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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「またやったんだって?」


「面目次第もございません」


 周介は瞳と共に拠点の自分たちの隊室にやってきていた。これから手越たちとの訓練のために一度装備を取りに来たのである。


「あんたね、いくら組織のお目こぼしがあるからってやりすぎると目立つってことわかってるわけ?寮監にだって目をつぶってられる限度があるんだから」


「うん、って言うか普通に拳骨もらってるんですが、あれでもお目こぼししてくれてるんですかね?」


「女子の方まで響くくらい大騒ぎして拳骨一つで済むなら安い方じゃないの?もうちょっと自粛しなさいっての」


「返す言葉もありません」


 周介と手越、そして真鍋は寮監から拳骨をもらい、一時間ほど正座状態で説教されてしまっていた。


 周りで騒いでいた他男子たちは周介たちが罰を受けている間に、蜘蛛の子を散らすように自分たちの部屋に逃げ帰っていたのは言うまでもない。


「でも同級生のみんなとそういう風に話ができるっていいですね。私も早く寮に入りたいです」


「……あれはいいことではないからね?間違っても真似しないように」


 知与は周介たちが同級生たちと面白おかしく過ごしていると思っているのだろうか。傍から見たらただ自分の性癖を垂れ流しているだけのような空間だが、それを体験したことのない知与からすれば憧れてしまうのだろう。


 その憧れが幻滅に変わるのはいつの日だろうかと、周介は怖くて仕方がなかった。


「でも姉御、兄貴たちがそういう風に騒ぐのも仕方ねえってもんですよ。男が集まればそういう風になっちまうんですから」


「あのね、一応学生寮なんだってことわかって言ってる?常に静かにしてろとは言わないけど、もうちょっと静かにしてくれないとこっちも困るんだけど」


「そんなに響いてたか?俺らそこまで大声上げたつもりはないんだけど……」


「あんたらが上げてなくてもほかの男子が騒ぐでしょうが。なんか歓声みたいなのが響いてたから。夜にあの音量は近所迷惑。ご近所なんてないようなもんだけど」


 男子が何人も集まって話をしていればかなりの音量になるだろう。それは無理のない話だろうというのは想像に難くない。


 周介と手越と真鍋の三人が集まった時点で、今度はどんな話をするのだろうと期待する生徒も少なくない。


 そういう意味では騒がしくなってしまうのはもはや必然だ。


「で、そんな中で本当に訓練の話したわけ?」


「したした。って言うかそういう風に騒ぐ前にした。寧ろ真面目な話だったんだぞ?なのにいつの間にかあんな話に……」


 なぜあんな話になったのだったかと思い返して、周介は瞳の懐疑的な表情を浮かべている顔を見て思い出す。


 瞳が自分の家に、さらには自分の部屋にも入ったというところから話が展開したのだったと。思い返してもやはりそういう展開は無理だろうなと周介は苦笑していた。


 妙な笑いを浮かべている周介を見て、瞳はどうせ碌な展開ではないのだろうなとため息をつく。


「でもそのアイヴィー隊?の人と訓練ができるのはすごいと思うな。ね!玄徳」


「そうっすね。そういえばお嬢が連中にちゃんと会うのは初めてだったっけか」


「うん、助けてもらった時に会ってるらしいんだけど……ちゃんと挨拶はできてない気がする」


 知与はまだ自分だけの訓練を繰り返している状態なので、まだ組織内の人間とはあまり関わっていない。


 だがアイヴィー隊はこれからも多くかかわる部隊であるために、早々に挨拶をしておいて損はない。


 少なくとも周介達ラビット隊と手越たちアイヴィー隊は割と相性がいい。歳も近いということもあって一緒に行動することはこれからも増えるだろうと周介は考えていた。


「今日の訓練は基本的には戦闘訓練だから、知与は……どうするか。クマ着てくか?」


「本番を想定するならそのほうがいいでしょ。ちょっと待って、装甲着せたクマ用意するから」


 瞳が自分の装備を準備しながらそういうと、ロッカーから飛び出るようにクマのぬいぐるみが姿を現す。


 一瞬体が強張ってしまうのは妙にその姿がリアルだからだろうか。クマのぬいぐるみは周りにいるマネキンたちに手伝ってもらいながら、熊用に開発された装備を身に着けていく。知与が着ることを想定して作られた装甲だ。


 といってもまだ簡易式のものであるため装甲は比較的薄い。取り付けられる装備を今後増やしていくようなことをドクは言っていたが、完成まではまだまだ先の話だろう。


「この熊にも武器とか持たせれば結構様になるかもしれないっすね。姉御、武器の扱いとかはどうなんです?」


「クマの場合だとあんまり物は持てないから、手の部分をちょっと変えるくらい。爪と手の部分をちょっと硬い材質に変えれば十分クマっぽくなる」


「爪で攻撃か……クマっぽいな」


「私が中に入ってるから、あんまり激しい攻撃は……」


「大丈夫、そのあたりは調整するから」


 瞳の頼もしい言葉に、知与は苦笑しながらクマの中に入っていく。その光景は遊園地などで見る着ぐるみのお姉さんのようだ。もっとも入るのは非常に小さな少女なのだが。


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