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「俺らのチームは小堤先輩の能力を軸にして戦ってる。先輩の能力で俺らが操る物体を固定してって感じだな」
「水を薄く広げて巨大な盾や壁にしたり、糸を固定して相手を捕縛したりする。他にも盾を足場代わりにもできるが……手越の能力で飛ぶこともできるからな」
物体を固定する。この能力はどうやら固体だろうと液体だろうと関係ないらしい。
水は変幻自在だ。体積に限度がある状況でも、小堤の固定能力があるのであれば優秀な盾となる。
大網の装備のホルダーにはおそらく大量の糸が収納してあるのだろう。あれを使って相手を捕縛するための包囲網を作ったり、移動するための足場などを作ったりもするのだ。
機動力は高くはないとはいえ、手越の能力を使えばある程度どの場所にも移動することができる。
手越の手甲を使って盾を空中機動させることもできてしまう。守りという意味ではかなりのレベルを持っているといっていいだろう。
相手を攻撃して倒す力という意味では、彼らはそこまで強くはないのだろう。だが相手への阻害や防御、耐久戦という意味では彼らは高い戦闘能力を有している。
足止め、遅滞戦闘を得意とする彼らにとって、攻撃能力はさして重要ではないのだろう。
その場に留め、相手の動きを阻害することこそが最も重要であるのだ。
そして最低限の攻撃力を担っているのが手越なのだ。相手の動きを察知して逃げようとしたら積極的に攻撃しその場に留める役割。
このチームには二人の要がいるのだ。一人は言うまでもなく手越。状況を正確に判断し相手に攻撃を仕掛け、また相手からの攻撃を阻害することで状況をコントロールする。
そしてもう一人の要が小堤だ。能力を適切に使うことで相手の捕縛と防御をこなす重要な役割だ。
どちらがかけてもこのチームは最大効果を発揮しないということなのだろう。もちろん残りの二人もかなり重要な役割を持っている。水や糸のような体積の少なく、固定でき、なおかつ自由に動かすことができる物体がないと、小堤の能力は最大限効果を発揮することができない。
そういう意味では全員がそろってこそのアイヴィー隊なのだろう。
この中でどの部隊に緊急で編入しても対応できるのは手越と桐谷のような汎用性の高い能力を持つ者くらいだ。
「まぁそのあたりは実際に体験してみたほうがいいだろうな。そっちで機動力がある、百枝と加賀、ちょっと動き回ってみてくれ。いつもみたいに俺が手で捕まえるから」
「いいぞ。けど簡単には捕まらないぞ」
「毎回毎回捕まえられると思うなよ?」
周介たちはよく手越と訓練をしているために、手越の操る手甲から逃げるのはよくやっていることだ。
まだ完全に逃げ切れるわけではないが、そう簡単に捕まらないことだけには自信があった。
「ふふふ……俺だけの時だったら捕まえるのにちょっと時間がかかるけども、あいにく先輩らがいればお前らを捕まえるのにさして時間はかからねえんだよ」
「手越、遊びじゃないんだぞ?」
「わかってますよ。口で説明するよりはまずは実際に体験してもらうのが一番でしょう。大網先輩、いつもの感じで合わせてください」
「わかった。糸の太さは?」
「あー……まぁこいつら装甲付けてるんで細めでいいっすよ。怪我したらその時はその時ってことで」
「おい聞こえてるぞコラ。これ着てたって怪我はするからな?って言うかさっきの話聞く限り、糸を固定されたらかなりやばくないか?」
周介の想像している光景としては、手越の手甲で糸を展開し、小堤の能力でその糸を固定することで即席のトラップを作成する。そして相手を捕らえるというものだ。
というか、周介たちのように高速で移動する者たちからすればその糸にぶつかっただけで体の一部が切断されかねないほどの威力になりそうで恐ろしい。
「安心しろ。いきなり固定しても打撲程度だ。それにそういう使い方をしない場合もある。あとは実戦でな」
「……玄徳、糸には注意な。引っかかったら手足の一本くらい吹っ飛ぶぞ」
「うっす、注意します」
今までは手越の操る手甲の動きにだけ気を付けていればよかったが、今回はそれが展開する糸にも注意しなければいけないのだ。これはなかなかに難易度が高い。
もともと能力者は、一人に対して一つ、一定の効果を持つ能力しか有していない。そのためその能力の特性さえ理解してしまえば攻略法を見出すことはそこまで難しくはない。
だがそれらが組み合わさるとなると話が変わってくる。能力は組み合わせることでさらに高い効果を発揮できるものだ。連携できるかどうかで、その能力者の最大使用効率が変わってくるといってもいい。
周介のローラーによる加速に、さらに玄徳の加速の能力を加えると最大速度が上がるのと同じように、他の能力者も、組み合わせと連携によってその効果を何倍にも高めることができる。
相手を足止めする。ただそれだけに特化したチームだ。どのような方法をとってくるのか周介たちにはすべてを把握することは難しい。
実戦で把握するのが一番、周介と玄徳はとりあえず準備運動をして逃げる準備だけは整えていた。




