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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十八話「変わるもの、変わらないもの」

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「ふぅん……中堅か否か……ねぇ」


 宿舎の風呂に入っているとき、ちょうど一緒に入ることになった手越たちにその話を振ってみた。

 汚れた髪を洗いながら手越はどう答えたものかと迷っているのか唸っていた。


 確かに周介の実力は間違いなく上がっている。ただ周介が組織に入って一年未満の新人であるのも間違いない。


 その二つを加味して果たして中堅と答えていいものか迷っていた。


「実際、百枝たちは実力的には十分中堅と言っていいと思うが?経験年数こそ新米の部類だが、十分以上に育っているのは誰もが認めるところだろう」


 同じく話を聞いていた小堤が自分の体を洗いながらそう言ってくれる。周介としては評価してくれるのは嬉しい限りなのだが、そここそが問題なのだ。


「実力をつけていってるのはわかるんですけど、大太刀部隊なんかと比べてどうなのかって思っちゃって。そもそも俺ら中堅扱いしたらかなりの人が入るんじゃないかと……」


「まぁ、戦闘能力に限って言えばそうだろうな。けど俺ら小太刀部隊だぞ?小太刀部隊の中ならお前らは十分実力あると思うけどな」


「比較対象が大太刀というのがどうしても考えを鈍らせてしまっているのだろう。百枝はよく大太刀と訓練をしているからよりそう思ってしまうのかもしれないな」


 手越と小堤の言葉に周介は納得できていないのか口を尖らせる。


 その様子を見て納得がいっていないことを察したのか、手越と小堤は別の人間の意見も聞いてみることにした。


 ちょうどこの浴場には他にも何人もいる。同じ試験を受けている人間として、他の部隊の人間に意見を聞いてみても損はないだろう。


 そんな中、周介とよく訓練をしている竪石が湯船につかっているのを見つけて手越は声をかけた。


「竪石さん、こいつ、中堅扱いしてもいいと思いますかね?」


「え?別にいいんじゃないのか?何度も実戦に出てるし、能力だってばっちり扱えてるんだし……逆にダメな理由ってあるのか?」


「所属してからの時間が短すぎるっていうのはあるかもですよ?」


「それはあんまり理由にはならないだろ。時間が経ってたって能力扱えなきゃ中堅どころか一人前にもなれないんだ。経験年数よりも、何をしてきたかの方が大事だと思うけど?」


 どれほど時間を過ごしたかよりも、どのような時間を過ごしたかの方が重要だと竪石は言う。何をしてきたか、何を成したか。その実績こそが能力者を評価する尺度である。


「竪石さんは、自分が中堅以上って感じはあるんですか?」


「んー……正直に言えば俺はまだまだ他のメンツに比べると劣ってる部分は多いぜ?耐久力はあってもとっさの対応が鈍かったり遅かったり……今回もいろいろやらかしたりしてるし……」


 それは昨日の戦闘訓練を含めた反省なのだろう。若干周介の方を恨めしそうに見ていたが、それも本当にわずかな時間で、すぐに気持ちを切り替えているようだった。


「けどよ、それはそれで今後頑張っていけば解消できるだろ?苦手なもんだってどうにか人並みにはできるようになるだろ?今までだってそうだったんだから。いつか胸張って堂々と俺は中堅だって言えるようになるだろ」


 竪石は大太刀部隊の中で訓練をし、まだまだ自分自身が未熟者であるという自覚がある。だがそれでも今までの訓練と実戦の積み重ねに自信を持っている。


 そう、周介に足りないものがあるとするならば、その自信そのものだ。


 自分が積み重ねてきた訓練の、そして自分が潜り抜けてきた実戦の、それぞれ培ってきた経験の、それらすべてを踏まえた、自分への自信。


「亀田さんはどう思います?俺はもう百枝は中堅って言っていいと思いますけどね」


 同じように湯船につかっていた大柄の男、亀田に話を振ると、亀田は湯船につかりながら小さく息を吐く。


 まさか自分に話が振られるとは思っていなかったのか、考える素振りをしながらも自分たちを相手にして立ち回った男が随分と妙なことで悩んでいることに少しだけ興味を持っているようだった。


「そもそも、百枝がどう思うかはあまり関係ないと思うがな。評価というのはあくまで他者からのものだ。自分がいくら一流と叫んでも、周りから三流と思われていればそのままだし、逆もまた然りだ。それにその答えは、百枝たちがこの選抜試験に参加している事そのもので出ていると思うがな」


 亀田の言うことももっともだ。いくら自己評価がどのようなものであったとしても、組織というものに所属している以上、人間社会の一部にいる以上、自身の評価をつけるのは他人だ。


 自分ではない第三者がつける評価こそが、行動や仕事に影響を及ぼすのは組織でも会社でも同じこと。


 そして亀田の言うように、この選抜試験に周介たちラビット隊が参加していることがすべての答えでもある。


 周介が悩む以前の問題で、周介たちの評価は既に決まっているのだ。少なくとも中堅よりは上のところに位置付けられているということでもある。


「ま、そういうこった。悩むだけ無駄ってことだよ。いいじゃん中堅。一年たたずに中堅になれたなら結構早い段階で出世できるぞ?」


「別に出世したいわけじゃないんだけどな……発電してればある程度貢献はできると思うし」


「お前が部屋にずっと引きこもってるとか無理だな。絶対無理。勝手に飛び出して勝手に怪我するに決まってる」


 そんなことはないと反論しようとした瞬間に周介の顔面に熱いシャワーが浴びせられる。この野郎と周介もすかさず手越目掛けてシャワーを浴びせる中、その様子を小堤や竪石は苦笑しながら眺めていた。


 そして亀田はあんな子供っぽいやつがあの時の相手だったのかと、少し不思議そうでもあった。


 普段の周介と現場の周介のギャップは、やはり近くにいないとわからないものなのである。


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