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「悪い、遅くなった。あの子は?」
そんなことを話していると、ヘリを空港に戻し終えたのか、周介が訓練場にやってきていた。誰かから瞳たちがここにいることを聞いたのだろう。急いでやってきたのだろうか、周介の額からは若干ではあるが汗がにじんでいる。
「今玄徳と訓練中。もう能力の発動はできてるから、あとはオンオフのコントロール程度まではいきたいって感じ」
「なるほど、なんか散歩してるみたいに見えるけど……」
「動きながら能力を使えるようにしてんの。あの子、目が見えないから」
「なるほど、動きながら能力を使えるようにならないと満足に動けないってことか?難儀だなぁ……」
周介はその場に座り込んでため息をつく。すると周介がやってきたことを知ったのか、玄徳を引き連れて小島知与が小走りで周介たちのもとに移動してくる。
「あ、あの、あの時いた人ですよね?助けてくれてありがとうございました」
「いや、あれが依頼みたいなもんだったから気にしなくてもいいよ。そうだドク。依頼者からの報告があったとのことです。無事、ご家族は病院に搬送。頭を打っていたようですが、命に別状はありません。後遺症関係に関しては、まだ調査中とのこと。依頼主からは感謝されたとのことでした」
「あぁ、それは良い報告だ。それより周介君、彼女に自己紹介したほうがいいんじゃないかな?彼女も今後組織の一員になる予定だし」
「ドク、まだ親御さんとは話をしていないんじゃないんですか?」
「それはそうだけど、もう仕方がないじゃないか。君だってわかってるだろう?」
まだ両親の説得も契約も結べてない状態ですでに組織に入ることを確定させているあたり、ドクはずいぶんと早く話を進めたいようだった。
とはいえ、能力者になった以上この組織に所属しなければいけないというのは事実だ。そうでなければ一体何をされるか分かったものではない。
「初めまして。ラビット隊隊長の百枝周介だ。今回は……まぁその、運が悪かったな。けど助かって何よりだ」
「はい……あ、私は小島知与って言います。でも……その……ラビット隊……って?」
「あぁまだ聞いてないか?俺とここにいる安形と玄徳の三人で組んでるチームだ。他にもいろいろチームがあって……って、ドク、そういえばこの子はどこに?ノーマン隊ですか?」
「ん、ちょうどよかった。さっきその話をしていたんだよ。周介君、僕としてはこの子を君のチームに入れたいなって思ってるんだ」
「この子を?それは……その……」
周介は目の前にいる少女を見て瞳と同じようなことを考えた。
目が見えないというハンデは大きい。これから外に出ることが多くなる可能性があるこのチームに、彼女を入れることがどれくらい危険かくらい周介にだってわかる。
ドクもそれをわかっているだろうに、あえてそれを口にしているとしか思えなかった。
「ドク、一応聞いておきますけど、ドクは俺たちをこれから結構外に出すつもりなんですよね?」
「そうだよ。たぶん噂かなんかではきいたことあると思うけど、僕は君たちをたくさん外に依頼に出すつもりさ。その機動力を使わないのはもったいないからね」
「それにこの子がついていけるとは思えないんですが。だって……目が見えていないんでしょう?」
「能力を発動させ続けることができればそのあたりは問題ないよ。君だって最初は能力を発動するのにすごく苦労してたけど、今では当たり前にできているじゃないか」
「そりゃ……ちゃんと訓練しましたから」
「なら、この子ができない道理はないよ。さっきここに来るとき、ちゃんと思いついたことだってあるさ」
「あたしの人形の中に入ってもらうの。そうすれば動けなくても関係ない。ちょっと暑いのが欠点だけど」
そんなことを話している中、周介は自分たちが勝手に話を進めていたことに気付き、小さく首を振る。
今話しているのは小島知与の今後の配属だ。それを本人抜きで勝手に進めるわけにはいかない。
困惑している彼女を見て申し訳なさそうに周介はため息をつく。
「えっと、うちの組織にはいろいろなチームがあって、それぞれ能力を使って活躍してるんだ。君も同じようにどこかのチームに入って活躍することになる。ドクは俺のチームに入るように打診してるんだけど……」
「チームに入らないってことは、できないんですか?」
「できなくはないと思う。けど……」
「おすすめはしない。寧ろ色々と扱き使われる機会は増えるからやめたほうがいいかもね」
それは長年チームに所属しなかった経験からか、瞳は呆れたように、吐き捨てるようにため息をつく。
恐らくいいように使われてきたのだろうなと思いながら周介は苦笑してしまう。
「他にはどんなチームがあるんですか?」
「えっと、君が知ってるのだと……今日いたのはたくさん手を操ってるやつがいたアイヴィー隊。これは足止めを得意とした部隊らしい。あとは物を運ぶのがメインのスペース隊。それと機動力が高いラビット隊。それにチームをナビするメイト隊って言うのもいる。メイト隊以外は外に出るチームばっかりだ」
外に出るというのがどういう意味を持っているのか、彼女はまだ理解できていないだろう。
だが彼女は近くにいる玄徳の方に一瞬目を向けると、周介の方を再び見た。
「私は、外に出るチームでもいいです。いろんな場所に行ってみたい、いろんなものを知りたいです」
目が見えない彼女にとって、見たことがないものだらけの世界はとても興味深いのだろう。恐怖よりも好奇心が勝っているというのは、彼女の性格が理由か。どちらにせよ、外に出ることを臨むというのは危険なことだ。周介はどう答えたものかと悩んでしまっていた。




