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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「ふぅん……そんなことになってんだ」


 周介は学校内で会った瞳に先ほど白部に聞いたことを話していた。


 校舎の一角、グラウンドが眺められる場所なのだが、ここは案外人通りも少なく、人目にもつきにくい。内緒話をするにはうってつけの場所だった。


 といっても学校内でそこまで込み入ったことを話すわけにもいかず、白部に聞いたことをかいつまんで伝えただけだ。


 発見された謎の施設、そしてその調査を行うかもしれないということと、それに沿って動きだしそうな大太刀部隊の存在。


 瞳はその情報を聞いたところで、どうしたものかと悩んでいるようだった。


「一応確認しておくけど、知与も連れてくつもり?」


「調査を手伝うってことになれば、知与の能力は必須だろ。ドクもそのあたりを考えてるんじゃないかと思う。ただ移動させるだけって言うならそれでもいいんだけど……そうなりそうもないんだよな」


「移動手段、戦闘……確かに真っ先に潰されそうなポジションではあるけどね。一応言っとくけど、あたしは知与を連れてくことには反対。まだそこまで動けるようにもなってないし、装備だってまだ完成してない」


「俺もそう思う。仮に人形の中に入ってたって危険なことに変わりはないし、まだ文字の読み書きだって完璧じゃない。索敵できてもそれを伝達できないんじゃ……」


 周介と瞳の意見は一致していた。だが、現場の意見が一致していても、上の方針でラビット隊全員が出撃ということになればそういうわけにもいかない。


 強制的に出撃させられるようなことになればそれこそ周介たちがどうこうできる問題ではなくなってしまうのだから。


「強制的に連れ出された場合、玄徳を常に護衛につけてるってのはどうだ?」


「悪くはないと思うけど、それだって万全じゃないでしょ。玄徳は性格的に前に出るのが得意な感じだし」


「でも前の作戦の時は上手く周りをフォローもしてた。俺も助けられたし。結構視野も広くて護衛とかの方があってるかもしれないぞ?」


「否定はしないけど、それをぶっつけ本番でやるのは反対。やるなら訓練で確かめてから。そうでしょ?」


 瞳の言葉に周介はごもっともとつぶやきながら頭を掻きむしる。何も実戦でその可能性を確かめる必要はないのだ。それができる可能性に気が付いたのであれば、訓練でそれを確かめ、それを活かすことができるようにチームで動くことができればいい。


 何より、先ほどの案では玄徳に責任を押し付けているようにも思える発言だ。それは隊長としてふさわしい発言とは言えない。


「あとは……どうするかな……そもそも知与自身に戦闘能力がないんじゃ……まぁ俺もないに等しいけど」


「人形の数をそろえて人海戦術で防御するって手もあるけど、相手によっては逆に不利に働く。一度に連れていける人形と、最低限のコンビネーションを考えると……十ってところじゃない?」


「それは着るぬいぐるみを含めてか?」


「除いて。仮に全員がぬいぐるみを着ることになっても、それ以外に十の人形でフォローはできる。室内だと、それが限度」


 もっと広い空間であったのなら、瞳は大量の人形を扱うことができるだろうが、限られた空間しか存在しない室内ということであれば大量の人形は却って自分たちの移動を妨げる邪魔な存在になってしまう。


 ある程度ばらけて、周介に二体、瞳に二体、玄徳に二体、知与に四体の人形を配置する。これが適切なフォローの形であると瞳は考えていた。


 攻撃と防御のバランスを考えても、これ以上増やすと室内では動きが取れなくなるだろう。


「もし、全員で出ることを話されたら、その時は……」


「最低限の覚悟は必要だな……調査って名目にしてはずいぶんと物々しい内容だけど」


「……大太刀が、予備の準備配置じゃなくて出動準備って時点でね……いろいろと面倒な話になりそう」


 小太刀部隊がメインとなって依頼をこなしている場面でも、大太刀部隊の人間が準備配置という形でいつでも出撃できるような、所謂待機状態にあることは別に不思議なことではない。万が一の時のために対応できるようにしているという意味では心強くもある。


 だがそれが準備待機ではなく、出撃準備となってくると話は変わってくる。最初から出てくるのが決まっているということであれば、それは戦闘があることを最初から想定しているということになるのだ。


「とにかく、あんたはドクターに話を聞いて、どうするつもりなのかを確認してきて。それによっては、こっちも手段を考えるから」


「考えるって……何とかできるのか?」


「……手段を問わなくていいなら、最低限戦うことくらいはできるし。伊達に長い事うちにいるわけじゃないってこと。あんまり好きじゃないけどね」


 手越がそうであるように、瞳もまた本気で戦おうと思えば戦うことはできるのだ。


 問題はその手段。瞳のように人形を扱うことができるのであれば方法は多岐にわたる。本人が好きではないという言い方をしているあたり、思うところがあるのだろう。


 期待しすぎるのは危険だが、頼りにしていいのは間違いないだろう。


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