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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
七話「山と大和の名残」

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「さて、それじゃあ他の場所も見て回るか。何となく索敵でわかってるだろうけど、どこに何があるかって言うのを歩いて覚えるのも大事だからな。俺らがよく使う場所を案内していこう」


 まずやってきたのは周介たちの拠点ともいうべき場所、ラビット隊の隊室だった。最低限の訓練ができる機材に、各員の装備、発電用の設備、そして勉強できる程度の机や椅子、あとはいろいろと持ち込んだ個人用の趣味の本やゲームなどが置かれている。


 最近は仮眠用のベッドも置かれたが、それがあってもまだまだ広いスペースを確保している。


「ここが俺らラビット隊の部屋だ。前に来たことあるけど、いろいろとここでやることになる。訓練とか勉強とか……俺は暇なときは大体ここで訓練と発電をやってる。知与も暇なときはここに来るといいぞ」


「わかりました。でも訓練って……どんな?」


「あー……まぁ大体は瞳に人形を動かしてもらって、それに対して戦ってるな。ちょっと待っててくれるか」


 周介はそういって発電設備を起動しながら自分の個人装備の中に入っている装備を動かす。


 ロッカーがひとりでに開き、その中から装着型の装備が飛び出してきた。アームを使って一人でに周介のもとにやってくる個人装備のその姿は、一見すればホラーのように見えてしまうことだろう。


 四本のアームだけで歩く姿は蜘蛛のようにも見える。


 そしてそれを察したのか、瞳もロッカーの中にしまってあった人形たちを次々と出してくる。玄徳はそれを見て軽く準備運動を始めていた。


「現場とかで主に動くのは俺と玄徳だからな。こういう風に用意してもらって、現場で動けるだけの準備をしているわけだ」


「人形相手に?」


「この人形をなめてると痛い目見るぞ?何せこいつらプロスポーツ選手とほぼ同じ動きするからな」


 正確には同じではない。人形そのものが軽い分、威力は低いが速度は上がる。そのため、はっきり言って周介の今の運動能力では遠くに逃げるのが精いっぱいで、戦うまでには至らない。


 だが玄徳は持ち前の反応速度と喧嘩慣れの経験から、もう十分に戦うことができている。


「知与も軽くやってみる?体動かすって言うのも大事なことだと思うし」


「いいんですか?じゃあ……ちょっとだけ」


 瞳が知与の目の前に人形を用意すると、人形は知与を捕まえるような動きをして見せる。

 一種の暴漢に襲われた際のような動きだ。


「とりあえず逃げてみて。走ったりすると疲れるだろうから、避けるところからね」


「はい!」


 周介も玄徳も、人形との訓練をやめて知与の方を向いていた。


 知与の運動性能がどの程度のものなのか、ちゃんと知っておきたかったのだ。


 その片鱗は垣間見た。周介の発動するスケートの動きに短時間で対応して見せたことから、運動神経は悪くはないのはわかっている。


 体力のなさを差し引いても、あの運動神経の良さは類まれなるものがある。


 あとは反応速度だ。周介たちの部隊にいる以上、高速での移動は必須になる。そうなれば最も必要となるのは反応速度でもある。


 まずはゆっくり襲い掛かる人形の動きを確認して、知与は屈みながらその腕から逃れた。


「徐々にスピード上げてくから。ちゃんと避けて」


「はい!」


 瞳の宣言通り、人形は少しずつスピードを上げて知与を捕まえようとする。片手両手どちらでも構わない。知与の服を掴もうとする動きをしている。


 知与はそれを確認してとにかく避けていた。


「やっぱ動き方はすごい……なんていうか、雑だけど、反応いいな」


「えぇ、スポーツとかをやってなかったから、動きは酷いもんですが、それでも十分に間に合ってます……すごいっすね」


 傍から見ているだけでもわかる。動き方がどんどん洗練されて行っているのだ。無駄を省いていっているといえばいいだろうか。避ける動きそのものに余計な動きがなくなっていくのがわかる。


 最初は大きく避けて体ごと腕の襲い掛かる場所から逃げていた。だが徐々にその隙間が少なくなり、衣服に触れるか触れないかのギリギリのところで回避するようになってきている。


 ローラースケートの時もそうだったが、動きに適応する速度が尋常ではない。一つ一つ、一回一回自分の動きを精査しているのがわかる。


「索敵のおかげってことですかね?」


「どういうことだ?」


「俺らは、自分の今の体の位置とかは、感覚でしかわからないっすけど、お嬢はそれを索敵で把握してる。どの位置に体を動かすかって言うのを、なんていえばいいんすかね、あの、ゲームみたいな……ちょっと後ろから見てる感じの」


「第三者視点ってことか」


「そうです。それのおかげで、どう動かせばいいのかって言うのを、すぐに修正できるんじゃないっすかね」


 周介たちのような単純な五感で把握するものは、それを感覚だけで覚えなければならない。失敗した時の感覚を含め学習し、それによって上達していく。


 だが彼女の場合、索敵によって体を動かすその動きそのものを正確に認識している。だからこそ学習能力が高いのだと周介たちは分析していた。


 だが、彼女の本当の能力を知るのは、そのすぐ後のことだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 心眼ですね。わかります。 最強になりそう(小並感
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