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「ちなみに、この骨格って具体的にはどういう装備を想定してるんです?」
「想定でいいのかい?僕としてはいろいろと積み込みたいって考えてるよ。そもそもの重さをある程度確保して機体の安定性を確保するにあたって単純な二足歩行型でありながらキャタピラなんかの移動手段もつける予定だからね。追加装備としてはミニガンやら徹甲弾、榴弾なんかも搭載したいかなって思ってるよ?近接戦闘用にパイルバンカーとかも追加したいよね」
喜々として語り出したドクの言葉をそのまま想像するならば、両腕にミニガンを搭載し、肩には主砲となる徹甲弾ないし徹甲榴弾を装備しているといったところだろうか。どこぞの機動兵器のようになりそうだなと、周介は辟易してしまう。
「……戦車みたいですね。って言うか戦争でもするつもりですか?」
「いやいや、戦車なんかと一緒にしてもらっちゃ困るな。ぶっちゃけ戦車みたいに足回りが弱い機体だとどうしても的になってしまうからね。ただでさえ機動力のある相手を敵とするなら最低限の機動力は確保しておきたいところさ。だからこそ装備と機体重量とのバランスが大事なんだよ。もっとも安形君の人形と違って君の駆動、というより作動できるトルクはかなり強いからね。重量がそれなりでもある程度は動くことができるはずだ。人間がそのままもつんじゃなくて能力で持ってるからそのあたりは保証済み。問題は振り回した時の機体制御とバランスをどうやってとるかなんだけど、システムでそのあたりを制御するのは難しいんだよね。君の動力と駆動を切り離すわけにはいかないから」
「ドク、ドク、その辺にしてくれませんか。まだできてもいないものにそこまで熱意を持たないでくださいよ」
「何言ってるんだい!こういうところに熱意を持たないで何が科学者か!僕はこういうロマンに満ちたものを作りたくて今まで組織に所属していたんだよ!?」
自分の趣味が原因で能力者としての活動をしていたというのはおそらく嘘ではないのだろう。
実際物を作っているときのドクは非常に生き生きしている。それこそこれこそが自らの楽しみだと公言しかねない勢いだ。実際公言しているようなものだが。
「でも、そういう風に着る……って言うか乗る?タイプの装備だと、俺の安全とかって確保されてるんです?脱出装置とか、装甲とか」
「え?」
「え?」
一瞬唖然とした、呆けたような声が聞こえた瞬間、周介はドクの方を見て目を丸くしてしまう。ドクも目を丸くして笑顔を固まらせていた。
そしてゆっくりと視線を逸らせながら乾いた笑いを浮かべ始める。
「も、もちろん考えていたよ?君の身の安全が一番大事だからね。そのあたりはもちろん最大限考慮して正式版を作るつもりさ」
「……つまり試作機には作らないと?」
「いや、いやいや、そんなことはないさ。でも周介君、試作機って言うものはね、うまくできるかどうかを試すためのものだから安全率とかそういうことは基本度外視したものを作ることが多いからさ、そのロマンのためにはそのあたりはちょっとご容赦願えるとありがたいんだけども」
「俺の命がかかってるんですが!?ロマンのために命を捨てろと!?」
「男ならロマンのために命を懸けるくらい言ってのけてよ!僕はこいつを作るために何日も寝ずに設計図を作って命を削ってるんだよ!」
「ただ単に寝ればいいだけでしょ!また大隊長に告げ口しますよ!今度は設計室でこもって仕事してるって!」
「やめて!お願いだからやめて!わかったわかったよ!ちゃんと君の安全を第一に考えて装甲とかも付けておくから。そうなると……基本設計から考え直さなきゃなぁ……胴体部分のコックピット回りに装甲を追加するとなると重量が……」
「ちょっと待ってくださいよ、初期設定だと乗るところに装甲なかったんですか?丸裸の状態でこれに乗るように設計してたんですか?」
「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないか」
「命!俺の命!俺の命の問題は決して細かくないですよ!」
次々とパソコンの中で追加されていく装甲と、その材質、構造などとそれによって割り出される重量などを記録していくと、かなり初期設定よりも重量が重くなったのか、ドクは困ったような声を上げる。
やはりある程度は安全率を持たせておかないと結局使わないことになる。使える装備を作らなければ結局無駄になるだけだ。
「いっそのこと最初は小さい奴にしたらどうです?本当に手足につけるような感じの」
「んー……そうだね、装甲を付けていくとどうしても重心の関係が難しくなるから最初は小型の外骨格にしようか。となると破棄してたサンプル十二のデータから作り直したほうがよさそうだね」
「どれだけ外骨格作ってたんですか?これはだいぶ小さいですね。俺の体より、少し大きいくらいですか」
「うん、これは全長二メートル程度のタイプだから、全体的にさっきより小型かな。そうすると装甲も最低限のものになるし、どちらかというと鎧に近いかもね」
「これだと装備はどんなものを?」
「今の君の装備の延長かな。アームにローラー、フックに飛行用ユニット。といっても飛行用ユニットの場合はもっと効率よくしないと飛べないけどね。今飛行用で考えてるのはこっちなのさ」
そう言ってドクは自分の考えた装備を次々紹介していく。周介はそれを眺めてあぁでもないこうでもないとドクと議論を開始していた。
なんだかんだ言っても周介も男の子だ。こういったことに興味がないわけではないために、話は非常に弾んでいた。
「というわけで何も情報は得られなかった。ごめん」
「あんたね、隊長ならもうちょっと頑張って情報収集してくれない?あたしたちの命もかかってんだけど?」
「面目次第もございません」
周介はラビット隊の隊室に戻ると、まずは瞳に謝っていた。隊長が隊員に謝罪するという奇妙な構図になっているが、周介達ラビット隊にとって瞳こそが要であり重要な存在なのだ。彼女に謝るのは筋というものだろう。
「姉御、それくらいに、兄貴だって何も情報を手に入れてこなかったわけじゃないじゃないっすか」
「そ、そうだよ。少なくとも近々そういうことがあるってことはわかったんだし」
玄徳と知与がフォローをしてくれるが、瞳は腕を組んだ状態で憤慨したままだ。状況が切迫しているというわけではないが、切迫しそうな状況であることに違いはない。それがわかっているからこそ周介を責めているのだ。
「それはドクターからの情報じゃないでしょうに。大体、あの人が事情が話せないって時点でやばいの確定じゃん、ならなおさら情報が欲しいってのに」
「一応白部の奴に調査は頼んであるから、何かわかれば教えてくれると思う。あとは正式にドクが教えてくれるのを待つしか……」
「……わかった。そもそも情報を持ち帰ったあんたを責めるのは筋違いだった。ごめん。あたしも情報は集めてみる。最悪大隊長に直接聞けば何か教えてくれるでしょうし」
「教えてくれるか?ドクが話さなかったような情報だぞ?」
「やりようはあるってこと。まぁ期待しないで。その方法はあまり使いたくないから。というか、なんだってそんな状況になったのか……」
大太刀部隊の出撃、そしてそれに同伴するラビット隊。謎の施設の調査ということだったが、具体的に何をしていた施設なのかは全く不明ときている。そんな状態で中に入るのが危険ではないかと言われれば断言はできない。
戦闘の可能性が濃厚だからこそ大太刀部隊が出撃するという状態になっているのだ。戦闘用の装備を準備しておいたほうがいいのは間違いなかった。
「瞳も玄徳も、戦闘ができる準備だけはしておいてくれるか?場合によってはとにかく逃げることになるだろうけど」
「了解。最低限準備はしておく」
「任せてください。どんな奴でも蹴っ飛ばしてやりますよ」
「あの……私は……」
「知与は非戦闘員だ。何より今回の作戦に連れていくのも正直あまり気が進まない。でもどこから敵が来るかわからないなら索敵は必須だ。というわけで瞳、着ぐるみ頼むぞ」
「クマのぬいぐるみはもう準備してあるから平気。ドクに頼んで装甲も最低限つけてもらったから」
そう言って普段隊室の中にいるクマのぬいぐるみがゆっくりと動き出す。その体には瞳が言ったようにところどころ装甲が取り付けられていた。
クマがコスプレをしているような光景に、周介は思わず携帯でその姿を撮ってしまう。
「中の暑さだけはどうしようもないから、行動中は水分補給を忘れないで。あと激しく動く可能性もあるから酔い止めも。知与は乗り物に酔ったりする?」
「大丈夫です。車もバスも電車も。飛行機は乗ったことがないけど」
「あのヘリに乗っても大丈夫だったなら平気でしょ。現地へはヘリ移動なわけ?山の中なんでしょ?」
「それも断言はしてくれなかった。でも陸路で移動ってことはないと思う。さすがに山の中を歩いて移動するってのはかなりきついぞ?時間もかかるし、何より俺は山登りの経験ってあんまりないし」
田舎に住んでいたとはいえ別に山に登ることが得意というわけでもない。特に知らない山ならなおさらだ。
地形変化の激しい山で歩行にて目的地に向かうというのは体力も気力もかなり消費する。そういったことを避けるためにヘリでの移動は重要だ。
もっとも、ヘリで移動してもそれを着陸させることができるだけの場所があるかどうかも不明だが。
「ヘリの移動の可能性は高いと思っていいでしょうね。近くに無理矢理着陸させることだってあるだろうから、そのあたりの操縦は頼むからね」
「オッケーだ。意地でも無事に送り届けてやるよ」
「玄徳はあたしと室内戦の訓練。狭い場所での戦闘になる可能性があるから、ちょっときついけど」
「任せてください。お嬢はどうします?」
「今のうちにクマに慣れてもらったほうがいいんじゃないか?たぶん作戦中はずっと中に入っててもらうだろ?」
「そうね……じゃあそうしましょ。索敵してその情報を常に伝え続けて。動くのはこっちでやるから、それ以外の補助をお願い」
「うん、頑張る」
知与の運動神経を遊ばせておくのは惜しいとも思ってしまうが、残念ながら彼女はまだそこまでの体力がついているわけではない。
まだまだこれからの発展途上の彼女を危険な目に遭わせるわけにもいかないため、この裁定は仕方のないことだろうと全員が理解していた。




