表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十六話「その光を辿る先の」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

812/1751

0812

 周介たちの通う高校の文化祭二日目。その人物は校門にたどり着いていた。


 探している人物がよく働いている場所だということもあり、その場所にやってきた彼女はその人の多さに愕然としていた。


「すごい人……」


 文化祭二日目の今日は、学校の関係者だけではなく一般人にも公開が許されている。そのため周囲に住んでいる人や、繋がりのある人間が一斉にこの学校にやってきているのだ。


 そしてそんな一般客を狙って生徒たちは店の活動を加速させている。


 部活動、クラスの出し物、それを運営する者、参加する者、見に来る者、全てが熱気を放っているようにすら感じられた。


 僅かに秋の涼しさをもたらす風が吹いても、雲一つない晴天の元、まだ少し動けば汗ばんでしまう気温の中で、その熱気がさらに体に熱を持たせていた。


 立ち並ぶ屋台、作り出されている食べ物。そして自分たちの出し物に客を連れてこようとする掛け声。どれをとっても若々しい青春を感じさせる。とはいえ、その規模は彼女の記憶の中にあるものとは異なっていた。


 自分の通っていた高校はこうではなかったと、彼女は記憶の中にある自分の高校時代の文化祭を思い出しながら、それを探していた。


 ここにいるという話は聞いている。だが、この場所のどこにいるのかは聞いていなかった。


 雑談の中で聞いただけだったのが悔やまれる。変に突っ込めば怪しまれるということもあって、本当にただ話の中で聞いただけだったのだ。


「お姉さん!焼きそばどうっすか!?美味いっすよ!」


「かき氷いかがですか!?この暑い中では最高ですよ!」


「暑い時こそ熱いもの!豚汁食べて汗を流しませんか?味が染みてて美味しいですよ!」


 参加している生徒たちの呼び込みを聞きながら、この広い敷地の中で探し出すことができるだろうか。そんなことを考えていると彼女の視界の隅に人だかりができているのを見つけた。


 何か出し物でもしているのだろうか。そんな風に思えるが特にステージなどは用意していないようだった。


 続いている道の一角に妙に人が集まっているのが印象的で、彼女もその場所に吸い寄せられるように近づいていく。


「すげーな。本格的」


「コスプレして写真撮らせてもらえるんだ。一年三組だって。あとで行ってみない?」


「コスプレするのかよ。どんな服があるんだろうな」


「あれめっちゃ可愛くね?メイドさんとか。あれも高校生だろ?」


 携帯で写真を撮ってはその場から離れていく通行客もいれば、人だかりの中心にいる人物をよりよく見ようとしている者もいる。


 そんな中、彼女もようやくその姿を見ることができていた。


 そこにいたのは赤いゴスロリ衣装を身にまとった小柄な少女と、ロングスカートに長袖のメイド服を着た女性だった。首元にはレースのようなチョーカーのようなものを身につけているのがまた印象的である。


 周りの人々が写真を撮っているのを察して、宣伝の口上を赤いゴスロリ少女が述べながらポーズをとっている。周りの人々はこんなポーズをしてほしいなどのリクエストをしている者もいるほどだった。


 この学校ではこういうこともさせてもらえるのだな。少女二人を見つめながらそんなことを考えていた時、その少女たちの視線が、彼女の視線とぶつかる。


「…………っ」


 メイド服を着ていた少女が何かに気付く。そして写真を撮ってもらっていたポーズを一度やめ、赤いゴスロリ少女に耳元で囁くように話しかける。何やら指示を出しているようだった。


「皆さん!一年三組ではコスプレをして思い出の写真にしてくれるコスプレ写真館をやっています!是非来てください!短い間でしたがありがとうございました」


 赤いゴスロリ少女が周りの観客に一度会釈をしながらこれにて撮影会は終了であるという旨を告げながら、スカートの裾を軽くつまんで会釈していた。


 赤いゴスロリ少女に続いてメイドも同じく会釈をすると、周りの人々から拍手が巻き起こる。これ以上周りにいては迷惑になるということもわかっていたのか、人々は徐々に別の場所へと移動し始めている。人が少なくなり、遠巻きにコスプレしている二人の少女を見ているものが多くなったところで、二人が移動を始めようと歩き出す。その延長線上に、彼女はいた。


「え……?あ、あの……」


 自分の前で止まった二人の少女に、彼女は困惑していた。いったい何だろうかと。あまりに凝視しすぎただろうかと。


 この二人もこの学校の生徒なのだろうが、何か気に障るようなことをしたかと心配していると、メイドの方が微笑みながら小さく会釈をし、小声で話しかけてきた。


「お久しぶりです、詩帯さん。まさかこちらにいらっしゃっているとは」


 それは間違いなく男の声だった。そして彼女、ここにやってきていた詩帯雅は、この声をどこかで聞いたことがあった。


 そう、それは彼女の幼馴染で、将来の夫となるかもしれない相手、玄徳が慕う男の子の声であると思いだすまでにかなり時間がかかってしまった。


「え……!?あの……!えぇ!?」


「ここでは少し人目もありますから、人の少ないところに行きましょう。お嬢様、少し付き合ってくれ」


「わかった。ついでに休憩しよ」


 どういうことなのかと混乱している詩帯を連れて、二人は平然と学校の敷地内を歩いていく。二人が移動するだけで周りの視線が集まってくる。それがまたなんとも詩帯の混乱を強くさせていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ