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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「というわけでドク、教えてくれませんか?」


 周介は白部から聞いた情報の真偽を確かめにドクのもとを訪れていた。


 この場所は拠点内においてドクたちが使う工房の設計などを行う部屋で、ドクはパソコンに向かって図面を作成しているところだった。


 パソコンが何台も並び、図面を印刷するためのプリンターに加え、それらを実際に仮作成するための材料なども存在していた。


 こういったところから作成をやっているところを見ると、やはり製作班の人間は多芸な人間が多いのだということを実感する。


 画面に映っている図面がいったい何の設計図であるのかは周介にも理解はできないが、それが何かの機械のようであるということはわかる。


 各種パーツと、それらを組み合わせるための干渉があるかどうかを三次元的に製図しているのだ。


 そんなパソコンに向かいながら目を細めているドクは、周介が来たことを知ってか、軽く体を伸ばしながら妙な声を上げる。


 ずっと座った状態でパソコンに向かっていたのだろう。伸びをするだけで体から軽快な音が響いているのがわかる。


「んんんんぁぁああああ!随分と唐突な質問だね……いや、そろそろ来るだろうなとは思っていたけど。一応聞いておくけど、情報源は?」


「白部から聞きました。いろいろと。山岳部の謎の施設に関しての調査にうちの部隊が関わるだろうと」


「うん、やっぱり彼女か。まぁ白部君に隠し事ができるとは思っていないからね、そのあたりは仕方がないか……」


 一応はまだ公にしていない情報だったからか、ドクは笑い、だが同時に困ったように頬をかきながらため息をつく。


「その山岳部にあった施設の調査はいいんですけど、大太刀まで動かすって言うのはどういうことなんです?やばいところとか?」


「……んー……こればかりはちょっとね……今のところ話せる情報がないって言うのが正直なところかな。白部君が君に与えた情報はどの程度?」


「えっと……山岳部に隠れてた施設?がこの間の地震が影響で起きた土砂崩れとかでむき出しになって……結構古い建物ってことで……大太刀が動く予定があるってことくらいです。その中に俺らのチームも選抜されてると。運搬だけってことならいいんですけど」


 白部から聞いた情報をかいつまんで伝えていくと、ドクは困ったように腕を組み、唸りだす。


 伝えるべきか否かを迷っているのだろう。だが今の段階では話すことができないという風に言ったということは、まだ確定ではないのか、それとも上層部の方から話を止められているのか。どちらにせよ、ドクにしては珍しい反応だった。


 今までは確定ではないにせよ、ある程度の情報を教えることはしてくれていた。だというのに今回は話すこと自体ができないという。


「うん、そういう情報を得ているのであればなおのことだね。僕の方から言えることはまだない。後で確定したら伝える……じゃダメかな?」


「一応俺たちのチームが動くことになるなら前情報だけは最低限もらっておかないと、行動するにしても準備ができません。準備期間をくれないと現場で満足に動けなくなりますよ。それは俺たちだけじゃなくて、ドクたちだって困るでしょう?」


 何か事情があるにせよ現場で行動するのは周介たちだ。その周介たちに情報を流せないということでは、現場で満足に作戦行動をとれなくなる可能性は十分にあり得る。


 準備というのは装備だけではなく、行動における基本方針、そして状況に適応するための訓練でもあるのだ。


 今回の場所がどのような現場なのかは不明だが、それらに適応するために多少なりとも準備が必要なのはドクだってよくわかっているはずである。


「それは困るね。でも、それでもだ。僕は今回君たちに伝えられることはまだない。正式な依頼の発令を待ってくれるかな?そうだね……二、三日……いや、来週までには伝えられると思うから」


 ここまで頑ななドクも珍しい。だが何か事情があるのは察することができた。


 ドクは別に周介の敵というわけではない。むしろ多くの助力をしてくれている人物だ。


 そのドクが話すことができないというからには何かしらの事情がある。それに現時点で話すことができないというだけであって、絶対に話さないというわけではない。


 そういう意味では、今は時期尚早というほかないだろう。


 とはいえ、周介としてはドクがなぜこれほどまでに頑ななのか、その理由が気になるところではある。


「……一つだけお願いできますか?その場所に行くのは、俺らは確定ですか?」


「確定だね。それは間違いない。むしろ僕の方から推薦したくらいだからね」


「またそうやって……現地へはヘリで移動ですか?山岳部って聞きましたけど」


「……んー……」


「あぁ、それも話せないと。一応言っておきますけど、いきなりヘリ以外で移動って言っても無理ですからね?道がないんじゃ空飛ぶものはきついですよ?特にいきなり飛行機とかは勘弁してください」


「あはは。うん、そのあたりは大丈夫。僕の方で手筈は整えておくからさ。君たちは何も心配せずに現地に行ってくれればいいよ」


「現地にこそ心配があるんですけどね……ドクが話すことができないって言うのならまぁいいです。これ以上は聞きません」


「ごめんね。そう言ってくれるとこちらとしても助かるよ」


 申し訳なさそうな顔をしているドクに、周介はため息をついてしまう。これ以上問い詰めるのはドクが気の毒だ。何かしらの言えない事情を抱えているのであれば、ただの部隊隊長である周介がこれ以上突っ込んでも仕方がない事だ。


「ところで周介君、君の装備の話なんだけどね」


「あぁ、そっちの方に話持っていくんですね。どうしました?」


 ドクがする話といえば装備の話や設備の話がほとんどだ。そういった方向に話を持っていくのは予想できていたとはいえ急な話題の方向転換に周介は目を白黒させる。


 装備、周介の装備は何度も改良を加えており、装備の位置や角度、装備そのものに関してもかなり変更を頼んでいる。つい先日も盾と攻撃用の装備についての追加を頼んだところだった。


「うん、実はさ、小島君が入るにあたって人形の本格的な装備運用を始めることになっただろう?それについての話なんだ」


「はぁ、具体的には?」


「ん、実際に装備とかを取り付けたり内蔵したりして試してるんだけど、どうしても強度や重量や安形君が動かせるかどうかのあたりで引っかかっちゃってさ。君用の装備だけちょっと躓いてるんだよ」


 躓いているというのが妙な言い方だった。ドクの場合であればいろいろと思考錯誤を繰り返し、それこそ完成に至るまでの過程だけを話すものと思っていただけに、どうにもうまくいっていないという弱音ともとれる発言をしていることに周介は驚いていた。


「それじゃあ、俺が着る用のぬいぐるみの開発はあきらめるってことなんですか?」


「うん、早い話がそういうことなんだ。君用のぬいぐるみはちょっと作るのが難しい。今の時点でも結構重いだろうから、人形にこれ以上積み込むのは難しくてさ」


 残念ではあるものの、現段階での壁にぶつかってしまったということであれば仕方がない話だ。どうしても作ってくれという無理を言うつもりはなく、周介自身の今までの装備を使って立ち回るほかないだろう。


 ぬいぐるみに乗って楽ができなくなったというのは素直に残念ではあるが、それもまたこれから組織の中で動いていくうえで何度も味わうことだろうと周介はそこまで落胆はしていなかった。


「ということでさ、君用の強化外骨格を作ろうと思うんだよね」


「へぇそうなんで……きょ、強化……なんですか?」


 聞き慣れない単語に周介は一瞬自分が聞き間違ったのではないかと聞き返してしまっていた。周介の耳が確かならば、強化外骨格という単語をドクは述べた。


 それが一体どういうものなのか、周介は今のところイメージできていない。


「強化外骨格。所謂パワードスーツさ。ぬいぐるみに君の装備を内蔵するのが難しいなら、君自身が操れるぬいぐるみの代用品を作ろうと思ったんだよ。要するに、今君が使ってるアームを全身に適用するって言えばわかりやすいかい?」


「えっと……要するに……映画とかで出てくる超強いスーツみたいな感じです?ビーム出したり空飛べたりするような」


「イメージがすごくハリウッドな感じだけど大体そんな感じさ。実際僕がイメージしてるのはこんな感じ。全長三メートルちょっとの外骨格。君の能力で動けるようにするから、装備の重量とかも気にしなくてもいいって話さ」


 ドクがパソコンに表示したのは人が乗り込んで操作するタイプの外骨格だった。胴体中央部分に搭乗し、腕や足を延長するような形で操作するのだろう。人間がすべて腕を伸ばしても、外骨格の上腕部分にしか届かず、足の部分も骨盤部分にまでしか届いていないように見える。これを操作するのは周介の能力であるというのは間違いないだろう。


「これを操ると……でもこれ、要するに歩くんですよね?俺、アームで跳んだり跳ねたりはできますけど……歩くのは……」


「できなくはないだろう?」


「そりゃやろうと思えばできますけど、二本足の歩行か……」


 周介は現状、四本の腕を使っての移動はそこまで苦労なくできるようになっている。だがそれはあくまで腕が四本あるからこその移動だ。


 二本足だとまた違い、アームでの歩行はかなり難易度が高くなるのは想像に難くない。


 実際、二本足で歩くことをチャレンジしたことはある。だがまだバランスと、足を出すタイミングと操作のタイミングが難しく、うまくいっていないのが正直なところだった。


 人間の足というのはかなり性能が高く、足から体に伝わる衝撃を最小限にするためにうまく関節部分を曲げることでクッションの役割を果たしている。


 機械の場合はそういったクッションもすべて周介の能力によって緩和しなければいけないためにどうしても衝撃が大きい。そしてその衝撃はバランスを崩すのに十分すぎるほどのものだ。


 ただ単に勢いよく跳んだりするのであればそのようなことは気にしなくてもいいだろう。着地する時も、その一回だけなのだから集中すればいいだけのことだ。


 だが歩行というのは何度も何度も繰り返すものだ。それを当たり前のように行うことだ。周介はまだそこまでの能力の練度はない。


「これの下半身部分だけは早々に作る予定だから、周介君も今のうちに練習しておいてほしいんだよね。そうすれば作戦行動における装備重量をかなり増やせると思うんだ」


「それはまぁそうかもしれませんけど」


 周介は現状、自分の着ている個人装備に装備を搭載しているために自身が運べる程度の重量という制限がかかってしまっている。


 だがこの強化外骨格が完成すれば、周介の能力によって動くという利点を持ってその重量は跳ね上がるだろう。


 作戦行動においてもかなり幅が出るはずだ。少なくともどの装備を持っていくという形で悩む必要はなくなるだろうし、場合によっては他のメンバーを乗せることだってできるようになるだろう。

 試してみて損はないということは間違いなかった。


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[一言] 別に足は四脚でもいいんじゃ
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