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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

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「思わぬ拾い物……といったところか?」


「えぇ。スポンサーからの依頼には度々泣かされてきましたが、今回は結果的に良い方向に進んだと思いますよ」


 ドクはスポンサーからの依頼の結果報告を柏木にしに来ていた。とはいえ依頼よりも報告したい内容としては知与を組織に入れることになるだろうというところだ。


 救助の内容としてはそこまで重要ではないのは容易に予想ができる。


「依頼の方は、結果的には良い報告で終えられたのかな?」


「今回の被災者に関して、依頼対象の怪我は既に報告済み。命があっただけでもと、依頼主は喜んでくれていましたよ。入院は必須ですが、それでも命に別状はありません。それで……彼女についてですが」


 ドクはすぐにでも知与の話に移りたいのか、そわそわしてしまっている。柏木はそんな彼を見てため息をついてしまっていた。


 本筋であるはずの依頼の達成の話が二の次三の次になってしまっている。


 あまり良いことではないが、新しく能力者を組織に招き入れることができるということを考えれば仕方のない話なのかもしれない。


 それもかなり素養のある索敵型の能力者となればその興奮もやむなしというところだろうというのは柏木自身理解できていた。


「彼女の能力のレベルとしてはどの程度なのか……現時点ではわからないんだね?」


「残念ながら。ですが近日中にしっかりとした検査は行います。これは僕の予想ですが、彼女は非常に高いレベルで索敵を行えるようになると考えていますよ」


「その根拠は?」


「報告書にある通り、彼女は目が見えません。調べてもらったところこれは先天的なもののようです。視覚に脳の処理が割かれていない分、他の感覚が大いに発達すると予想されます。それが視覚以外の他の五感になるのが通常ですが、少なくとも彼女にその傾向はみられませんでした」


「なるほど。今後能力で酷使した脳がどのように変異を遂げるのか……というところか。医学的な話はさておき、期待はできる……と」


「はい。そこで彼女をまずはラビット隊に入れて鍛えようと考えています」


 索敵に関する能力者の多くは索敵部隊であるノーマン隊に入るものが多い。だがドクは意図的に彼女をラビット隊に入れるという提案をしてきた。


 理由がないわけではないだろうと柏木も理解はしていても、即座に了承はできかねる内容だった。


「……君のお気に入りの彼がいる部隊か。理由は?」


「彼女は目が見えません。外で活動する場合は必ず補助が必要になります。その点、ラビット隊の安形君なら彼女をサポートできます。それに、こう言っては何ですが、今日見ていて彼女は体力がなさすぎる」


「なるほど。万が一の対応としても最低限の体力を作らせる、そして外での索敵を本格的に行うよりも前にある程度外に出る予定のあるチームで実地研修を行うと、つまりはそういうことか」


「その通りです。欲を言えば、その段階で外部のチームとも交流を持って、より広範囲で活躍してもらいたいところではありますが、まだそこまでを望むのは早いでしょう。そもそも、彼女のご両親への説明もしなければなりません」


「そのあたりは既に手配している。今回の場合は個人的には圧力をかける必要はないのではと思っているが」


「副長の性格です、多少の圧力をかけることはするでしょう。今回彼女は完全に被害者とはいえ、それでも組織内に危険分子を入れるその可能性を考えれば仕方のない事でしょう」


「ん……それらのケアもラビット隊に丸投げか?」


「同じチームに入ることを念頭に話をしておきました。今は隊室でいろいろと話をしている頃でしょうから問題はないかと。彼ら全員が同じような経験を持っていますから、きっとうまくフォローしてくれるかと」


 周介も玄徳もかなり圧力を加えられてきた。二人の場合は決定的に加害者の側に立ってしまったのが大きな原因でもある。


 だが今回知与は完全に被害者の側だ。であれば二人ほどの圧力をかけられるとは思えなかった。


「っと……そうだ、もう一つ報告があります」


「何かな?また装備運用のための予算の交渉か?今回は割と額も予想できているんだが」


「えぇもちろんそれもあります。そのあたりは後で資料をお持ちしますのでそこで話をさせていただきますが、今回はそれとは別件でして」


「……別件?」


 てっきり装備を作るために金が必要だからと予算が欲しいと言ってくるかと思っていただけに、柏木は小首をかしげる。


 そこまで緊急性の高い話ではないようだったが、少なくともこの場で報告はしておいたほうがいいものだというのは予想できた。


「今回の地震でいくつかの山岳地帯に土砂崩れなどが発生したのはご存知だと思います。その中で……まぁいくつか気になる報告が。今は現地警察、マスメディアなどと連携してかん口令を敷いている状態ではありますが、早々に対処したほうがいいかと」


「あまり良い話ではなさそうだね……詳細を」


 ドクは自分が持っている資料を柏木に見せながらそれを説明していく


 柏木の顔色があまり良くないものに変わっていくまで、そう時間はかからなかった。


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