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「よしよしよしよし!これはもう決定じゃないかな?僕としては先に入隊を認めてもらうように隊長に計らうのも吝かではないよ?」
「ダメです。ちゃんと親御さんの許可もらってからです。ついでに言うと、さすがに今の状況じゃ入れるのは憚られるから、そこは訓練必須だな」
「やっぱり、まだ駄目ですか?」
周介だってチームメイトが増えるのは喜ばしいことだ。単純に索敵ができる要因が増えるというのは嬉しくもある。
だがそれ以上に彼女の動きが悪すぎるのがネックだ。
いつも瞳のぬいぐるみの中に入れてもらえるわけではないのだから一人で最低限動けるようにならなければいけない。
「ドク、ローラースケートを一つ用意してもらえますか?最低限あれができないと」
「あぁそうだね。訓練もそのほうが身になるかな。ちょっと待ってて」
ドクがそう言って出て行ってから少しして、ドクは周介がかつて使っていたローラースケートと同じものを持ってきていた。
これを使って動きながら訓練をすれば、体を動かすのに加え能力を扱うのも上手くなるだろう。
体力がないのもこれならば多少はカバーできるはずである。
「最初は慣れないかもしれないけど、こんな感じで動けるようにはなるから、練習あるのみだな」
周介が軽く滑って見せると、知与はそれを索敵で確認して動きを真似ようとしていた。
「玄徳、お前は転ばないようにしっかり見ておいてくれ。怪我をさせないように。安形も同じくな」
「了解っす」
「はいはい了解。けど限度あるから」
「わかってるよ。それじゃ、まずは普通に滑ってみてくれ。それができるようになったらレベル上げてくから」
「は、はい!」
知与はまず滑ってみようとゆっくりと足を動かそうとしていた。当然だが、今までこのようなものをつけたことがなかった人間が、いきなりこういったものを身に着けてうまく扱えるはずもない。
周介が近くで滑って見本を何度も確認させているとはいえ、それでも自分の体を動かすのとは意味が違う。
体の大きさも違えば手足の長さも違うのだ。まったく同じ動きを真似すればいいというものでもない。
だが何度か玄徳に助けてもらっていると、知与はすぐにコツをつかんだのか、ゆっくりとではあるがすぐにローラースケートで走ることができていた。
体勢を細かく変え、それと同時に能力を発動し続ける。走るよりは体力の消耗も少ないこの訓練は先ほどまでのそれとは効率を大きく変えていたようだった。
「うんうん、いい感じじゃないか。それじゃあ僕は後処理をしてくるよ。彼女のことを頼むよ」
「ドクター、あんまり強引に話を進めると、あたしたちとしても反発が大きくなるってことはわかってくださいよ?」
「もちろんさ。僕としてもそれは理解しているよ。それに……」
ドクは練習をしている知与と、その周りを動き回っている玄徳や周介の方を見て小さくため息をつく。
「今彼女は結構いっぱいいっぱいな状態だ。普通にしようと努めていても、どこかで不安や恐怖が噴き出すタイミングがある。それを運動とかで紛らわせることができるなら、それに越したことはないだろう?能力のコントロールは絶対必要だ。それならせめて……ね」
余計なことを考えなくてもいいように、不安や恐怖を思い出さなくてもいいように、歳も近く、知与が少しでも知っている人物の近くで訓練をさせるというその行動の意味が分からないわけではない。
「でも、それでも危ないってことはわかってますよね?」
だが彼女をラビット隊に入れるということを瞳はまだ納得はしていなかった。
単純に危険だということを否定できるだけの材料がないのだ。それも無理のない話だろう。
「もちろんわかっているよ。もし本当に危なかったら途中で部隊の変更はするつもりさ。あとは本人次第だよ」
途中で部隊の変更ができるということを理解し、瞳は不承不承ながらそれを認めた。視界の隅では、すでにローラースケートで活発に動き回る知与の姿がある。
「……驚いたなぁ……個人的にはもっと時間がかかるものと思っていたんだけど……体力はなくても運動神経はいいんだね」
「まだ普通の運動レベルですから……とにかく……親御さんの説得次第では話も変わるってことは覚えておいてください。それより、親御さんの方は大丈夫なんですか?うちの組織そのものに入るっていうのは」
「そこは僕らの領分さ。彼女の能力はうちとしてもいてくれた方がありがたいしね。索敵要員は万年人員不足だから」
索敵は広範囲に及ぶことが多いため、いつだって人手は欲しいのだ。そういう意味では彼女のように索敵を行うことができる人間は必須なのだろう。
どのように交渉するのかまでは瞳たちが預かり知るようなことではないのかもしれないが。
組織に入るか否か、それは結局のところ親との交渉にかかっているといっていいだろう。




