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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十話「分水嶺に立つ小動物」

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 周介たちは、古守の案内により大太刀部隊の訓練場にやってきていた。今日の内容は先日の話の続きでもあり、そして実際にその訓練をやってみようということなのだが、この場には周介と玄徳の二人しかいない。


 瞳と知与はまず訓練では役に立てないということもあり、平時の運搬作業に入ってもらっていた。


「申し訳ありません百枝さん、加賀さん、ご足労をいただき」


「気にしないでください古守さん。まぁこうなったら腹をくくりますよ」


 そう言いながら周介は装備を身に着けた状態で小さく肩を鳴らす。その体を包む装備は戦闘用のものだ。


 装甲も分厚く、周介と玄徳の手には先日から導入した銃が握られている。この銃に装填されている弾丸が所謂ペイント弾であるということは古守にも伝えてある。


 訓練であるために安全に戦うことを前提とした配慮であることに変わりはない。


「で、古守さん、反撃はしてもいいんすよね?」


「もちろん。可能であれば叩きのめしてやってほしいくらいなのですが……」


 そうは言うものの、古守もそれは難しいだろうということはわかっているようで複雑な表情を浮かべている。


 周介も玄徳も現役の大太刀部隊の人間相手に、訓練を重ねているとはいえ周介と玄徳が勝てるとは思っていないようだった。


 当然といえば当然だろう。プロスポーツ選手に部活で練習している学生が挑むようなものだ。


 周介たちが大太刀部隊の訓練場に入ると、そこには何名かの大太刀部隊が訓練もせずに待っていた。


 軽く見ても一面当たり五十メートル以上はある広い空間で彼らは一角にとどまっている。


 その人物たちは周介たちはあまり見たことがない人物だ。どこかで会ったことがあるかな程度の認識でしかない。


 その大太刀部隊たちは古守が現れると姿勢を正し、小さく一礼していた。


 体育会系らしい声とあいさつが部屋の中に響く中、周介たちは部活を思い出しながらその人物たちに目を向けている。


「おはようございます古守さん。こいつらが、例の?」


「えぇ、彼らに協力をしてもらいます。一人ずつ、二人のどちらかを相手してもらうという形になります」


「二対一じゃなくていいんすか?こいつら小太刀部隊でしょう?」


 二体一でも問題なく勝つことができるだろうという自信は、さすがは大太刀部隊というところだろうか。


 周介としては二体一の方が最大の機動力を発揮することができるため、そちらの方がよかったのだが、どうやら古守は一対一で事に当たらせるらしい。


「一対一で捕まえられるかもわからない相手に二対一で挑んでも仕方がないでしょう。まずは一対一で彼らを倒して見せなさい。それができたら二対一で当たっていただきましょう」


 一対一でもお前らでは勝てるかどうか怪しいぞと暗に言われた大太刀部隊の数名は僅かに視線を鋭くして周介たちを見る。


 自分たちが言ったわけではないのだからそんなに睨まないでほしいなと周介は視線をわずかに逸らすが、玄徳はその視線を真っ向から受け止めて逆に睨み返している。


 完全に因縁を付けられてがんを飛ばしているガラが悪い不良にしか見えなかった。


「想定は市街地、強力な範囲攻撃は厳禁。遮蔽物中程度の夜間屋外とする。音にも注意してください。制限時間は五分」


 古守は手元に端末を用意するといくつか操作する。すると訓練場の一部の床が開いて何かがせり上がってくる。


 それは所謂建物などを模した障害物だった。と言っても実際の建物ではない、ただ四角い柱があるだけだ。だが高さは七メートル程度はあるため、一般的な二階建て家屋程度のものを想定しているのだろう。


 それらがいくつもせり上がり、通常の市街地を想定しているような状態になっているようだった。


 こんな仕掛けを作っていたのかと、周介はドクたちがこの施設にどれだけの材料をつぎ込んだのか、今まで運んだ材料などからかなり苦労して作ったのだろうことは容易に想像できた。


「百枝さん、加賀さん、最初はどちらが?」


「俺がやります。まずは体を慣らしておかないと。一応許可したのは俺ですし」


「兄貴、俺が先でも……」


「お前はまずはクールダウンしとけ。よく見てどういう風に動けばいいかしっかり把握、今にもとびかかりそうなその顔やめろ」


「……うす」


 周介が血の気の多そうな玄徳をしっかりと制御していることから、その場にいた大太刀部隊の面々は周介が飾りだけの隊長というわけではないと認識して、わずかに気を引き締める。


 とはいえ小太刀部隊。話には聞いていて機動力があるということは知っているが、それがどの程度のものなのかは実際には知らない。


 それに何より、周介は自分が緊張しているということを理解していた。


 大太刀部隊と対峙しているのだ。無理もないことだと周介自身その原因をわかっているからこそ、先鋒を引き受けた。


「こっちは誰が行く?俺でもいいぞ?」


「下手に怪我させるわけにもいかないだろ?威力が高い範囲攻撃ダメってなら、当たっても怪我にならないようなのがいいんじゃね?」


「じゃあ俺行くわ。あぁいう装備つけてれば、多少当たっても大丈夫だろ」


 周介たちが身に着けている装備を見てひとりが立候補してくる。大太刀部隊の中でどういう人物が選抜されたのかはさておき、周介にとっては油断など一切できない相手には違いなかった。


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