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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「悪い、待たせた」


「お、来たな……って、なんだそのクマ」


 周介たちは装備品をすべて装着した状態でアイヴィー隊の待つ訓練場にやってきていた。


 手越たちは装備を身に着けた周介たちと、その後ろを歩く巨大なクマを見て目を丸くしてしまっていた。


 それがぬいぐるみだとわかったのは、クマの中から知与の声が聞こえてきたときである。とはいえクマが装甲の付いた装備を身に着けているのだから何かしら理由があるとはわかっていたようだったが。


「なるほど、クマを着てるわけか。着ぐるみ状態ってことな。確かにこれなら動かなくてもいいと」


「考えたな。これは普通に役に立つと思うぞ?外装としては理想的だ。時々でいいから俺たちも使わせてほしいくらいだ」


「欠点としてはめっちゃ暑い事ですから、夏場はきついですよ?これから湿気がやばいことになりますし、最悪脱水症状ってこともあるんで」


 良いところだけを見れば確かにクマのぬいぐるみというのは非常に優秀な性能を持ち合わせている。


 自分で動かなくてもいいため体力を温存できる。自身が身に着けている装備のさらに外側に装甲を身に着けるために防御性能もかなり高くなる。


 機動力は周介の能力をうまく使っているために、重量の割には素早く動くこともできる。さらに言えばその装備、防御性能だけではなく攻撃性能や機敏性も瞳の能力によって保障されている。


 中で汗だくになる本人の健康状態を除けば確かに理想的な装備といえるだろう。


「で、それがお前らのフル装備か」


「今のところはな。そっちも装備をちゃんと着てるのは久しぶりに見るな。特に先輩たちの」


 周介たちの個人装備はいつもの通り、周介のアームだけ若干また変化があるが、それ以外の装備はほとんど変わっていない。


 周介の装備はアーム部分に先端の尖った盾が取り付けられており、状況によってはスコップとして、盾として、そして足代わりとして役に立つように形を整えられていた。取り付ける場所を変えることによって役立ちを変えるその形は、補助アームをより腕らしくさせていた。


 対してアイヴィー隊の装備は周介たちのような装甲に身を包む形ではなく、軍服のような服装に各部装備用のベストを取り付けているような形だ。周介も見るのは久しぶりである。


 手越の装備は相変わらず、背負った収納容器の中に大量の手甲が入っており、持ち前の大量展開を可能としているものだ。


 そして隊長である小堤の装備は硬化プラスチックで作られた薄く広い盾。それが二枚に腰や足部分に複数の装備が入っていると思われるホルダーが取り付けられている。


 大網の装備も同様だが、彼女の場合はその身に着けているホルダーの数が妙に多い。胸にも腕にも腰にも足にも、ありとあらゆる場所に取り付けられている。だがその一つ一つはそこまで大きくはなく、せいぜいあったとしても十センチ程度の大きさのもののようだった。


 桐谷の装備はこの四人の中では最も軽装で、背中に小型のリュックを背負い、顔部分にヘルメットとゴーグルが一体になった装備を身に着けているくらいだ。


 この四人の中で周介が能力を知っているのは三人。唯一知らないのは大網くらいのものだった。


「よしよし、それじゃあ改めて自己紹介といこうか。隊長、頼みます。せっかくなんで能力の説明もしてやりましょうよ」


「必要があるのか?いや、新人もいるのか……じゃあ、最低限だけ教えてやるか」


 小堤の視線はクマの中にいるであろう知与に注がれていた。といっても彼女は目ではなく能力によってこの状況を把握しているわけだが、そのあたりの詳細は彼らには分らない。


「初めまして。俺はアイヴィー隊隊長、コールサインはアイヴィー01。小堤純也。能力は『手中の停滞(クレリックロック)』一定体積をその場に固定できる能力だ」


 小堤は自分の持っていた盾を空中に置くようにその場に停止させていた。先の土砂崩れにおいてもこの能力は活躍していた。


 その場に盾を固定することで相手の攻撃を防ぐこともできる高い防御能力を誇る能力である。


「同じくアイヴィー02、手越智哉だ。能力名は『友好の手は合せる為に(シェイク&クラップ)』こんな感じで物体を手の形にして操れる。この手袋の中身は今は水な」


 手越は自分の能力を操り、手甲を空中に飛ばしながら手でいろいろとサインを出している。それを知覚しているからか、知与は驚いていた。あの時自分を助けたのはこの手だったのだと理解したのだろう。


「同じくアイヴィー03、大網和江。能力名は『結びの紡ぎ(クロースクロス)』糸を作り出して操ることができる能力なの」


 大網が手のひらを差し出すと、その指先から木綿糸のようなものが作り出されているのが分かった。いったいどのような原理なのかと周介たちは怪訝な表情をしてしまうが、彼女の能力によって生み出されているという以外に説明はつかなかった。


「同じくアイヴィー04、桐谷加奈。能力名は『栄光の代償(カバーキャピタル)』水分を作り出したり操ったりして、疑似的に索敵できる。ゆっくりだけど水分を操って雨を降らせたりもできるの」


 桐谷の能力には今までも何度も世話になっているだけにある程度知ってはいたが、能力名を聞いたのは初めてだった。


 どれも癖のある能力だが、共通していることがある。小堤以外はどれも能力によって物体を操る能力であるということだった。


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