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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「大丈夫なの?」


 周介が体育の最中、水飲み場に向かうと不意に声をかけられた。声の主は同じように水を飲んでいた白部だった。


 彼女もサッカーをしていたためか、かなり息を切らせているようだったが、それでもある程度はセーブしているためか、そこまでぎりぎりの表情はしていない。


 持久走などとは違って適度に休めているようである。体力のない彼女でもできるポジションなどキーパー以外に思い当たらなかったが。


「それはどういう意味でだ?テスト勉強的な意味か?それとも、別の意味か?」


「両方。いろいろと話を聞くと、大変なことになりそうってだけはわかってるから」


「大変なことって……まぁ、勉強の方は正直あんまりだな……教わってても如何せん伸びてる感じがしないし……」


 勉強の方はと区切って、周介は蛇口から放たれる水を口に持っていきながら自分の中に冷気を迎え入れていく。


 口から喉へ、喉から胃の中へ、冷たい水が入り込んでいくが周介の体の熱はちょっとやそっとでは取れそうになかった。


 いっそのこと頭から水をかぶりたい気分だったが、さすがにそんなことをしては風邪をひきかねないだろう。この後も授業があることを考えると得策ではなかった。


「で、勉強以外の方ってのは?知与のことか?」


「それもある。無関係ではないけど、本筋はそっちじゃない」


 当然のようにラビット隊に新しいメンバーが入ったことに関しての情報は得ているようだったが、そちらではないとなると周介には心当たりがなかった。


 この間の運搬の仕事も無事に終えた。突発的に出てきた災害に対する救助も問題なかった。次に何か問題が発生するとなればまた新しい案件なのだろうが、それらの情報は周介の方には入ってきていない。


 意図的に情報を止めているとかそういう話ではなく、単純に周介たちの情報収集能力がないだけなのだろう。


「そっちじゃないとなると、俺は予想もできないな。なんかあるのか?」


「……知らないのなら教えないほうがいいのかもしれない。そのあたりは私じゃ判断できないから」


「できるなら教えてほしいな。いきなりぶっつけ本番って言うのは勘弁してほしいし……そのあたりの気遣いをドクができるとも思えないし」


 周介たちの部隊に何か依頼があるというのならばそれでもいい。それに関して準備をするだけの話だし、周介たちもそういったことに関してはもうあきらめている。


 周介たちが出なければならないような状況であるのであれば仕方がない。問題なのはそれに対しての準備期間があまりにも短くなる可能性があるということだ。


 この間のヘリの一件もそうだ。いくら周介が頼んで依頼の中に割り込ませてもらったとはいえ、ヘリに乗るための訓練時間があまりにも少なすぎた。


 幸いにして周介が操るヘリは無事に到着したものの、下手をすれば墜落していた可能性だって十分にあった。


 そういう意味ではもう少し事前に話をして可能性を含めた準備期間をもらいたいのである。


「……わかった。この間の地震、覚えてる?」


「もちろん。それがきっかけで知与とも会ったんだし」


「あの地震の後も、内陸部で何度か余震が繰り返されてる。それが原因で土砂崩れが何カ所かで確認されている」


 その情報も周介はすでに知っていた。というか知与に関わったのが地震だったのだ。今後また同じことがあるのではないかと、地震情報に関しては割と意識的に集めるように心がけていたのだ。


 もっとも、幸いにして二次被害、追加の土砂による被害情報は上がってこなかったが。


「その中で、土砂崩れによって人工物が発見されたのは知ってる?」


「……人工物?どういうことだ?」


「土砂崩れ……山の一角が崩れて、その山の地下に埋設してあった地下施設が露出した。今組織はその設備の調査のための人員を確保している」


 土砂崩れによって発見された人工物。見方によっては、古くからの遺跡などが発見されたなどという風に考えられなくもないが、白部の言い方から察するに、そこまで古いものではないのだろう。


 人工物といいながらも、地下施設などという言い方をしたのだ。かなり近代の設備であるということは間違いない。


「それって、どういう設備なんだ?例えば……その、石造りとかそういう」


「あくまで表面上で露出している部分の話だけど、鉄骨などが組まれていたみたい。だからかなり最近の物。問題なのは山奥の一角に隠すように作られていたこと。今は私たちクエスト隊が過去の情報を洗い出して、当該箇所の建築物が作られた記録があるかを調査してるところ。けど、今のところその情報はない」


 どうやらクエスト隊の方にまず情報収集の仕事があったからこそ白部はここまで知っているのだろう。問題なのはその施設が一体何であったのかというところだ。これで金持ちの道楽などによって作られた別荘の跡地であったのならそれで何も問題はないが、白部たちが探して何も見つからないとなると、少々きな臭い話になってくる。


「最近の物……年代的にはどれくらいだ?鉄骨が出てきてるってことは……本当に近代のものって感じか」


「劣化具合が激しいから表面上だけでは判断できない。だから調査隊を送ろうとしてる。その中に、ラビット隊も候補に挙がってる」


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