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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「暑っつい……本当に五月か今」


「地球温暖化って言うけど、こういう時は実感するよな……昔はもっと涼しかったらしいけど」


「これで雨が降るんだろ?じめじめして死ぬわ」


 周介たちは学校で体育の授業をしながら蒸し暑さに耐えつつサッカーをしていた。学校の授業程度のサッカーであれば周介も問題はない。能力さえ発動しなければいいのだ。男子と女子で入り混じりながらサッカーをやる中で、とにかくボールを追いかける競技というのは疲れる。ボールを追って走るだけでも、体からじわじわと汗がにじみ出ているのが実感できていた。


「ところでよ、お前らちゃんと中間の勉強してる?」


「……そこそこやってる」


「俺学力テストやばかったから、ちょっと頑張ってる」


 クラスメートたちとそんな話をしながら、周介は自分の立ち位置を理解していた。この学校は進学校だ。しかもそれなり以上に頭のいい部類で、周介のようにそこまで成績の良くなかった人種からすれば必然的に高い平均点に辟易してしまうほどである。


 ある種の裏口入学をした周介からすれば、このまま成績が低いままというのはあまり良くない。可能ならば平均レベルまでは学力を上げなければ目立ってしまうだろう。それは避けたいところだった。

 もうすでに変態のレッテルを張られていることで別の意味では目立っているのかもしれないが、それはそれ、これはこれ。まったく別の話である。


「くっそ、頭のいい奴らはいいよな、ちょっと勉強するだけでいいんだから」


「百枝ってそこまで頭悪いわけじゃないだろ?前のテストって言ったって平均より下くらいだったじゃん。絶望的に悪いわけじゃないと思うけど?」


「あのな、平均より下ってのは十分ダメな部類だと思うんだよ。俺中学の頃は平均より下とったことなかったんだぞ?ただ単に周りのレベルが上がったってだけなのかもしれないけどさ」


 周介の通っていた中学は一般的な公立校だった。それを加味すれば周介の言うように単純に周介がバカになったわけではなく、周介の周りのレベルが上がっただけなのだろう。だがそれでも周介にとっては平均点以下という点数はあまり良いものとは言えない。


「ちなみになんかいい勉強方法ないか?俺もコツコツやってるんだけど、どうにも躓くんだよ。この学校のテストの……なんかこう、傾向みたいなものがあると嬉しい」


 周介以外のクラスメートの何人かはこの学校の中等部からエスカレーター方式で進学してきている人間だ。そういう意味ではこの学校のテストの傾向というものを理解していても不思議はない。


「んー……結構先生によるところあるぜ?ただあれだな、うちのテストは基本の問題の数は少ないわな。塾とか通っててそれはすごく思った」


「あぁ確かに。基本問題全然テストに出ないのはよくある。出ないわけじゃないけど、数は少ないな」


「基本が少ないってことは……応用問題が多いってことか」


「まぁ比較的にってだけだ。基本をわかってる前提の問題を出してくるからそう感じるだけかもしれないけど……でも確実に点が取れるところで稼ぐって言うのは大事なことだと思うぞ?小さなミスをすればそれだけ点も落ちるしな」


 点を取ることができる場所で確実に点を取る。難しい場所ではもちろん勝負をするが、問題はいかに難しいと感じる場所を少なくするかというところだ。


 基本を固め、そのうえで応用に手を出す。基本を理解していれば解ける問題を多く出しているということは、それだけしっかり勉強している人間は点数を取りやすいということでもある。


 公立の学校では基本問題は必ず出る。それもしっかりと基本をやらせ、そのうえで応用問題を何問か出す。


 だがこの学校は基本の問題は数問程度、それ以外はほとんどが応用問題。これは完全に基礎知識を使った思考型の問題だ。


 ただ覚えるだけでは解くことができないという、学生の知識と地力を高めるためのテストだ。


 何回もやり方を覚えなければできないだけに、周介は愕然としてしまう。


 結局のところ、一朝一夕ではどうしようもないということがわかってしまっただけに、ただでさえ疲れている体にどっと重しがのしかかったようだった。


「まぁ大丈夫だろ。高校一発目の定期試験なんだし、とりあえず中学の延長線だって。ここ受かってるんだからそれなりに解けるだろ」


「あのな!俺は受験合格した瞬間数式だの単語だのは一気に忘れたんだよ!正確に言えば試験が終わった瞬間に忘れたわ!」


「あー、わかる。俺も外から来たからそれすげーわかる。単純に安堵感あるよな。受かってなくても終わったー!って感じするもんな」


「俺らエスカレーター組はわからねえなぁ……まぁ平気じゃね?」


 クラスの中でもエスカレーター組と外から受験してきた人間ではっきりと考え方が分かれているようだった。


 だがどちらにせよ、今回の一回目の定期テストはそこまで気にしてはいないようだった。


 そもそも気にしているようではこれまでの受験戦争には勝ち残ってこられなかっただろう。


 そういう意味では正規の受験をしていない周介は少し負い目があった。


 まずはクラスメートに追い付かなければならない。そんなことを考えてしまうのだ。


 因果応報というのとは少し違うのかもしれないが、悪いことをするとその結果は良くも悪くも本人に返ってくるというのは本当なのだなと、周介はうなだれてしまっていた。


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