということだ。


 矢面に立つ者が、苦手な相手だからと負けてもらっては困るのだろう。苦手な相手に対してもある程度立ち回れることを証明しなければマーカーとはなれない。全ての部隊の先頭には立てない。


 なんとも嫌な試験だと、その意味を理解して全員が眉をひそめてしまっていた。


「装備の補給、確認なんかを含めて会議終了後一時間以内に各員の指定されている場所に移動してほしい。質問はあるかな?」


 質問を振られた時、一人だけ手を挙げる者がいた。それはアカシャ隊の人間だ。初日に賞を取っていた穂村である。


「相手によっては、全力を出してもいいって解釈でいいんですか?」


「もちろん。君たちの全力を持って相手をしてほしい。それでも勝てるかどうかわからない相手を僕らは選出している。是非全力で頑張ってくれ」


 アカシャ隊としては、自分たちが全力を出すことを恐れてもいるのだ。自分たちが力を発揮することで恐ろしい結果になることを理解しているが故の配慮に近い。


 だがその配慮ははっきり言って意味がない。ドクはそう言い切った。全力を出しても勝てないかもしれないような相手や状況を作った。


 それがどういう意味を持っているのか、それぞれが現地に行って初めて理解できることだろう。


 この時点ではとにかく気持ちの準備をする以外に方法がない。特に装備ではなく能力を頼って行動しているものは。


「他に質問がある人はいるかな?なければ、最終試験を開始させてもらう。試験終了後は治療なんかを受けて、今日の十六時にここから全員で撤退する。バスなんかをチャーターしてるから、それまでは自由時間になるかな。結果は後日報告になるんでよろしく」


 ドクの淡々とした態度に全員が複雑な境地だった。これから自分たちの苦手とする相手と戦わなければいけない。しかも苦手とする状況下で。


 苦戦は必至。問題はどのように戦うかだ。


 苦手な部分をついてくるのは能力者戦においても常套手段。その苦手をどの程度克服するかの意識改革でもある。


 さてどうしたものかと多くのものが考えだす。だが、その考える時間ももうほとんどないのだ。


 苦戦を強いられるまであと、一時間。


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