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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

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「ただいま」


「おかえり。ずいぶん遅かったじゃないの」


 周介が実家に戻ることができたのは、結局夜遅くになってからだった。


 全ての物事が片付いて、再び家に帰ってきたときには周介の体力はほぼないに等しかった。


「疲れた……無駄に疲れた……」


「どこに行ってたの。友達と遊びに行ってたの?遅くなるなら一言くらい」


「ごめん、急な話だったからさ……疲れたぁ……」


 家に帰ってくると母が心配して玄関に座り込む周介の顔を覗き込むが、周介としてはまさか実家に帰ったタイミングで組織の仕事をしてきたとも言えない。


 濁した笑いを浮かべながら疲れた表情でごまかしていた。


「ご飯は?食べてきたの?」


「いや、食べる暇もなかったから……なんかある?」


「唐揚げあるけど、食べる?」


「食べる。たくさんある?」


「たくさんあるから。テーブルで待ってなさい」


 周介は玄関から何とか立ち上がると食卓へと向かっていった。すでに夕食を終えてしまったのか、父はリビングで風太と一緒にテレビを眺めていた。


「ただいま」


「おかえり、遅かったな」


「おかえり兄ちゃん。どこ行ってたの?」


「ちょっと遊びに。こんなに遅くなるとは思わなかった」


 遊びにといいながら苦笑する周介に、風太は不満なのかむくれてしまっている。


 せっかく帰ってきたというのに自分と遊んでくれなかったことが不満なのだろう。周介に向かって体当たりを放つが、周介はそれを軽く受け止めてソファに投げ飛ばしていた。


「風太、兄ちゃん疲れてるからさ……今日は勘弁してくれ」


「といっても、周介は明日寮に帰るんだろう?」


「あー……そっか。そうだった。明日には帰らないとなんだ」


 あと数日いるような感覚でいたが、明日には周介は寮に戻らなければならない。


 ついでに言うと中部国際空港に置いてきたヘリを一人で成田空港まで届けなければならないのだ。


 今日も一人で操縦したとはいえ、周介一人で操縦するというのはなかなかつらいものがある。


 ゴールデンウィークは早かったなと思いながらも、良い意味でも悪い意味でも充実してしまった休みだったといえるだろう。


 もっとも、本人からすればまったくもって休んだ気がしないだろうが。


「戻ってから体調を崩さないようにな。これから季節の変わり目だから特に」


「わかってるよ。自己管理だけはしっかりする」


 そうでもしなければ一つの隊の隊長としては不適格などと言われてしまうだろう。自分の体調管理くらいはできなければならないと思いながらも、周介はどこかで風邪くらいは引くだろうなと考えていた。


「明日はどうやって帰るんだ?新幹線か?」


「あー……いや、近くから向こうに帰る知り合いがいるからその人と一緒に帰る。こっちに来た時もおんなじ感じだったから」


「……そうか。ならいい」


 父親としてはそれが一体誰なのかとか、どうやって帰るのかという具体的な方法を聞きたかっただろう。


 だが周介の関わっている組織関係の話であるということを何となく察したのか、それ以上追及してくることはなかった。


 周介としてはありがたいと思う反面、申し訳なく思ってしまう。父親に当たり前のように隠し事をしてしまうのだから。


「学校の方はどうなんだ?勉強はついていけているのか?」


「んー……結構きついな。今度中間テストがあるけど、やっぱレベル高いよ。小テストとかやってるとどうしても地力の差が出る……進学校は違うわ」


「そうか。ほどほどに頑張りなさい。無理はしないようにな」


 それは既にいろいろなものを背負ってしまっているということからの父なりの精いっぱいの気遣いだったのだろう。


 勉強を頑張りなさいと言わなかったのも、そういうことなのだ。組織に所属している以上、勉強だけに時間を費やすことができないということも察しているのだ。


 親としては勉強や部活に頑張ってほしいと思うのだろうが、そういうことができないのがつらい立場である。


「周介、できたわよ」


「はーい。ありがと、父さん」


「……そうか」


 父親として、そして息子としても複雑な立場である二人は互いに苦笑しあっていた。


 ゴールデンウィークがもうすぐ終わる。五月になり、これから梅雨に入り、そして夏が来るだろう。

 これからもまだ周介は能力者としての生活を続けることになる。


 新しい生活が始まってから一カ月が過ぎようとしていた。まだまだ彼の行く末は不明瞭なままである。


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