↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
六話「空と大地の嘶きに」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

302/1751

0302

「実際、ノーマン隊は索敵をメインにした部隊だ。外に出ることも多い。戦闘を行うほどの距離にはいかないはずだから、そこがいいと思うんだけど……」


 そう言いながら周介はドクの方を見る。ドクはどうにも彼女をラビット隊に入れたいと考えてるようで、不満そうな表情をしていた。


 別に強制することはしないようだったが、その表情は周介の提案に明確に反対しているようにしか見えなかった。


「あのドク、一応聞いておきますけど、なんでこの子をラビット隊に入れたがってるんです?」


「いやね?僕としてはね?見ず知らずの人が多い中でね?ただでさえ人が多くていろんな人とかかわらなきゃいけないノーマン隊よりもだよ?君達みたいに人数も少なくて関わる人も限られている出来立て部隊と一緒にいたほうがいいと思っただけだよ?本当に他意はないんだよ?ただの善意なのさ」


 絶対に善意だけじゃないなと、小島知与を除いた全員がそのことに気付いていたが、当の本人だけはドクが自分のことを気遣ってくれているのだと思ってしまっていた。


 このマッドな科学者もどきは自分のためしたいことや面白いことを前提に物事を考えるから先ほどの言葉は全部薄っぺらな嘘なんだよと、本人を目の前にして言えるはずもなく周介たちは渋い顔をしたままため息をついていた。


「ですがドクター、さっきも言いましたけど、この子がうちに入るのは危ないですって。目が見えないって言うのもそうですけど、単純にスピードについていけないじゃないですか。ただでさえ百枝とか玄徳は速く動くんですから」


「君は?安形君はそこまで早く動かないじゃないか」


「あたしは最悪人形で動けますし」


「それなら小島君だってその気になれば早く動けるじゃないか。君の人形の力を借りるかもしれないけども?」


「いつでも誰かの手がかりられるわけじゃないってわかってますよね?いざって時に自分だけ動けなかったらどうするんです?」


「それは誰だって同じことさ。何より僕はそこまで危険な任務に君たちを送り出すつもりはないんだよ?」


 絶対に嘘だなと、小島知与を除いた全員が気づいていたが、これ以上ドクとあぁでもないこうでもないと話していても結論には至らないだろうと思い、周介はとりあえず本人の希望を聞くことにした。


「どうだ?少なくともうちに来ると、いろいろ面倒なことはあると思うけど……どういうチームに入りたい?後方支援か、それとも多少なりとも外に出て動き回るチームか」


「私は……その……いろんなものを知りたいです。いろんなところに行ってみたいです」


「なら決まりだ!やっぱりラビット隊が最適解じゃないか!ねぇ周介君。君達にはいろんなところに行ってもらおうと思ってるんだよ。ダメかい?ダメじゃないだろう?」


 その答えを待ってましたと言わんばかりのドクの反応に周介たちは若干の苛立ちを覚えながらも目の前にいる盲目の少女に再び視線を向ける。


「確かに、ドクの言うように、たぶん俺たちの部隊はいろんなところにいるだろうから最適かもしれないけど、安形が言ったように危険なのも事実だ。それはわかるな?」


「えっと……」


 わかるなと言っておきながら、わかるはずがないのだ。能力者との戦闘を経験したわけでもなく、ただ助けられただけの少女にそんなことを言ったところで理解できるはずもない。


 周介だって電車を暴走させてすぐの時は右も左もわからなかったのだから、そのことを思い出して話をしなければならないだろう。


「能力を持っている奴は、誰もかれもが誰かのために能力を使うわけじゃないんだ。誰かを襲ったり、攻撃したりすることだってできる。そういうやつらと、たぶんこれからも接触することになる。玄徳、ちょっといいか。安形も」


 周介が軽く二人に話すと、瞳は人形を一体訓練場の真ん中に立たせる。そして玄徳は軽く準備運動をしてからいつでも行けると合図を送ってきた。


「能力を使って、よくあの状況を確認していてくれ」


 周介の言葉通り、能力を使って索敵し続け、小島知与はその光景を認識し続けていた。


 玄徳が大きく屈むと同時に、その場から消える。跳躍し高速で回転しながら人形めがけて回し蹴りを食らわせていた。


 人間の地力では決して到達できない速度と威力。その威力は文字通り人形をバラバラにして見せた。


「あんなふうに、誰かを傷つける力を持った人間がたくさんいる。俺も何人かと会った。これからもそういう風になる。だから危ない。俺たちと一緒に居なくたって、たくさんのものを知ることはできる。それでも俺たちの部隊に入りたいと思うか?」


 たくさんのものを見ることは、別にラビット隊ではなければできないわけではない。危険なことに首を突っ込まなくても、多くの物事を知る機会はある。


 周介の言葉を理解し、先ほどの光景をしっかりと認識したうえで、彼女は、小島知与はまっすぐに玄徳の方に顔を向けていた。


「わ、私は、足手まといになるかもしれないけど、よろしくお願い、します。私をあなたの部隊に入れてほしいです」


 居場所が欲しい。そういう意味で彼女はそういったのかもしれない。あるいは、家族を助けたいと思ったからこそそう思ったのかもしれない。


 自分を助けてくれた人と一緒に居れば、同じく誰かを助けられると思ったからかもしれない。


 あるいは、砕いた人形の破片を必死に拾っている、玄徳が理由かもしれない。


 彼女は、小島知与は、ラビット隊に入ることを強く希望していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。